4 突然、ハワイのマウイ島へ
15年前、マウイ島へ知人を尋ねた。
勤めていた会社も辞め、今まで繋がっていた糸を挟みでパッチと切られたように、なんの計画も持たず、突然。
「30歳」
ちょうど良い区切りのような気もした。
日本の深い歴史と文化を愛していながら、独特な縦割り社会に窮屈さを感じていた若い頃。
そこで一生を過ごすことに微かな不安と、興味のない私にも気がついていた。
でも、その途切れた糸の先はマウイの風の中で揺れているようにも見えた。
その時は揺れているのも悪くないようにも思えた。
雪国で育ち、スキーというツールで世界中の雪の世界を駆け巡った青春時代。
真っ白な白銀の世界は私の足元にいつもあり、そこは少なからず私の居場所だった。
水平線に延びる青い海も、白い砂浜も馴染みのない世界。
「私はどこへ来てしまったのだろう。。。。」と、ビーチを歩きながら、混乱し何日も、何日も涙がどこから溢れた。
久しぶりに声を振り絞って泣いた。
青春時代の全てを注いで戦ってきたスキー。その私の中に根付いていたスキーへの思いやカルチャーを全部置いてマウイ島へ来た。ただ、マウイ島ではスキー選手時代のコーチとその家族がいた。彼らの暖かさに癒された。
そして、私はピンクのベッドカバーとお揃いのピローケースを買った。インド綿の優しい肌触りに埋もれて赤ちゃんのようにそのベッドに体をうずめた。
唯一のスキーとの繋がり。糸はちゃんと紡がれていたようだ。全ては完璧に絡み合い、繋がっている。。。。。
そこで、ウィンドサーフィンを愛する主人と出会った。
偏西風の強いマウイの風は、海面駆け巡る最高のツール。 長い、クルクルの髪をなびかせ、セールで風を操り、ボードで海面を走る。
まるで、スキーのように。
真っ白な雪面を滑り降りる私の姿が少しばかりシンクロした。
この物語は2020年5月の新月から描き始めました。9月までには終わることになります。もしかすると、もっと早く書き上げるかもしれません。もし、この物語の途中でこの物語に出会ったら、そこから読み続けてくれることもいいかもしれません。もしかすると、1、から読んでもらうのも良いかもしれません。
「貴方に平和の国からのメッセージが届くことを祈って。」わこ
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