![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/140484569/rectangle_large_type_2_afe76413cb9e05ea3e574c45ef3973d0.jpg?width=800)
来月は
4月も下旬、暑くなり始めたある日のこと。
新年度が始まってすぐの慌ただしさも落ち着き、この時期の僕達学生が話題にすることといえば、
「体育祭だよな!」
「違うよゴールデンウィークだよ」
おるばくんは何の行事でも全力投球でえらいね。僕は体育祭の日付ちゃんと覚えてないよ。予備日も総練習も。おるばくんは連休も楽しみだな!と微笑む。
「5月に体育祭やる学校と、9月に体育祭やる学校があるけど、秋は文化祭やら修学旅行やらがあるから、うちの学校は5月なんだよな。」
「5月も9月も暑いことに変わりはないからどっちでもいいけど、せめて体育祭の後の体育でプール清掃するのはやめて欲しい…体力が…」
「プール清掃も面白いけど、疲れるよな!
ところで、ましゅは今年どの種目に出る予定?」
「どの種目か…」
と言ったって、100m走や400mリレーなどの競技で活躍出来るわけが無いし、綱引きとか男子騎馬戦とかは全員参加だし。他に何があるんだっけ?
「特に考えてなかったや。おるばくんは?」
「俺?この間の100mのタイム的にリレーかな」
「さすがだね」
おるばくんは陸上部として走っても遜色ない脚力の持ち主。同じ種目に出ることは初めから諦めている。
「ましゅは借り物競争とかいいんじゃないか?玉入れとか障害物競走とか好きじゃなさそう」
「何でもわかってるね。もっと言えば体育祭自体そんなに好きじゃないんだよ」
僕がめんどくさいオーラを出していても、おるばくんはお構い無し。太陽のような人なのである。
「どんなテーマでも無理やりこじつけてくれれば、俺が走って一緒にゴールまで行くよ!小道具だって色々持っていくからさ」
「テーマが『おかん』とかでもおるばくんなら許されそうだもんね」
2人で笑いながら話しているけど、ふと僕はあることが一瞬脳裏をよぎる。
もし、
もし、テーマが『好きな人』だったら、僕はどうしたらいい?
たまにこういうイロモノみたいなテーマも入っていて、それはそれは盛り上がりを見せるのである。きっと今年もこういうテーマがあるだろう。
みんなの前でおるばくんを呼ぶ?
みんなの前でおるばくんのことが好きだと公開できる?
分からない。
それをして、おるばくんとの関係が変わってしまったら怖い。
でも、好きな人としておるばくんを選べないのも、おるばくんを裏切るようで嫌だ。
「今年は…」
「今年は?」
「今年は、玉入れに出ようかな。チーム戦だからそこまで目立たないだろうし。借り物競争はその、テーマによっては…恥ずかしいのもあるからさ」
「…なるほどな。良いと思うぜ!種目決めるの明後日のホームルームだから、その時までにジャンケン強くなっておかないとな」
「え、玉入れってそんなに倍率高いの?」
「今年うちのクラス野球部とかバスケ部とかが多いから、人気出そうじゃない?」
「知らなかった…野球部とかバスケ部が多いんだ」
正直もうゴールデンウィークのことなんて考えられないくらい、体育祭のことで頭がいっぱいだった。負けてもいいから何事もなく過ぎ去って欲しい、ただそれだけ。
しかし悲しいことに、種目決めのときにジャンケン1本目で即負けをし、あっという間に借り物競争の選手になってしまった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?