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電話越しの縁

間違い電話を掛けてきた見知らぬ人と会ってみたことはあるだろうか。

およそ300km離れた街に住むその人から、たまたま間違い電話が掛かってきたのは、確か今から彼此20年ちょっと前の深夜だったと思う。

ポケベルから携帯電話に移行した頃で、今ほど個人情報が売り買いされてもおらず(少なくとも私の周りでは)、携帯電話に掛けてくる人といえば、大体友人知人だった。

幾度か表示される知らない携帯番号に、大方誰かが携帯を持ち始めたか/番号を変えたかのいずれかと思い、コールバックしてみたら、聞き覚えのない若い男性の声がした。間違い電話に間違えてコールバックしてしまった訳で、即座に詫びて失礼しようとしたところ、これもひとつの縁だしまあ少し話しませんか?ということになったのだった。

どのあたりに住んでいるのか。
歳はいくつか。
芸能人で言えば誰に似ているのか。
恋人や好きなひとはいるのか。

などなど他愛ないことを話し、その日は終わった。のだが、それからは間違い電話としてではなく、私めがけてしっかり電話がくるようになり、恋人も好きなひともおらず暇だった私はそれに付き合い、そんなことを何度か繰り返したのちに、中間地点の地方都市で会うことになった。

それが今の夫です。

なんて言うことだったら、とてもロマンチックなんだけど、間違い電話の君とは一度会って、それからも300kmの距離で何度か話して、いつしか電話がかかってくることも無くなった。

今ほど用心深かったら間違いなく会わなかったし、彼が良い青年だったので、何事もなく今もこうして呑気に回想していられるが、結構すれすれなことをしたなぁと思う。

何よりあの頃の私は、今よりずっとずっと暇人だったのだ。

#エッセイ #電話 #間違い電話 #これもまた縁


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