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生まれてすぐの保湿剤はアトピー発症の予防になるのか?
いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。
最近、参加した学会で
面白そうなトピックがあったので
勉強しました。
アレルギーの分野で
著名な堀向先生の文献ですね。
これは大変興味深い。
文献の内容を簡単に解説していきますね。
![](https://assets.st-note.com/img/1667529797144-4WIlmikcP4.jpg?width=1200)
1.試験デザイン
本試験では生まれてすぐに
保湿剤を使用した場合と
保湿剤を使用しなかった場合で
アトピー/湿疹の発症に差が出るのか?
を調査しています。
試験期間は32週間で
1か月、3か月、6か月、8か月時点で
症状を見ていきます。
(※前向き無作為化比較試験)
![](https://assets.st-note.com/img/1667527617331-NIiMRezwIS.png?width=1200)
主要評価項目は
アトピー/湿疹の累積発症率です。
副次評価項目として
IgEの血清レベル、水分保持能力
黄色ブドウ球菌による皮膚コロニー形成
を見ています。
ご家族にアトピー素因がある
生まれたばかりの子供118例を対象に
保湿した群が59例、保湿しない群が59例で比較しています。
湿疹が出た場合
ワセリンは使って良いですよ
というルールです。
本試験の難しいところは
生まれてすぐの子供に対して
主観的な評価が難しい中、アトピーをどう診断するのか?
です。
本試験では
『典型的な場所にかゆみを伴う湿疹が4週間以上続くこと』
『同じ湿疹が2週間以上続くこと』
の2つを診断の指標にしました。
万が一、皮膚トラブルがあった場合には
当院の外来を受診する指導をします。
![](https://assets.st-note.com/img/1667528109245-CzmMqQHEMW.png?width=1200)
2.そもそもどんな保湿剤があるのか?
本文献を読み解く前に
保湿剤の定義について説明します。
保湿剤には
肌に水分を与える保湿剤と
肌の水分が蒸発しないようにする保護剤
の2パターンがあります。(instagram参照)
具体的には、前者は
ヒルドイド(ヘパリン類似含有製剤)
尿素製剤(ケラチナミン/パスタロン/ウレパール)
は保湿を目的とした薬になります。
一方で、水分の蒸発を防いだり
保護を目的とした薬としては
白色ワセリン、亜鉛華軟膏、プロペトなどがあります。
本文献では前者の
肌に水分を与える保湿剤
で検証しております。
![](https://assets.st-note.com/img/1669534349441-sLk7zy0M5Y.jpg?width=1200)
3.試験結果
主要評価項目については
Kaplan Meiter法を用いて評価しました。
保湿剤を塗った群の方が
アトピー/湿疹発症率が低かった
と報告されています。
内訳としては
保湿剤を塗った群では
アトピーや湿疹が59人中19人が発症したのに対し
保湿剤を塗らなかった群では
アトピーや湿疹が59人中28人に発症しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1667528170589-6oYHwXu1as.png?width=1200)
副次評価項目として
血清IgEに関しては有意な差はでませんでした。
水分保持能力に関しては
12週目と24週目の下腿の角質層の水分量が
保湿剤を使用していない群に比べて
有意に高かったと報告されております。
黄色ブドウ球菌に関する項目でも
有意差は出ませんでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1667528512290-4TE1Zx46VT.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1667528532596-V7xbsWE56o.png?width=1200)
4.考察
本試験は
保湿剤を使用し、バリア機能を強くすることで
アトピー/湿疹の発症を抑えることができますよ
という一つの根拠となる文献ですね。
この文献で間違った解釈となるのが
『発症を予防するだけであって
アトピーが完治するわけではない』
ということです。
保湿を継続して
アトピーと上手に付き合っていくことが
大事ですね。
本文献では
離脱したアトピー患者さんについても
丁寧に解析している良い文献でした。
これから乾燥するシーズンになりますので
しっかり保湿していきましょう!
![](https://assets.st-note.com/img/1669534530820-GBMEURw2Kn.png)