【獣医解剖病理レジデント編】ようやく時間ができたのでレジデント生活2か月を振り返ってみた

こんにちは、あらめんです。
解剖病理学の専門医を目指すべく、3年間の専門研修医(レジデント)生活が8月1日から始まりました。2か月と少しが経ちようやく時間ができたので普段の生活の様子や内容をnoteにまとめたいと思います。

Noteを書くと久々に言ったら、妻に安心されました。どうやらあらめんは時間と心に余裕ができたときに書く傾向があるそうです。

病理医については、アンナチュラルが丁寧に説明してくれているのでこちらからどうぞ。

金曜ドラマ『アンナチュラル』|TBSテレビ

ともかく、まず大まかにどんなことをしているかをまとめたいと思います。
病理レジデントとしての業務の内容は

①ケースの解剖、所見のレポート作成
こちらは至ってシンプル。解剖時にみつけた所見をレポートに書き、担当の病理医の添削後依頼主に送ります。期限は2日以内なので意外と時間がないです。

②組織の顕微鏡検査、最終レポートの作成
解剖時に回収した組織を顕微鏡で細胞単位で細かいところまで異常を確認します。また、内容によってウイルスのPCRや微生物検査、毒性検査などもお願いすることができます。

③週に1回の症例報告ラウンド
毎週月曜日に先週担当したケースの所見や検査の報告をし、どのような病気の可能性があるか、などをレジデントがプレゼンします。幣学はレジデントがあらめんのみなので一人で永遠に話し続ける時間です。ラウンドには病理医や、州のUSDAの獣医師(農林水産省の獣医師とほぼ同じかと思います)、ほかの機関の偉い人などが参加します。

また、弊学ではレジデントを学部の大学院生として雇用しているので、大学院の内容もあります。
授業と称して上記のレジデントの業務を単位にしているのに加え

①グロスラウンド
病理医がケースの写真を10枚ほど準備してくれるので、その写真を見てどのような異常が起きていて、どの病気が考えられるか、というのを掘り下げていくラウンドです。基本、レジデントがすべて答えるので、ここもたった一人のレジデントあらめんが数人の病理医に休む暇も悲しむ暇もなく永遠に詰められます。スライド読みよりかこちらのほうが好きだし経験があるので意外と何とかなります。たまに全然わからないケースが出てきてぼこぼこに詰められます。

②ジャーナルクラブ
論文を読んで内容を理解しているか確かめよう、みたいな会です。Veterinary Pathologyという大御所のジャーナルを毎週読んで各自質問を作ってきてみんなで答え合わせをしよう。という会です。専門医試験はこのジャーナルからでるものも多いので、いまのうちからしっかり勉強しようという会ですね。
具体的な内容としては、レジデント(あらめん)が毎週論文を数本読み、まとめを作り病理医にシェア、まとめをもとに問題を作成し、当日詰められます。当然レジデントは何回確認しても1人なので、毎週自分一人でひたすらまとめを作ります。多いときは論文を8本読みました。時間さえかければなんとかなります。面白い内容のものも多いので意外と楽しいです。

③顕微鏡ラウンド
オンラインに上がっているケースのスライドをスクリーンシェアでリアルタイムで読み進めていく、という内容です。こちらが今のところ一番地獄です。これは本当によく詰められます。悔しいので毎週しっかり準備をして臨みますが詰められます。

④学部生の授業のティーチングアシスタント
TAというやつです。自分が担当しているのは解剖生理学です。授業は教授が行うのであらめんはラボ(実験?)の担当です。金曜日の朝8時から4時までで4クラスを担当。本来は学部生のアシスタントが半分担当してくれるはずだったが蒸発、音信不通なので4クラス担当しています。朝の準備が非常に大変。準備が多いときは朝6時過ぎくらいから黙々と標本とか運んでいます。あとは課題やテストの採点などの雑務担当。ただ、レジデントの仕事を気にしなくていい唯一の時間なので心のオアシスとなりつつあります。

なので、大学院生といいつつ一般的な授業をとっているわけではないので他の院生との関りはほぼありません。一応名前と顔は知っているのであいさつ程度はします。

以上がざっと業務の内容でした。
今だからこそさらっと書いてるけど、最初は本当に大変でした。今も大変ですが。

初日から振り返りましょう。
8月1日、現着。勝手なイメージでしたがインターンやレジデントが始まる数日前、もしくは初めの数日間は事務処理やツアーなどのオリエンテーションがあるのが普通だと思っていたので(少なくともローテーションを行ったミズーリではありました)、軽い気持ちで臨みました。一応学生証くらいは作っていきました。
到着後、ひとまず直属の上司にあたる3人の病理医に挨拶。軽くお話をした後デスクやオフィスアカウントの設定などをこなしていると(オンラインの研修は事前にすべて終わらせていました)、今から10分後に解剖始めるから準備できたらフロアに集合ね~なんて連絡が。

え?

どこに何があるのか何も知らないのだけど、ひとまず着替えてフロアに行くことにしました。最低限着替えとフロアの場所は朝教えてもらっていたので良かったです。
というわけで早速フロア到着。

信じられない光景が。

ざっと見る限り20件ほどのケースが並んでいました。
ボス「じゃ、今から始めるから!私は右からやってくからお前は左からな!じゃ!」

といって突然作業を始めるボス。何も知らないあらめん。立ち尽くす。
さすがに説明が足りないと感じたので最初の1件はデモを見せてもらいその後確認してもらうことに。

なんとなく流れを(多分)理解したので見様見真似でやったらどうやらあっていた模様。
ボス「お、いい感じだね、その感じで左からよろしく!」
というわけでオリエンテーションなんてものは全く存在せず、ポケモンの最初のバトル並みの薄いチュートリアルを終え突然現場に入ることに。

とはいえ、学生時代に一通りはやっていたのでなんとかなりました。ただ学生の時は獣医学生が解剖をしてレジデントが確認する、という流れだったのが、うちでは獣医学生は存在せず学部生のアシスタントなので、器材やペーパーワークは手伝ってくれますが手技は基本すべて自分で行う、というのが大きな違いでした。

そして、さらにトラブル発生。
5件くらい終わったときに、ボス「じゃ、私ミーティングあるから少し抜けるから!何かわからなかったらテキストして!バイー」なんて言って颯爽と消えていってしまった。

というわけで、初日の解剖は合計26件。
学生時代は最高7件。しかも学生は8人くらいいました。初日から圧倒的洗礼を受け、フラフラになりつつ帰宅。
が、レポートを書き上げないといけないので帰宅後はひたすらタイピング。レポートなんて書くのも半年以上ぶりだし最初は時間をすごいかけました。

夏休みは大学院生としての仕事がない分、解剖を週5で担当するように言われました。なので、レポートを翌日に回してしまうと日中書く時間が取れず詰む、という最悪なイベントが発生してしまうため、自分は放課後にひたすら書いています。

そんなこんなで、初日に担当したケースのスライドがあがってきました。
初日ボス「最初は1から教えるから一緒に読むからね!」
いざもっていってみると、ボス「さすがにケース多すぎるから自分で読んできてくれ、わからない部分は教科書読むんだ!」
初日と対応が違うのに焦りつつ、自分で教科書をみながら読んでいくことに。

スライド1枚読むのに途方もない時間がかかりました。
1症例終えるのに1日かかったりもしました。
妻曰く、漫画「フラジャイル」の初期を現実で見ているようだと言っていました。

ボスからは、最初の数か月は本当にきついからね、と面接のときに言われてはいましたが、本当にきつかったです。
そしてレジデントが1人なのはここでも響きます。気軽に相談できる人がいないことです。病理医からは、他にレジデントがいない分気軽に質問してね、と言われていましたが最初の初歩中の初歩は悪くて聞きにいけませんでした。ちなみに今では本当に気軽に質問しにいっています。

ともあれ、数週間がすぎ秋学期に突入。大学院生としての生活も始まりました。色々な人から学期中は大変、と言われていましたが夏休みも十分大変だったので、これ以上どうなるのかなんて思っていましたが、本当に大変。午前中は雑務やTAの授業、週4日あるそれぞれのラウンドであっという間に終了します。そして午後は現在週3日で解剖担当なので基本数時間はつぶれ、金曜日は終日TAのラボで拘束されます。スライドを読んだりレポートを書くのは一人でできる業務なので基本的に放課後か週末に消化し、平日の隙間時間をうまく使って病理医と読んできたスライドの確認をしたりしています。平日夜は基本的にはレポートを永遠に書き続け、週末はたまったスライドを1日使って全部読み(大抵100−150枚位)、もう1日は翌週の4つのラウンドの準備にあてたりTAの業務をこなしています。

平日の忙しさは完全にケースの量に依存するので、忙しいときは週に30件以上こなす時もあれば、少ないときは10件という週もありました。内容の濃さもあるので数だけで一概に言えることはできませんが、「圧倒的な数が質を凌駕する」というのは理にかなっているのかもしれません(凌駕される側)。

恐ろしい忙しさを感じましたが、悪いことばかりではないかと個人的には思いました。
まず第一に、一人しかいないレジデント。とても忙しく気軽に相談できる相手がいない、というのも、裏を返せば1年目のうちから色々な経験をでき、困ったことがあれば専門医に質問することができる、という風にとらえることもできます。
他のプログラムとの比較は難しいですが、ミズーリでは1年目のレジデントは週に多くても3症例ほどしかとらないようですので、ここでも「圧倒的な数が質を凌駕する」であることを信じて毎日必死にこなしていく中で経験値が上がっていくのを最近実感しました。

元々昭和的()なパワー系家庭と職場で生きてきたので今の「習うより慣れろ、とにかく働いて数をこなせ、話はそれからだ」みたいな風習はどちらかというと好きなので合っていると思います。元々昼休憩2時間週休3日のスーパーハイポ1次診療からきたので最初はギャップに苦しみましたが、本来のライフスタイルに戻った気がして忙しさを楽しんでいます。

また、今の職場で必要とされているものが自分のスキルにあっているので快適に過ごしてはいます。恥ずかしながら、秀才かつ経験豊富、即戦力になりつつ育てがいがあるタイプではなく、気合いと従順さを備えたマルチタスクだけは得意な労働力として使われるパワータイプなので、慢性的に人手が足りずレジデントの数も減り(去年までは2人)、勝手にやってくれ状態の職場に合っている気はします(だといいですが)。

弊学の好きな所がもう1つ。色々な種類を診れます。犬猫や家畜は勿論、爬虫類や両生類、鳥類、モモンガやウサギもよく来ます。今のところ圧倒的に多いのは鶏ですが、鶏を沢山診れる場所は限られているのでいい経験かなと思います。また、定期的に水族館から鮫やタコ、魚の組織が送られてくるので海洋生物の経験も積めます。

お陰様で今週はわずか15件で余裕ができたので平和にまったりしながら論文読んだりnoteを書くことができました。慣れって怖い。ちなみに過去1人も週3日コンスタントに解剖担当したレジデントはいないそうです。9月から突然週3日シフトになっていました。ボスからは何も言われてないのでこちらからも何も言わないことにしました。週によってはギリギリですが管理できる件数なので、貴重な学習機会をより多くもらえてラッキーだと思っています。これは本当です。


だいぶ長くなってしまいましたが、ニューヨークを去りニューイングランドにいますが、元気に生きています。空気が綺麗で寒いです。面白い症例や論文やプレゼンの発表の話もでてきているので毎日がとても楽しいです。

最後、おばあちゃんに書く近況報告みたいになってしまいましたが今回はこれで終わりです。次回は半年近況報告もしくは何か書くことがあれば。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?