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【存続危機】銀河系の3次元立体地図を作る国立天文台VERAプロジェクトとは?

電波で観測するとは?

夜空を見上げると、星を見ることができます。
でも私たちが見えているものはたくさんある星のごく一部です。
太陽の放つ電磁波のなかで特に強いのが可視光域です。私たちが見えている電磁波はこの領域だけです。電波も目に入ってくるけど視覚細胞が電気信号に変えられないから私たちには”見えない”んですね。

光

▲天文学辞典より https://astro-dic.jp/visible-light/

人には見えない、可視光以外の天文学は1931年にスタートしました。
無線通信の技術者であったカール・ジャンスキーが偶然宇宙からの電波を発見したことが始まりです。

電波観測は何が良いのか?

現在ではX線や赤外線での天文学、さらに電波からγ線での全波長域での観測も行われています。
その中で電波観測は何が良いのか?

1.  地上からの観測が可能

大気の窓

▲天文学辞典より https://astro-dic.jp/atmospheric-window/

多くの電磁波は地球の大気が吸収してしまい、地上から観測できるのは全波長域の電波と可視光と赤外線の一部だけです。

2. 波長が長いからガスに混じって大量にある星間微粒子による吸収を受けない →遠くまで見渡せる

3. 温度の低いものを観測できる

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電波は波長が長いので、星が生まれるところや年老いた星など温度の低いものを観測するのに適しています。

4. 電波は電磁波のうちで最も波長が長く、波としての性質が強い(粒子としての性質が弱い)

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電波は波長λが長いので望遠鏡の口径D  を大きくしないとよく見えません。
でも電波は波として受信できるので、”波の干渉”を利用してD  を大きくすることができます。 →電波干渉計

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波として受信できるって?

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波として受信できるということは、技術的に分光が可能で受信した情報から物質の組成がわかったり…と何かと都合が良いのです。
そして、波としての性質を利用すると”干渉計”を使った観測が可能です。

干渉計とは

電波は波長が長いので、望遠鏡の口径を大きくしないとよく観測できません。でも土地にも技術にも限界があります。
そこで、複数の離れたところに望遠鏡を設置し、受信した電波を干渉させることで高い分解能で観測しよう!というのが干渉計です。

複数の望遠鏡が一斉に同じ物を観測し、あとでそれらを1つにします。
私たちは目が2つあってその間に距離があるから、物との距離感を掴むことができたり空間的な解像度よく物を見ることができます。
その原理と似ていて、望遠鏡(アンテナ)は目に相当します。

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VLBIとは

Very Long Baseline Interferometry →望遠鏡の間隔をとても長くした干渉計

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▲干渉計サマースクール2005より

遠く離れた複数の電波望遠鏡を同時に使って観測します。ケーブルで直接結合することができないほどアンテナ間の距離が大きいため、基準信号を生成する原子時計は素子ごとに独立なものを使用します。それぞれの望遠鏡で観測したデータをいったん記録し、相関局に集めて相関処理を行います。

銀河系のマップを描きたい

VLBIや年周視差だけでは、遠くの銀河を観測するのにまだ誤差が大きいです。(地球大気の揺らぎ、基線の短さ)

年周視差

▲理科年表オフィシャルサイトより https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/tenmon/tenmon_018.html

そこでVERA📡

VLBI Exploration of Radio Astrometry(2003~)
VLBIを使って、銀河系内の電波天体の距離と運動をこれまでにない精度で計測し、銀河系の真の姿を明らかにしています。
💫国内の4ヶ所に設置した直径20mの電波望遠鏡でVLBI観測を行う
💫直径2300Kmの巨大な口径をもつ望遠鏡と同じ性能を発揮できる

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▲VERAホームページより https://www.miz.nao.ac.jp/veraserver/index-J.html

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▲鹿児島入来局 夜はライトアップされています

2ビーム同時観測による世界初の相対VLBI!

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▲VERAホームページよりhttps://www.miz.nao.ac.jp/veraserver/outline/vera4.html

隣接する2つの天体を同時に観測することにより、大気の揺らぎをキャンセルして、精確な位置情報を得ることができます(相対VLBI)

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▲干渉計サマースクール2005より

VERAでの観測精度は10マイクロ秒角。これは月面上においた1円玉を地球から見たときの見かけの大きさに相当します!

2019はブラックホールの撮影成功で盛り上がった…

ブラックホールの撮影で電波干渉計が注目されて、情熱大陸にVERAの本間さんが出演されたのを見て、とても興奮していました。https://www.mbs.jp/jounetsu/2019/04_14.shtml

ところが、予算削減… VERA終了!?

予算の大幅削減でプロジェクトが終了するらしいです。え…!?

天文学、お金かかります

宇宙からの微弱な電波を受信してそこから色々と情報を得るわけで、かなりお金のかかる研究ですし、すぐに何かの役に立つものではありません。
でも遠くを見るということは過去を見るということで、それは人類としてどんな未来に向かっていくか?を探ることでもあります。

私は鹿児島大学でこのVERA計画とともに大学生活を送りました。入来局で寝泊りして観測し、たまにいらっしゃる見学者の方にVERAについて語ったりしていました。
学部で卒業し天文学からは離れて久しいですが、昨年私が参加しているコミュニティ 福岡理学部(https://fukuoka-science.connpass.com/)で鹿児島までVERA見学にいき、久しぶりに天文学に触れてワクワクしました。
VERAのしおりを作って、キャンプのテントの中で夜な夜な電波天文学のお話しをしました。

そんな矢先こんな悲しいニュースが流れてきて、寂しく思っています。

そこでテントの中で語ったように、VERAについて語ってみようと思ってこれを書きました。

電波干渉計の仕組みに関する文献

ざっくりとVERAについて語りましたが、ちゃんとしたアカデミックな情報はこちらから!ご興味あればかなり面白いと思います。

▲干渉計サマースクール2005 教科書


運用継続を応援する署名運動

こんな活動もあるみたいです。ぜひ、賛同お願いします!






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