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【VR作品紹介】第27回 モノガタリ交流会【テーマ:歴史】

◆「モノガタリ交流会」とは?

 皆さんこんにちは、A-Literary Works.(エーリテラリー・ワークス)です。今回は第27回 モノガタリ交流会の発表の様子について紹介したいと思います。第27回の内容に入る前に、企画の概要についておさらいしましょう。

 「モノガタリ交流会」とは毎週日曜21時VRChatにて開催中の創作PR会になります。特定のテーマを踏まえて毎回2名が作品を発表し、交互に感想を伝える進化形読み合い企画になります。発表・コメント共に5分と気軽に参加できるので、評価を求めるクリエイターや、VR上の物語に興味のある方々は是非ご参加、ご観覧ください。

 作品は小説・詩、演劇、映像、漫画、ゲーム・ワールドなど、物語性を含む一次創作であれば紹介OK、ただしなるべくシナリオを強調するようお願いしています。作品内容や発表内容は基本的に自由、ただし他者の作品や二次創作はNG、パロディ・オマージュ作品はOKとします。

 ……という訳で、第27回の発表者、テーマは以下のようになりました。

◇第27回 モノガタリ交流会【テーマ:歴史】

【No.53】利賀セイクさん「【短編】大汎天、もしくは神奈川市の歴史について」

 一人目の発表者は利賀セイクさん(https://x.com/sec_thugua)になります。利賀セイクさんの作品「大汎天、もしくは神奈川市の歴史について」は慶応二年、鎖国終焉後の神奈川湊に生きる主人公・鈴木寅之助の手記の中で当時のIFストーリーを描く歴史SFの短編小説になります。寅之助とアメリカの商人ジョージ・モリスを中心に、『希臘窮理論』などのアメリカの商品が日本に持ち込まれると同時に、外国人街に「胡蝶という羅紗面」の噂が蔓延り、「百を越える神奈川の民が夢に希臘の原始の神・パンを見た」という奇怪な現象が流通し、寅之助も薬によって漸く自害の思いを押さえられる程に追い詰められていきます。本作は当時の日米修好通商条約で開港予定地が神奈川から横浜に変更されたことから着想を得、もし神奈川が開かれていたらどういう運命を辿るだろう、終盤街が焼け野原となる胡蝶の夢が夢でなかったかもしれない、という風に想像掻き立てられる展開となります。るいざさんは ウクライナ民謡「キャロル・オブ・ザ・ベル」にも似た世界観を見出しつつ、後半登場する巫術師の台詞からラヴクラフト『闇に囁くもの』を発想し、クトゥルフ神話炎の精Vtuberを活動コンセプトとするセイクさんの本質を見抜きました。沈黙は表題の「大汎天」という造語や「ギリシャの神語りを欧米の昔話として、フィロソフィーを欧米版の儒学として」といった地の文を含め、細かい修辞が効いているように思いました。是非続きがあって欲しいと思う一作です。

◇作品リンク:https://note.com/sec_thugua/n/ne6e9a412fc60

【No.54】るいざ・しゃーろっとさん「禁書」

 二人目の発表者はるいざ・しゃーろっとさん(https://x.com/VRCLouisa)になります。るいざ・しゃーろっとさんの作品「禁書」は十九世紀のウクライナの国民的詩人・タラス・シェフチェンコを描いた前編「詩人の嘆き」と、ツァーリの言論統制に抗う民族社会主義者・ミハイロ・ドラホマノフを描いた後編「密輸」から構成され、焚書を始めとする言論統制が近代から今に至るまで連綿と続いている様を想起させます。仮想か現実か、過去か未来か、実体か幽霊かといった諸々の二項対立を乗り越える「並行現実主義文学」のテイストはそのままに、これまで以上に史実的でるいざさんの本領が最大限発揮されているように思え、沈黙の中ではるいざ作品ベストを更新したように感じました。「ああ、モスクワの連中に、分からせてやる……これが『現実』ということを」という最後の台詞からは規制しても消えない自我の強さが伺え、シェフチェンコの最期の詩の引用やハインリヒ・ハイネの「本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる」からも言葉の重みが強調されます。沈黙的には当時のウクライナ語を指す「非実在言語」という表現が興味深かったのと、たばこの箱に書物を入れて密輸するシーンがとても良い演出だと思いました。セイクさんも表現は決して禁止できないことをしみじみと実感し、皆でこれからも平和な世界が続くように願いました。

◇作品リンク:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22501095

 以上、第27回 モノガタリ交流会のお二人の紹介作品となりました。皆さん如何でしたでしょうか?興味を惹かれたものについては、是非リンク先から作品を鑑賞してみてください。また発表者の方は常時募集しています。興味のある方はDiscordサーバー(https://discord.com/invite/UkYn7ZrY8t)に是非ご参加ください。それでは、また。

 文責:沈黙静寂(A-Literary Works.代表)


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