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炎、うず巻けよわが胸

時速285kmでぶっ飛ばす。

東海道新幹線”のぞみ”は新横浜を過ぎた。後は名古屋までノンストップだ。
スマホを見る奴、PCでメールを返す奴、大口開けて寝てる奴。
平日昼。車内の空気は弛緩している。

小田原を通過した。頃合いだ。
俺は席から立ちあがる。スーツのポケットからハンカチを取り出し、顔に巻く。車両間のドアの前に立つと、声を張り上げた。

「強盗だ!全員手を頭の上に置いて、席から動くな!」

反応が鈍い。スマホから目を離さない奴すらいる。ナメてるのか?

おっと、大事なことを忘れてた。仕方ない、こりゃ俺が悪い。
懐から拳銃を取り出すと、手近な男の足を撃ち抜いた。

悲鳴と恐怖。
こうでなくっちゃ。

時速285kmってのは、もっと緊張感があるべきだ。

お前が悪党なら、何をやらかす?
振り込め詐欺?仮想通貨?スクールシューティング?
いいか、俺がしてるのは悪党の話だ、バカでも負け犬でもない。この世には男の犯罪ってものがある。

「だから俺たちがやるのは、列車強盗だ」
半年前。マンションの一室。辺り一面に酒の缶が転がっているが、今日はノーアルコールデーだ(当然ながらドラッグも今日は無しだ)

「列車強盗~~?ンま~、上手くいくならいいンじゃないっスかね~、ガーッて撃ってバーッて逃げればいいンでしょ?楽勝じゃン」
この坊主頭は牧田。日本銀行に入行したが、入って半年経たずに上司をPCでボコボコにしてクビになった筋金入りのクズだ。ノートPCじゃないぞ、デスクトップPCだ。(奇跡的に執行猶予が付いた)

「正気ですか?奇跡的に成功しても大した金にはならんでしょう。楽しそうなのは否定しませんが、お二人には割に合わないですよ」
こっちの眼鏡は桜井。"気兼ねなく他人を角材で殴りたいから"中核派に入りたい一心で京大に入り、余りのタチの悪さに中核派から追い出された筋金入りのクズだ(当然のことながら京大からも叩き出された)

俺は…俺の話は後でいい。

(続く)




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