桃太郎伝説 if 3

3話「鬼ヶ島」

ワシは鬼の住む島鬼ヶ島の長をやっておる善鬼(ぜんき)という者だ

普段は近くの海を荒らす海賊や荒くれ者共を取り締まるかわりに海沿いの村から食料等を頂いて暮らしておる

なーに姿は鬼だが心根は大人しいから安心なされい

村の人々とも仲良くやらせてもらっておるしな

しかしながらこの間の大嵐からこっち変な胸騒ぎがしてな

朝の散歩がてら海の様子を伺って三日目だったか

現れたんだよ「あいつ」が


「カシラー!今日も散歩ですかい?」

見張りの鬼から話かけられた

「おう、どうもまだ海の様子が気になってな!」

「まだ荒れてるんですから気をつけて下さいよ!」

心配する鬼をなだめて浜へ向かった

「うーん、まだまだ海へ出れそうにないのう」

いつもは嵐のが過ぎればすぐに穏やかになった海が未だに荒れている

何かおかしいとずっと思っていた

「ん?なんだあれは?」

海に浮かぶ何かに気付いてすぐだった

「あ、あれは...何でここに流れてくる?」


それは大きな

とても大きな桃だった

程なくその桃は島に流れ着いた

ワシはその桃をただ見つめていた

何分か何時間か分からない

気付いたら島の長老が横にいた

「来おったか、ついに」

「長老...しかしなぜ桃のまま?」

「わからぬ、なんぞ神が気まぐれでも起こしたかの?」

ワシは

ワシらはその桃を知っていた

むかしむかし遥か昔に現れたその者も


「カシラー!」

さっきの鬼に呼ばれて我に返る

「艶鬼(えんき)様が傍に居てくれと呼んでますぜ!」

「そうか、そろそろだったな」

「善鬼や、これも持って行け、さだめじゃろうて」

「はい...ワシも腹を括りましょう」

妻の艶鬼が100匹目の子供を身篭っていた

もうすぐに生まれる我が子

そしてもう一人

この桃から生まれる子

理由はどうあれここにこの子が流れ着いたからには

ワシは生きていこう

愛する我が家族達と

桃から生まれた


桃太郎と


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