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『東京組曲2020』深堀り企画 vol.9

【宮﨑優里さんインタビュー】
=お客様に楽しんでもらうため、これまでの自分を信じ、変わらずに生きていきたい=


三島有紀子監督の企画に賛同し、一緒に本作をつくった出演者の皆様たちのインタビューによる『東京組曲2020』深掘り企画。第9回目は、宮﨑優里さんです。

―― 初めての緊急事態宣言後、コロナについて何もわからない、外出もままならなかった当時、どのように過ごされていらしたのですか?

私は一人暮らしなんですけれど、一人っ子なこともあり、一人で過ごすことが割と好きなんです。なので、ステイホームになっても多分大丈夫だろうなと思っていました。家で過ごす時間が長くなりそうだと思い、4月が誕生日なこともあって、自分へのバースデープレゼントとして思い切って赤いソファーを買いました。そんな感じで、最初は何が起こるんだろうという未知の出来事に向けてのワクワク感もあったんです。
アルバイトも、職場に通えるのは、自転車で通える人だけになったので、私を含め、電車で通勤のスタッフは、在宅でできそうな仕事を持ち帰ってやることになりました。オンラインでミーティングをしたこともなかったので、いろいろ手探りで、でも最初はそのイレギュラーな感じを楽しんでいたと思います。
ただ、段々と誰にも会ってはいけないということが苦しくなっていきました。何か楽しみを見つけないと気持ちが参ってしまう・・・。そう感じて、あの頃に流行っていたオンライン飲み会などの予定をちょこちょこ入れて、それを楽しみに過ごしていました。

―― オンラインで飲み会なんて、今までの生活ではなかったことですよね。

そうですね。飲み会はもちろん、オンラインで顔を見て、ミーティングやおしゃべりをしていて感じたのは、私は一人でいることが好きだけど、人や社会と繋がってる上での一人が好きなんだなということでした。
私の場合、仕事の大半が止まってしまったので、きっと助成金とか出るんだろうなぁと、能天気にも淡い期待を持っていて(笑)、お金の心配がすぐにきたわけではないんですけど、ただ何もしない生活がつまらなさすぎると感じていました。

―― 本作を観た時に、部屋にある赤いソファーからインテリアについて拘ったりする人なのかなとか、植物も育てていたり、一人暮らしのライフスタイルを楽しんでる人なんだろうと感じていました。

特に拘ったりしているわけではないですよ。それにマメじゃないので、植物をよく枯らしてしまうんです・・・。なので、我が家の植物たちは守られて育てられているというよりも、強く生き残っている逞しい子たちですね(笑)。

―― 宮崎さんはこれまで舞台を中心に活動されていらっしゃいましたが、自分自身を撮影して記録するという本作の企画に参加しようと思ったのはどうしてでしょうか?

一つは、とにかく何かをやりたかったということ。そしてもう一つは、YouTubeで何か作品を作ろうとちょうど動き始めていたので、良い機会ですし、やってみたいと思ったんです。とても大変でしたけどね(笑)。

―― 三島監督とはどのような対話をし、撮影に臨まれたのでしょうか?

撮影のことからお話しすると、三島監督とどんな作品を撮るか打ち合わせしていたときは、面白いって思っていたんです。でも実際に撮り始めると、撮れば撮るほど駄目だぁ・・・と。監督に申し訳ないぐらい、使える素材が無いだろうなと落ち込みました。
初号試写を拝見したときに、皆さんの映像を観て、「なるほどこういうのを撮れば良かったのか」とすごく反省したんですよ。

―― ビデオ通話で会話をしてるっていう部分は、あの頃の象徴だと思いますし、こういうのを撮ってみたいと監督とも話されたのですよね?

はい。実は、あの頃、ちょっと好きな人がいたんですよ。いい感じになっていくのか、ならないのか、まったくどうなるのかが分からないような状況でしたが、その彼とも「オンラインで飲もうよ」といったやり取りがあって、それがすごく楽しかったんです。なので、ビデオ通話についての内容でやってみたいなと思ったんです。

本編シーンより。宮崎さん(左)、髙安智実さん(右)

―― 気になっていた彼がきっかけになったのですね。映像のなかでも少し触れてますよね。恋をしていたことで気持ちが華やいでいたんですね! 綺麗な洋服を着てみたりして、可愛らしいです。

実は、私の好きな相手を男性にするか、女性にするかという二択の案があったんです。それで三島監督とも相談し「女性のほうが良いのではないか」と仰っていただき、好きな相手が女性なんだと思って撮っていました。
綺麗な服については、恋をしていたということ以外にも、他の人とのオンライン飲み会の時にも実際そうしていたので取り入れたんです。今日一日の予定が、オンライン飲み会しかないという時に、わざわざそのためにメイクをしたり、綺麗な服を着たりしていました。家からのオンラインなので、服装なんてスウェットとかでもいいわけじゃないですか。でもそういうメリハリがすごく自分の励みになっていたので、取り入れたいなと思ったんです。
それから、オンライン通話が切れた時のシーンとなる瞬間って寂しいじゃないですか。これは今でもそう思っているので、それがうまく伝わったらいいなと思っています。

―― ビデオ通話の友人は、ユニットを組んでお芝居を一緒にされていらっしゃる髙安智実さんですよね。どのように撮影を進めていかれましたか?

彼女とは、普段即興劇もやっているので、こんな流れだよと大筋を話せば、だいたい通じて、うまくやってくれるだろうという信頼がありました。全体の構成と、オンライン通話のシーンの流れを伝えて、最後はプツンと切れてしまう、ということだけを決めて撮影しました。彼女との撮影は安心感があってやりやすかったです。
それよりも、撮影方法にはとても苦戦しました。iPadでビデオ通話をし、その画面をiPhoneで撮影しているのですが、画面に写り込まないようにあれこれ位置を試し、奇跡的な角度を見つけ出して撮っています。もう、本当に大変でした(笑)。
その他の撮影でも「これ、普段、どうやって撮影しているんだろう?」ということばかりでした。LINEの画面を撮影するところもそうですね。プロのスタッフさんたちの技術力には、心底、脱帽という思いでいっぱいでした。

本編シーンより。

―― 三島監督からのシークエンス「明け方(朝4時)に女の泣き声がどこからか聞こえてくる」というシーンの女の泣き声を聞いた時、どのように感じましたか?

最初、本当にどこからか泣き声が聞こえているような気になりました。「何でそんなに泣いてるの?」って。その泣き声を聞いているうちに、次第に私も泣きたくなりました。「この人、こんなに泣いてるし、私も泣いてもいいのかな」と。いつしか泣いてました。

―― コロナ期間を経て、自分自身で「変わったな」と思うことはありますか?

変わったなというよりも、変わらないでいたいなと思ったんですよね。あの頃、最初にクラスターが起きてしまったこともあって、ライブハウスが世間から叩かれました。私は、ライブハウスや、小劇場での活動が多かったので、とても敵対視されているように感じていました。
熱烈なファンを持っていれば別だと思いますが、コロナをきっかけに観に来なくなったお客様はたくさんいます。昨年までは、舞台芸術系の助成金がいろいろと出ていてサポートされていたので、割と強気でいろいろな挑戦が出来ていたのですが、お客さんに戻ってきてもらうには、これからどうしたらいいかなと試行錯誤していて・・・

―― 映画もそうですが、舞台の世界もどのように展開していくかは課題ですね・・・。

自分がやってきたことを信じて、でもそこに胡坐をかかずに一生懸命やるしかないですよね、お客さんに楽しんでもらうために。それは、この先もずっと変わらないなと思います。

―― 映画を観てくださる方々に向けて、メッセージをお願いします。

世界共通の「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の時」。皆さんそれぞれに何かしらのドラマがあったと思います。
私たちは物凄い体験をしたんだと思います。辛いことがあった方も少なくないですよね。それは皆さんの中で、糧になっているかもしれないし、何かの指針になっているかもしれない。
「今、こういう風に生きているけど、あの時は実は辛かったよね」とか、「でもこういうことに気付いて面白かったよね」とか、大切な位置付けとしてこの映画が振り返る機会になっていたら嬉しいです。

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