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ゴールデン・ドーン号の最後

「天誉、艦長≪爺さま≫はどうしましたか?」
転移してきた帝国の負け犬共の肉片をエアロックから放り出しながら俺は答える。5人の小所帯では、副艦長の俺も掃除役だ。
「自室でお休みだ。20時間ブッ通しの指揮はご老体にゃ酷だよ」
事実、爺さまは良くやってくれている。『歳の割には』が付くがな。

質問してきた彼女はアギ=メァヴ。戦闘用機密服から解放された緑の肢がセクシーだ。第七肢の傷痕が俺は特に好きだ。以前興奮しすぎた俺が付けた。(こっぴどく叱られたものだ)

戦術画面に映る地球の姿を見た。子供の頃の記憶にある奇麗な球体とは似ても似つかない、歪んだ形状だ。

「アギ、超空間を出たら5時間で地球だ。着陸点はどこがいい?学者としての意見をくれ」
アギにキスをねだりながら尋ねる。

「まずユーラシアへの侵入は大規模アノマリー”咆哮する老婆”により完全に不可能です。その他地域も、各種アノマリーや残存する異常勢力により、極めて危険な状況です。推奨される地点はありませんが、一つ選ぶなら、メキシコシティ。もう一つ選ぶなら、南極点です」

「上等だ。メキシコのありったけの情報を出してくれ、3時間で読み込む」
アギにキスを振り払われて傷つきながら答える。

メキシコシティ。麻薬、暴力、組織犯罪、恐怖が支配する街。自殺崇拝カルトも、液状化した住民もここには殆どいない。アノマリーの一大産地、宇宙最悪の観光名所となった地球最後の楽園ってわけだ。

俺は天誉。AT-MC23植民球の生き残りだ。とはいえ、敵討ち御一行じゃない。帝国への敵討ちはとっくに終わって、今度は俺たちが逃げてる番だ。

「動力室!推力下がってるぞ!」J=バックの怒鳴り声。
奴は砲撃所から一歩も動かない。寝る時も食う時もクソをする時もあそこだ。きっと死ぬ時もあそこだろう。


動力室から返事代わりの悲鳴が来た。

手漕ぎ宇宙船、ゴールデン・ドーン号の推力担当ブナバ。元皇帝だ。


(つづく)




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