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札幌市とANAグループでUniversal MaaSの実証実験を開始皆で車イスに乗り、「バリアフリー地図/ナビ」用の情報収集を実施しました

2022年9月4日、札幌市と全日本空輸(ANA)、ANAあきんどは、北海道・札幌にて「Universal MaaS~誰もが移動をあきらめない世界へ~」の実証実験の一環として、車イスに乗り、街のバリアやバリアフリーを学ぶ体験型ワークショップ「WheeLog!(ウィーログ) in 札幌」を開催しました。当イベントは、Universal MaaSの地域パートナーとして連携している札幌市とANAグループが主催となり、Universal MaaSの「バリアフリー地図/ナビ」共同開発パートナーである一般社団法人WheeLogの協力のもとで実施されました。

Universal MaaSにおける実証実験の一環として札幌市内で開催された「WheeLog! in 札幌」

イベント当日は、日本各地の車イス利用者や車イスに乗ってみたいと応募した方々、そして北海道内の関連団体や札幌市民の方々、約50名が参加。札幌市民交流プラザ SCARTSコートを会場として、札幌近郊を回るワークショップが行われました。


車イスに乗って札幌近郊を回る

ワークショップでは、決められたルートを数班に分かれて回り、トイレやエレベーターなどバリアフリーの情報をスマートフォン用「WheeLog!アプリ」を用いて投稿。その後、会場に戻り「ハード面のバリアフリー対応」と「心のバリアフリー対応」に関した気づきを班ごとに発表。「WheeLog!アプリ」にて収集された情報は、ANAの自社サービス「空港アクセスナビ」に実装されたUniversal MaaS「バリアフリー地図/ナビ」機能に即時に反映されました。

イベントを通して気づいたポイントを書き出し、各班が発表

そもそもANAとWheeLogとのつながりについて、ANA 未来創造室 MaaS推進部 大澤信陽さんは、「以前より、WheeLog代表理事の織田友理子さんが別途展開されている『車椅子ウォーカー』にて学ばせていただいたり、Universal MaaSプロジェクトの立ち上げ当初からモニター役として織田友理子さんにお手伝いいただいていたりした」とのこと。

「WheeLog! in 札幌」で登壇するANA 未来創造室 MaaS推進部 大澤信陽さん

大澤さんは、Universal MaaSプロジェクトで行った過去の実証実験結果をもとに、「車イス利用者がドア・ツー・ドアで移動する際の課題は、大きく2つに集約できる」と話しています。ひとつは各交通事業者サービス利用時の介助手配依頼に関する課題(「一括サポート手配」による解決を目指している)。もうひとつは、それらサービスが整っていないところ、つまり自律的な移動が必要な徒歩区間に関する課題とのことです。
今回はまず後者にフォーカスし、積雪寒冷地である札幌ならではの課題抽出、課題解決を目指すべく、その第一歩として、車イス利用者による走行ログやスポット情報の収集をWheeLogと共に実施しました。

「WheeLog!アプリ」経由で、車イス利用者によるリアルな情報が集まる

「札幌市さんとの連携を推進していく中で、まずは市が保持する情報の活用を検討していたのですが、一方で車イス利用者による情報収集に課題を感じていました。市の公式情報だけではなく、車イス利用者が集めた情報とセットで提供することにより、はじめて徒歩区間の移動課題の解決に近づくと考えているからです。そこで今回はWheeLogさんのご協力を得ながら街歩きイベントを開催させていただきました。このイベントを通じて、北海道内の関連団体の方々やバリアフリーに関心を持たれていらっしゃる札幌市民の方々ともつながることができたので、今後がますます楽しみです」と大澤さんは話しています。

また、Universal MaaSの発案のきっかけについては、「岡山県在住の車イス利用者である祖母との原体験が大きい」と大澤さん。大澤さんにお子さんが生まれたとき「ひ孫に会いに行きたいけど他人に迷惑はかけたくない。道中でイヤな思いをしたくないので躊躇している、と祖母が本音を漏らした」そうです。
その後「祖母の背中を押して何とかリアルに会える機会をつくったところ、ものすごい笑顔で喜んでくれ、生き甲斐だと言ってくれた」という経緯もあり、「祖母と同じように、何らかの理由により移動をためらっている方々にも是非喜んでもらいたい」と思い、「Universal MaaS~誰もが移動をあきらめない世界へ~」プロジェクトにつながったそうです。

大澤さんはまた、これら原体験を通じて「利用者の本音に向き合って設計していかないと最終的に使ってもらえないモノが出来上がってしまう」という想いを大切にしながら、日々、Universal MaaSにおけるサービスや機能を追求しているそうです。
もう一点、これまでのUniversal MaaSの実証実験を通じて、「皆さん一人ひとりが、好みや考え方が様々であるのと同じで、車イス利用者であっても視覚に障がいのある方々であっても人それぞれで様々。10人いれば10通りの課題があって解決策も異なり、決して一括りにはできない」ということが分かったと大澤さんは説明。この課題解決には、「なるべく多くの選択肢、様々な情報を用意しておき、各々が自らの意思で選べるようにしておくことが重要」だそうです。
よって、「WheeLog!アプリ」によって収集した情報だけでなく、別の団体が違う切り口で集めた情報や、自治体や事業者が保持する情報など、様々な情報を整理し、より多くの選択肢を提供しようと進めているのが、Universal MaaSプロジェクトであり、「バリアフリー地図/ナビ」というわけです。「現在は、車イス利用者や視覚に障がいのある方々と一緒に『バリアフリー地図/ナビ』を構築しているが、将来的には『ユニバーサル地図/ナビ』の実現を目指している」とのこと。

一方、「地域創生」を事業のひとつの柱として考えているANAあきんどの海老名裕美子さんは、「最終的には事業として地域創生を成り立たせるというのが目標だが、現在はまだ入口段階。まずは自治体の課題に寄り添いながら、一緒に課題解決を目指したい」と話しています。

車イスに乗って気づく歩道や車道の傾斜などにも地域特性があり、各自治体との連携によってその理由や課題抽出が可能となる

そのため、このようなイベントを行うことで、各自治体の課題点を実体験として学ぶことができるのは貴重。同じくANAあきんどの阿部光歩さんは、「誰もが暮らしやすい街にしたい。誰でも楽しく暮らせる街にしたいという思いは一緒。それをひとつにまとめて、みんなで一緒に同じ所を目指す。それが地域創生につながっていくのでは」と説明。今後のANAあきんどが目指す「地域創生」の道筋が、Universal MaaSの取り組みを通じて見えてきたようです。


ANA 未来創造室 MaaS推進部

左上から: 野中 利明 さん、鈴木 謙次 さん、石井 祐司 さん

左下から: 北嶋 夢 さん、大澤 信陽さん、黒岩 愛 さん


ANAあきんど札幌支店

左から:小山 実さん、海老名 裕美子さん、阿部 光歩さん、田部 敏之さん