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第十八回「すべてのインターネット懐古主義者たちへ」

来月の9日。
アルマが死んだとして三回目の企画ライブがある。
一回目は「轟音部屋緊急事態宣言」と題し
無観客でライブハウスからインターネットを通じて皆様に音楽をお届けした。

俺はそのライブ中に腰をやってしまい
終わった後に立ち上がることができなかったほどだった。

二回目は「血潮」という俺たちのワンマンライブだった。
このライブは西武新宿駅から徒歩3分くらいにあるライブハウス(ライブバーだとかなんだとかあるが俺はすべてひっくるめて”ライブハウス”と呼ぶ)
”ロックンロール以外は全部嘘”という場所で。

ワンマンの前日に友達のkabe.というバンドの解散ライブに出演し
肋骨を折ってしまった。
偶然なのか必然なのかはわからないが友達のバンドが解散するにあたり
手土産として彼ら彼女らに俺の肋骨を捧げてしまった。
これを読んでいるのかはわからないけれど、どうか一刻も早くまた表舞台に立って彼女たちには音楽をして欲しい。そして、肋骨を返してくれ。

肋骨を折ったままのライブは本当に生きるか死ぬかのギリギリの戦いで
情けないくらいに声は出ないし、それでもなんとか1時間半やり切った。

俺たちはみんな生きている。

そして、今回である。
タイトルは「すべてのインターネット懐古主義者達へ」だ。
こうも毎回主催のタイトルがダサいのは俺のセンスだ。許してくれ。
横文字でかっこいいタイトルをどうしてもつけられないので
俺は俺が考えたタイトルが好きだ。ダサいけど好きなのだ。

このコロナウイルスが隣人になってしまった今。
こうしてライブをすることに対して様々な意見があると思う。
思うが、散々言い続けて来たことで

安全を確保しての開催

を約束すること。これがライブをする上での最低条件となってしまった。

そんなのこの時代が始まってから急に訪れた条件じゃないし、
怪我や揉め事なんかライブハウスの中では日常茶飯事だと思っていたので
この”安全を確保しての開催”という宣言を公にするのって未だに慣れない。

それって俺たち企画側はいつだって思ってることだし、
いつだって安全に終わるようにと願ってライブをしている。

この約束というのは来てくださる皆さんも含めての話で
全員が団結しないと石を投げられてしまう。
そんな窮屈な時代になってしまった。

いちいちそんなことを言わないとわからない時代になってしまったことが
俺は悲しい。それはいうのが面倒くさいとかではなくてだ。


そして、今回はこの時代の定番となった同時配信というやつをしない。
その意図としてはよくあるパターンとして
お客さんは有料でライブハウスに来るかそれとも無料で配信を見るかみたいな謎状態が発生するのを防ぐためだ。

有料での配信も勿論できるが俺たちにはその技術がまだない。
そして、少ない人員でこのレーベルは動いているためそれを操作する人間もいない。
客観的に見て携帯電話一台で有料で配信なんてお客さんに失礼だし、
なら画質荒いけど無料にします!となったらお金を払って来てくれたお客さんに失礼だ。

今年の夏。
俺は名古屋でライブをした時にしっかり宣言している。
「お金を払ってここまで見に来てくれた人たちが本当にすごい」と。
その日は無料でインターネット配信もしていたからこのご時世のことを考えると配信でも見れるし無料ならっていうことでそっちを選ぶ人も超いると思う。

それも一つの手段だし間違ってない。

ただ、そんな手段があるにも関わらず足を運んでくれた人たちに対して
俺は「ありがとうございます」という言葉を伝えずにはいられないのだ。

夢だ希望だなんだという前に。
俺たちはボランティアで音楽を届けているわけではない。
音楽家になりたいということは音楽でご飯を食べたいということだ。

そこに足を運んでくれて大事なお金を支払ってくれるというその気持ちが俺には本当に有難いのだ。

お金はよく悪い例えで使われるし、俺も過去に失敗を何回もしてしまっている。
だからこそ、今こうしてお金に対して本当に有り難く思うのだ。

そしてこのタイトルの意味だ。
インターネットというところは言葉遊びが度を超えて誰かを傷つけてしまうことがよくある。
それは色んなことが重なって生まれてしまったのだと思うのだけれど、
根本的には様々な正義の価値観が擦れて出来たものなのかもしれない。

日々、インターネットでは誰かが的にされ、
誰かが笑って、誰かが傷ついて、果てには言葉に殺されて亡くなった人までもがいる。

言葉は殺人になるのだ。

言葉で人は殺せるのだ。

そんなことばかりでは勿論ないのだけれど。


寺山修司さんの本のタイトルに
「書を捨てよ、町へでよう」というのがある。
今回のタイトルはすんごい遠回しにそのタイトルのオマージュをしている。

すべてのインターネット懐古主義者達へ の見えない続きとして
ネットを捨てよ、(安全にしてから)町へでよう
なのだ。

ここまで語っておいてもし俺たちが何かしでかしていたら俺は自腹でその人に返金する。
お金ないけどな。

それくらいの覚悟を持ってまでやりたいことがあるのだ。俺は。

ライブってただみんなで集まって「楽しいねー!」じゃない。
勿論、それも全然アリなんだけど。

何かを思って、何かを伝えたい気持ちが溢れてライブをするんだと思う。
わざわざ皆さんにお金をいただいてまで伝えたいことがあるんだと思う。

俺はそういうライブに酷く心を打たれる。

俺もそういうライブがしたい。

だから、どうか。安全に開催することをここに宣言するので
見に来て欲しい。

俺たちがどれだけ本気で”これ”に挑んでいるのか。
押し売りかもしれないけれど、見にきて欲しい。

勿論、マスクは必須だし手洗いうがい消毒は当たり前だしソーシャルディスタンスも行う。けれど。
けれど、気持ち的に”あの頃の音楽”を俺は届けたい。
そう言った意味で俺は皆さんを騙したい。

だから、どうか俺たちに騙されに来て欲しい。
完全に騙し切るから。

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