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[研修@株式会社百森]自分なりに環境を考える理由を体感した。

西粟倉村といえば森林。西粟倉村はおよそ95%が森林で構成されています。人口は現在1370人です(2022.5.31)。シカ人口はヒトの1.5倍だとか3倍だとか…諸説ありです(笑)。とにかく、夜は必ずシカに会うといっても過言ではありません。

ちなみに徳島県上勝町で少し研究をしていた友人は、ヒトよりサル人口が多い、と言っていたので、この手のネタは地方あるあるでしょうか。笑

さて、村に住みながら行っていた研修についてですが、まずは株式会社百森さんにお世話になったお話を。


株式会社百森

株式会社百森は、そもそも西粟倉村の役場で立ち上がった「百年の森構想」から企業化されたものだそうです。約50年前に植えられた人工林をあと50年管理し、未来に託せる森にしよう、という思いが込められた事業です。

日本ではそれぞれ土地の所有者がいて、管理どころか基本的に他人の土地には勝手に入ったりできないですよね。この村では、全員ではありませんが、多くの森林土地所有者の方が役場に管理を委託し、役場が百森に間伐等森林整備などを委託する形を取っています。

管理者が異なる敷地毎に手入れするのと異なり、ある程度の広さをひとつの企業が一括で整備できるため、専門の人、大型機械を導入し少しでも効率よく管理できる、という構造です。

もちろん、ご自身で管理されたい方は、あえて管理委託していない方もいらっしゃいます。あるおじいちゃんは、小さな頃、祖父と植えた木の管理は自分でしたい、と仰っていました。

西粟倉の森林はかなり面積が大きく、大規模な機械を使用出来るからこそ成り立つ仕組みかもしれません。自伐型林業が主たるところでは、また有用なシステムは異なると思います。鳥取県智頭町や高知県佐川町では、自伐型林業で面白いシステムや取り組みをされていらっしゃいます。

株式会社百森
山に関わることで人の暮らしが豊かになり、人が関わることで山もまた豊かな場所となるよう、私達は水先案内人ならぬ「森先案内人」を目指しています。
HPはこちら。

林業の事例
【鳥取県智頭町】若手林業集団「智頭ノ森ノ学ビ舎」についてはこちら。
【高知県佐川町】自伐型林業についてはこちら。



森林整備のあれこれ。

実際に私が関わったお仕事の内容は、ざっくりと以下のようなことです。

(1)ナラ枯れ調査
(2)広葉樹、針葉樹などの生育調査
(3)広葉樹の苗畑つくり
(4)現場管理を見せていただく

(1)ナラ枯れ調査
「ナラ枯れ」という樹木の伝染病に、どれだけの木が侵されているのかを調査しました。キクイムシという虫が木に侵入し、木が水分を体内に循環させられなくなり、枯れてしまう病気です。少しでも拡がりを食い止めるため、どの木が侵されているのか調べ、処理する必要があります。

ナラ枯れに侵されているものは、フラスという木の粉が、樹皮や根の周りに出るのですが、何十年も生きている大きな木たちが、2mm程度の虫に枯らされる事実がとても衝撃的でした。

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根元のフラスの様子
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周囲の木の葉が生い茂る中、中央の木は枯れている

かなり興味深く思ったのは、人間の免疫のような作用があることです。キクイムシが侵入した後、抵抗して枯れなかった樹木には、その後キクイムシが入りにくいという現象があるそうです。

(2)広葉樹、針葉樹などの生育調査
前述しましたが、西粟倉にはシカがたくさんいます。若い芽はシカたちにすぐ食べられ、間伐後の稚木の生育が難しい状況にあります。そこで、囲いの有無や下刈りの有無、広葉樹・針葉樹それぞれいくつかの環境下で生育状況を観察しています。

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囲いをすると、シカに食べられず繁茂する

(3)広葉樹の苗畑つくり
戦後日本では植林が活発になり、現在多くの人工林が針葉樹で構成され、西粟倉の森林も同様です。生態系として多様な植生である方が好ましく、また秋の娯楽としても楽しめるよう、広葉樹の苗を育てています。

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広葉樹の苗畑

基本的に、広葉樹の種子を拾い、苗畑に植えます。間伐の際に、土壌を削る過程がありますが、その前に若い広葉樹の芽を救出する方法もありました。

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若い広葉樹の芽

(4)現場管理を見せていただく
設計図からズレがないか、工期の進捗はどうかなど、現場の方たちと細かく進捗確認していらっしゃいました。

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間伐のため整備された道

私は学部生の時に建築学部に所属しており、自分たちで設計したものを何度か施工しましたが、現場は計画通りに進まないことが多く、現場と設計は意思疎通が難しい印象があったため、頻繁に話されているのが印象的であり、大切なことだと感じました。

森林管理といっても間伐やそれに際することしか想像できなかったため、実際に現場に入らせてもらえたことで、森林管理の仕事は非常に幅が広いことがわかりました。園児に授業を行ったりもされていました。

林業はかなり危ない業種で、他の産業の死亡率と比較すると12倍だそうです。私のような、なんの経験も専門性もない学生が、現場に行かせていただけたことは、とてもありがたいことだと実感しています。

山の勾配に慣れていない、気温や体力との戦い、こけたり滑ったり、何度か危なかったと思うこともありました。しかし、危ないことを禁止するのではなく、自分で実感しつつ、なぜ危ないのか知らなければならないと、思います。

日本で林業従事者がなかなか増えない理由の一つは、その入り口がかなり狭いことも大きいと思います。なぜ危ないのか理解し、より多くの人が経験できるような環境を整備出来れば、関心を持つ人も増えるのではないかと思います。



森林を整備する理由

今日では、環境にやさしく、SDGs、森を守る、なんて言葉は当たり前になりました。ですが、自然環境に対する行いの成果が出るのは、何十年後、何百年後です。今正しいと言われていることも、本当に正しいのかはわかりません。

理由も、結局は人間のためなんだよな、と思っていました。

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森林の様子

そんな中、百森で働く方の言葉で、強く印象に残っているものがあります。

「自分は小さい頃から森で遊んできた。別に環境保護のためではない。
 自分の遊び場として、大切に残したいと思っている。」

森との関わり代や想いは様々で、「自然は大事だから」「環境を守るのは当たり前だから」ではなくて、それぞれが自身の理由をもって動けたらそれが一番いい、と改めて思いました。

自分の落ち着く場所に空き缶が捨ててあれば嫌だし、植物が好きな人は植物がイキイキ健康になるようにしたい。川や海をきれいにしたい人は、木々がそれぞれ根を強く張れるように整備したい。もちろん、ビジネスのためでもいいのだと思います。

基より「環境が大切だから守る」よりも、「なんでそれをやるんだろう」「なぜそれが必要なんだろう」と、何に対しても自分で考えることが、当たり前になるといいと思います。


休みの日も山にいる森林博士のような人、植物や森がとにかく大好きな人、チェーンソーでご自身が作品制作もされている人、お子さんが森の中の幼稚園に通っている人など、百森の方々は、それぞれの関わり方をされています。

百森さんでもnoteをかかれていますので、是非ご覧ください。
百森さんのnoteはこちら。


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踏ん張っている人みたいで、思わずパシャリ。

百森さんでの研修を終え、今の私は、公園の木に時折抱きついてしまいます…(笑)森や自然のものと一緒にいる時の心地よさ、風に揺れる葉音や、幹のぬくもりを感じて、おんなじ生物だなぁと感じます。

これが、今の私の理由です。

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