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今も胸に残っている少しの後悔...

自分の行いによる後悔で今もなお脳裏に残るものがある。

高校3年の1学期の1限の英語の授業の前に遡る。

1,2年の積み重ねでひたすらに何よりも英語の勉強に時間を割いてきたから、志望校の合格レベルの土台、足固は問題ないってレベルまでその段階で仕上げていた自負があった。

高校の3年は皆が受験を本気で意識する段階でピリつく時期だ。

見えない焦りやプレッシャーから僕も無論ピリピリしていた。

英語の授業を1,2年の頃と変わらず最終学年のその年も僕らのコースの主任の先生が引き続き担当になることが決まった。(通称:千葉ちゃん、俳優の渡辺いっけいさん似で常にピコピコハンマーを持って授業する先生)

高校3年のその時の僕は...

"自分のわかる問題を他の人がわからない、この解説に充てられる時間って無駄じゃね?この千葉ちゃんの授業で時間を浪費するって正直意味ないんだよな。もっと有意義に時間使いたいわ..."

と真っ先に思ってしまった。

思うだけならまだしも...当時の僕はピリついていた。

1限の授業が始まる前に、僕は職員室へ向かう。

そして、千葉ちゃんのデスクの前に立ち...こう。

"あなたの授業は僕には必要ない。だから僕だけ自習させてください。"

他の先生方が一斉に僕を見た、そして凍りつく職員室。

"キーン。コーン。カーン。"なるチャイム。先生方は各々授業教室へ向かい、白い目で僕を見て職員室を出て行く。

そこには僕と千葉ちゃんの二人が残る。

千葉ちゃんは何も言わず、下を向いて険しい顔をしていた。

僕は血気盛んに"どんな言葉が返ってきたとしても、絶対反論して、時間を有意義に使うためにもこれしかないから、ここに立ってんだ!"と内心バチバチに滾るような感覚を持って、千葉ちゃんに正対していたのを覚えている。

チャイムから10分後ほどして、他のクラスメイトが職員室へ来て「今日の授業はどうされました?」と不安に聞いていた...

千葉ちゃんは「みんなには今日の1限は自習って伝えておいて」

そして再び僕ら二人に...それから30分以上の沈黙。

トータル45分ほどして、「なんで必要ないと思う?」と第一声が。

僕は、初めの頃に記したように

"自分のわかる問題を他の人がわからない、この解説に充てられる時間って僕には無駄ですよ。この授業で時間を浪費するって正直意味がない。もっと有意義に時間使いたいです...この時間で過去問でも解いていた方が身になります。"

こうハッキリと言った。

すると千葉ちゃんは真っ直ぐと頭を上げて、僕の目をスッと見つめ...

「わかった。お前だけ特別扱いする。で、いいな?」

僕は「はい。そうしてもらえるとありがたいです。」と言って、"キーン。コーン。カーン。"

当時の授業時間は50分。ほぼ、このやりとりで1限の時間が終わった。

他の先生方は授業を終えて、職員室へ戻ってくる。

"まだやってたの?"みたいな他の教師の視線をよそ目に感じて、僕は職員室を後にして教室に戻る。

他のクラスメイトからは"どうした?"みたいに聞かれ、一連の出来事の話をした。

その日はその千葉ちゃんの顔と行動、時間の流れが頭から離れなかった。きっとモヤモヤしていたからだと思う。

当初の目的は達成したけど、煮え切らない感情だけが残った。

次の週、皆と千葉ちゃんの授業を受ける同じ空間にはいるが、先生は僕には当てない。指さない。僕は自習をしている。

他のあまり仲の良くなかった女子からの、あの時の職員室の先生方のような白い視線を感じながら、自分のことに集中した。


時は流れて...卒業して担任に会うために高校を訪れ、職員室へ顔を出した時に、千葉ちゃんにも会った。

僕はあの時の煮え切らない感情を卒業後にも抱えていた。

「あの時の自分は単なるわがままで、傲慢で自分に逆上せていた。貴重な一つの皆の授業時間を僕の身勝手な行動で奪ったこと。今までの恩を忘れて、自分の実力だけだと勘違いしていた。そして、僕だけ特別扱いすることは、僕のことを快く思わない人が、同じように千葉ちゃんに嗾けるかもしれない、皆が皆自分のやりたいことを主張してきて埒が明かない収拾不能な不毛地帯になる。一人の身勝手さが団体の雰囲気を壊す。」

そう気付いたからだ。

そして、素直にその時に頭を下げて、当時の身勝手さを謝罪した。

千葉ちゃん「ハハハ~。後にも先にもあんな生意気に堂々と言ってきたのはお前くらいだよ。あの時考えてたことは、お前の言うことが実は正論だったから何も言い返せなかった。確かに当時のお前はできたもんな〜。長い教師生活で自分で授業ペースをつかんでいたつもりが慢心して、できる奴の芽を摘んでいたと気付かされた。お互いに悪いところはあったのは事実だったし、伝え方が下手くそだったな!俺もお前も笑」


僕が英語を学び続けられているのは、人に恵まれたからだと思う。

またふと思う。

"もし、当時許されなかったら、どう思い、どう振る舞っていたんだろう?"って。
英語を嫌いになっていたかな?
それとも人を嫌いになっていたかな?
内職に努力をしていたのかな?

わからないけれども。

僕が直談判によって得た、報酬と後悔は良い経験と教訓として今日に活かされている。

そして、千葉ちゃんの教育には感謝している。

自分の行動の先の感情へ対処、周りへの配慮だったりを教えてもらった。

人はいくつになっても間違える。

その時に自分の行動を振り返り、自己本位になっていないか?を問い正し、間違いを認め、成長していく。


言うは易し、行うは難し。

この精神で、また日々感情に立ち向かっていきたい。


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