OCT 第7回がんサバイバー・スピーキング・セミナーに参加して
先日、NPO法人キャンサーネットジャパンが企画・運営するOver Cancer Projectという、がんサバイバーの当事者活動を支援する活動の一環で実施されている、がんサバイバーの当事者活動を行っている/今後行っていく人を対象とした『がんサバイバースピーキングセミナー』へ参加してきました!
拙い文章ですが、自分にとってとても大きな経験となったので、今後のためにも少し振り返りを文字として残しておきたいと思います。
(OCTについてはこちら↓)
〇動機・きっかけ
このセミナーの存在を知ったのは去年の年初にさかのぼります。
私は5歳の時に急性リンパ性白血病になりました。
去年はちょうど罹患してから20年の節目でした。
昨年1月よりご縁をいただき、医療ソーシャルワーカーとして自分が治療を受けていた(現在も長期フォローアップで年1回は通院している)病院で働き始めてもいました。
そのことも重なり、改めて、自分の小児がん経験者としてのアイデンティティを考えるようになりました。
今まで人前で闘病体験をシェアすることも何度かあり、その話で「励まされた」「勇気をもらった」など温かい言葉をかけていただいたこともありました。
学生時代には、実際に同じ病気の友達との出会いもあって、「白血病になった意味」というものもこれまでも自分なりに深め大切にしてきました。
あの時から20年たった今、医療現場にも身を置くようになった今、「より社会や周りに自分の経験を還元していくにはどうしたらいいのか?」を悩むようになっていきました。
そうして何かいい方法はないかと模索し、様々調べる中で今回のOCTんのセミナーに出会ったのです。
選考もあり、自分が通るんかなとも思いましたが思い切って応募。ありがたくも選考を通り、今回の7期生としてセミナーに参加させて頂くことになりました。
〇選考からセミナー参加まで
今回のセミナーでは自身のがんサバイバーとしての経験から感じる課題について書き表す事前課題がありました。
今回、自身の闘病体験や職場で小児・若年のがん患者さんとの関わりを通して感じた思いやアイデアについて書きました。
セミナー自体はコロナ禍の影響で延期になり、今回、約1年越しのオンライン開催になりました。
念願のセミナー開催でしたが、一方で、この約1年という期間は応募時から私のがんサバイバーとしての自分自身に抱く思いを大きく変えました。
医療ソーシャルワーカー(以下MSW)として職場で約1年半、小児がんの子供やその家族に関わり、その姿を近くで見させていただく中で、私は自分自身に対するある思いが芽生えてきました。
それは「自分はがんサバイバーという肩書を名乗っていいのか」との思いです。
自分は白血病の中でも最も多い「B前駆細胞性白血病」というタイプのもので、最も予後が良好であり、85%が治癒するといわれています。
小児がんといえば一般的に白血病はメジャーであり、水泳の池江選手のことなどもありイメージがしやすいかも知れませんが、白血病でもタイプが違えば予後不良なものもあったり、他の小児がんでは横紋筋肉腫や悪性リンパ腫など厳しい病状経過を辿ったり、難治性の高い様々な病気もあります。
現在の職場で働く中で、5歳の時の自分よりも厳しい闘病生活を送りながらも、懸命に生きる多くの小児がん患者を目の当たりにしたときに、比較的、良好な病状経過をたどった自分が「がんサバイバー」というアイデンティティを掲げることに、申し訳なさや違和感を感じるようになっていったのです。
自分は標準的な化学療法治療で治ったし、一部の小児がん患者が発育や時間の経過に伴い治療の影響で生じる晩期合併症も特段抱えていません。
もちろん白血病になったことで悩んだ経験は幾つもありますが、「小児がん経験者」として相対的に考えた時に、自身の闘病経験の「軽さ」のような感覚を強く持つようになりました。
MSWとして働き続ける中で、自分の「がんサバイバー」としての経験・感情は「医療ソーシャルワーカー」としての視点に覆われていきました。
そしてセミナーを迎える頃、そこには「医療ソーシャルワーカーとしての自分」しかいませんでした。
そうしたモヤモヤとして整理できていない色々な感情を抱きながらセミナーへ参加することとなりました。
〇セミナー当日
セミナーでは実際の当事者活動をされているOCTの先輩方やがん治療に携わっておられるドクター、メディアの方まで多岐にわたる方々からがんサバイバーに寄せる想い、がん治療に関する知識など多角的なお話を聞かせていただきました。
自分の経験とそこから感じた思いを具現化し、実際に社会で活躍されている方々の話はとても刺激敵でインスピレーショナルでした。
また今回7期生として一緒に参加されていたほかの方々も多種多様なバックグラウンドや思いがあり、それらが交差する中で生まれる変化・新しい発見は、確実にここでしか得られない体験でした。
セミナーの後半ではグループワークで、事前課題で与えられていたがんサバイバーとしての問題提起をスピーチ原稿に仕上げていくという作業を行いました。
自分はありがたくもグループを代表して、自分の原稿を皆さんと共に推敲していただき、最後に全体で発表させていただきました。
今回のスピーチでは私は自身の闘病体験・仕事での経験から小児がん患者の学校参加支援の必要性と、メンタルヘルスついて問題提起をさせていただきました。
(詳しくはまた別で整理してから書きます)
私はこの問題について語るとき、正直どちらかといえば仕事での経験を通した視点で語っている感覚が大きかったこですが、グループ内で自分の原稿の推敲を進める中で、グループメンバーの方やメンターのかたに、『医療ソーシャルワーカーとして問題提起するのではなく、「自分の経験」を通して「自分はどう感じたのか」、そしてそこから何を訴えたいのか考え、言語化していく』という軸で一緒にブラシュアップしていただきました。
しかし実際は、前述したとおりMSWとしての視点に偏り、自分を「がんサバイバー」と捉えることに違和感を感じていた私は、いま改めて「がんサバイバー」としての自分に向き合うことに困難さを覚え、なかなか上手く言語化しまとめていくことができませんでした。
今回のセミナー参加者の中でも小児がん経験者というのは稀で、当事者として自分の感情を言葉にすること、声を上げていくという、まるで自分が小児がん患者を代表してしまうような行為に、反射的に強い怖さを感じる自分が、思っていたより強くへばりついていたのです。
加えて、医療従事者の一人としてエビデンスに基づく普遍的なことをいわなければならないとの思いから、自分の経験という自分の感情というパーソナルなものを話すといった、いわば逆のことをしていいのだろうかとの迷いがありました。
しかし、グループ内でいただいた意見や、発表後にいただいた好意的なリアクションを聴くと、この自分の経験や感情をもっと大切にしてもいいんじゃないか?と感じました。
闘病も仕事も、どちらの経験もあるからこそ届けることができる自分の声っていうのがあるんじゃないかとの考えに行きつきました。
本当にステキな方々と出会い、かけがえのない経験をさせてもらえたなって思います✨
〇まとめ
もちろん完全に「がんサバイバー」としてのアイデンティティへ感じていたモヤモヤがきれいさっぱりと無くなったわけではありませんが、「がんサバイバー」としての自分って、もっと正面から向き合っていけば、きっと新たな発見や生み出せるものがまだまだ自分の中に眠っているんだろうなと、以前よりワクワクというかポジティブに自分を捉えることができるようになったなって思います。
同時に、 「MSWとして仕事をしている自分」から見える景色、感じる思いも今だからこその経験として大切にしたいと思います。
ーこの20年前から始まった白血病との付き合い。
これからも色々な経験や出会いを通して深堀していきたいです。そしてもっと社会や周囲に「自分だから届けられる声」を届けていき、明るく照らしていけるよう、自分らしく歩いていきたいと思います😊
「自分の人生、自分の心は自分だけの特別なもの」
そう思ってこれからも大切に今を生きていきたい。フルにこの人生味わい尽くした。
「がんサバイバー」としての自分にとって、新しい初めの1歩
今回のセミナーはそんなかけがえのない出会いとなりました。関係者の皆さん、参加者の皆さんありがとうございました!!
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