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初物を食べると75日長生きする!?

年度末といえば、これから新年度を迎えるにあたって、新しい環境、新しい出会いなど期待に胸膨らむ時季なのですが、今年は新しいといっても新型のコロナウイルスで不安で胸がいっぱいになる時季になってしまいました。

そんな人間界をよそに自然界は例年と変わらず初物と言われるものが収穫、水揚げされる春を迎えています。

初物の後は様々な青果物や魚介類の出荷量が多くなることで値段も安くなり他の時季よりも新鮮で美味しく食べられる消費者にも嬉しい時季、いわゆる旬を迎えます。

しかし、旬の中でもその“ハシリ”である初物は一般的に希少性からやはり高値になるのです。

そしてその初物を食べて自慢したり、見栄をはるようになったのが「初物食い」という食文化です。

江戸時代に広まったとされていて幕府が「初物禁止令」を出すほど江戸っ子の間で「初物食い」の競争が流行したそうです。

そのなかでも「勝つ魚」に通じる初鰹は人気が高く1本に6両(今の価値で20万円以上)の値段が付くほどだったそうです。

そのため日本では「初鰹は縁起が良い」とか「初物を食べると75日長生きする」などといわれ珍重されるのです。

ところで初物が珍重される意味はよく分かるのですが、なぜ75日なのでしょうか?

区切りの良い100を基準とすれば、何とも75は区切りが悪いのです。

欧米では1/4(クォーター)の概念は浸透していて比較的使用頻度が高いのですが、日本ではクォーター
の使用頻度は低く、この場合の3クォーターは珍しい表現と言えるわけです。

しかし、この75という数字が表すのは3クォーターではなく2.5か月であるところに言葉の発祥・由来があるようです。

それは、古代中国の思想「五行」からきていて季節の変わる時季を表しているとも言われます。

五行とは世の中は全て「木、火、土、金、水」という5つの元素から成り立っているという思想で、全てを5つに分類して把握すれば、森羅万象の仕組みから理解できるという思想です。

季節も例外ではなく、五行では春夏秋冬の四季の間にある土用を一つの季節と数え、5つに分類しているのです。

木が春、火は夏、金は秋、水は冬、土用は土となるわけです。

1年365日を5つの季節で割るとだいたい75日周期で季節が変わることになり初物を口にすると延びる寿命は五行で言えば1シーズン分ということになります。

ちなみに「人の噂も75日」ということわざもこの75も同じ数字で、その意味するところは噂を立てられても季節の変化とともに忘れられるということなのです。

そして類義の表現としては、
・善きも悪しきも 75日
・世の取り沙汰も 75日

等という言葉もあり、日本では75日が区切りの一単位として存在しているのです。

また農作物の種まきから収穫までが、およそ 75日位であることから、農耕の1シーズンという捉え方で農耕民族である日本人に浸透しているのかもしれません。

「初物を食べると75日長生きする」にはもう一つ由来が存在します。

それは江戸時代、死刑囚に対して町奉行は最後の温情として「食べたいものがあれば何でも与えてやる」という決まりがありました。

そこで、ある一人の死刑囚が一日でも長く生きるために知恵を働かせて季節外れの食べ物を希望しました。

現在のように何でも年中、手に入れることができない時代ですから、その食べ物はどこを探しても見つかりません。

そのため初物が出回るのを待つことになり結果、死刑囚は75日生き延びることが出来たということです。

そのエピソードが庶民の間に伝わり変化して「初物を食べると75日長生きできる」と言われるようになったと言うのです。

でもよく考えると、その死刑囚は一日も長く生きたかったはずなのに、なぜ、75日よりもっと先の旬の物を選らばなかったのでしょうか?

きっと死期(四季)を間違ったのでしょうね。

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