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ピート・シェリー/ルイ・シェリー『ever fallen in love-the lost Buzzcocks tapes』(15)

ノイズ・アノイズ
Noise Annoys
 
「ラヴ・ユー・モア」のB面
ソングライター:ピート・シェリー
プロデューサー:マーティン・ラシェント
レコード内溝のメッセージ:「越境する市場The crossover market」
 
この曲はいつ、どこで?
 
マンチェスター南部のちょっと気取った、ハーデル・グローヴっていう所に住んでた娘とご多分にもれず恋仲になった。名前をキャシー・ウェストCathy Westと言って、年中酔っ払ってて、それを僕ら自身がジョークのネタにしてたくらいだった。会うときは大抵酔っ払ってたね。ある日、レンチ行きの192番線〔ハーゼル・グローヴとマンチェスター間を走るバス路線〕に二人で乗ってるときに〔「ノイズ・アノイズ」となる〕曲をふざけてつくり始めた。「キャシー・ウェスト、キャシー・ウェスト、キャシー・ウェスト、キャシー・ウェスト、キャシー・ウェスト、君は酔っ払い」こんな出だしだった。77年5月の頃、バンド・オン・ザ・ウォールのステージがある日だったけど、オールダム・ストリートにあるパブに入ったら、デイリー・ミラー誌が一部転がってた。ドリンクを待ってる間それをパラパラめくってたら、ある見出しが目についた。「近隣を悩ます騒音Noise Annoys Neighbours」って書いてあった。「Noise Annoys」の語呂が気に入ってキャシー・ウェストの曲にこの「ノイズ・アノイズ」の韻(ライム)をはめ込んでみたんだ。「かわいい女の子たちに、かわいい男の子たち」のフレーズにつなげて、子供を叱り飛ばして押さえつける母親を歌った内容にした。大げさな哲学的なものにするつもりじゃなくってね。曲はすごくロック的なオープニングで始まる。ヘビメタってよく言われてるようなヤツだね。「大がかりな出だし、大がかりな終わり方。どちらも独立したパートとして聴くに値する」ってね。大げさなパワー・コードから始まって、殆んど前時代的なフリー・ジャズな感じになだれ込む。やがてヘビメタなカオスから不死鳥の如く歌が立ち現れるってわけさ。ギターソロは粗っぽくやって音程を外し、一本調子なものにした。ノイジーにしたかったからね。
 ちょっとした短い、といっても「ラヴ・ユー・モア」よりは長いけど、インスト部分もあるなかなか楽しい曲だよ。
 「母親が叱り飛ばす声を聞いたかい・・・・?」ってところ、僕らはアドヴィジョンでノイズを作ってみた。ビンとカップを乗せたトレイを持ってヴォーカル・ブースに入り、合図で床に放り投げたんだけど、メチャメチャ大失敗さ。
 いつも何か変わったものを出来るだけ曲につけ加えようって思ってたんだ。
 
子供の頃にこの曲をレコードで聴いたときには、何だかありきたりな、よくある売れ線的な歌だと思ってましてけど、今ライヴで聴くと、ちゃんと味わいっていうものが感じられるんです。
 
当時はライヴにかける前に曲はレコーディングしてた。ライヴで曲を育てていくことが大事だったんだ。
 
この頃、「B’dum B’dum」というドキュメンタリーが放送されませんでしたか?
 
収録されたのは夏だったんだけど、放送は年末になったんじゃなかったかな。グラナダ。テレビはボブ・グリーヴスみたいな売れっ子のキャスターが夏になると、自分の企画で番組を制作できることになっていた。それでトニー・ウィルソンはバズコックスとマガジンをテーマにした番組を制作することに決めたのさ。1978年7月20日にレッサー・フリー・トレード・ホールでやったライヴの一部が収録されたけど、このきっかり二年前、同じ場所で、バズコックスとして最初のライヴをやったんだ。僕はウールワースの中にあるカフェでインタヴューを受けた(オールダム・ストリートの片隅にあった)。そこは僕が普段からよく行くカフェだったんだけど、ハワードの方はパレス・シアターの特等席でインタヴューを受けてたね。対照的な光景だったよ。