桃太郎伝説 if 6
2話「鬼の頭の嫁さがし」
「うーむ、どうするか…」
ここ数日善鬼は悩みにふけっていた
その様子を見ていた艶鬼が声をかける
「どうしたのよお前さん、最近ずっとうんうん唸って」
「いやな艶鬼、そろそろワシは桃に頭を譲ろうと思っていてな…」
「ええっ!?なんでまた急に!まだ桃には早いと思うよアタシは!」
少し間を置いて善鬼はその理由を語り始めた
「ワシはな、桃がこの島に来た時から考えておったよ、お前も忘れた訳じゃないだろう?桃が本当は…」
「やめてよお前さん!まだアタシは頭のあんたや子供達を支えて行きたいんだから…」
涙目で訴える艶鬼をなだめるように善鬼は続ける
「ワシが頭になってからもう1000年程になる、お前もよくワシや島の家族達を支えてくれた、だがな…もうそろそろ若いやつらに席を譲ってやりたいんだ、桃ならきっと大丈夫だ、立派な頭になって皆を導いてやれる」
「あんたが嘘つく時は決まってよく喋るよね、昔から何も変わってないね…」
バツの悪そうな顔で善鬼は
「ハハハ!やっぱり艶鬼には敵わんな!いずれ本当の訳を話すよ、約束だ」
「本当だね?約束破ったら金棒千本飲んでもらうよ!」
「そりゃかなわん!意地でも守らんとな!」
「それで何を悩んでたんだい?覚悟が決まってるなら譲ればいいじゃないか」
善鬼はまた困ったような顔で
「ほら桃も今日で17だろ?頭を譲るにしても何にしてもぼちぼち身を固めんとな…」
「なんだいそんな事か、あの子は近くの村に行けば娘子に大人気らしいじゃないか!その中からいい子を見つけて来るだろう?」
「うーん、まあそうなんだか…どうも桃は乗り気じゃないみたいでな…」
「あの子も生意気な事するようになったもんだねぇ」
少し機嫌を損なった艶鬼を見て善鬼は焦る
「ま、まあそのうち桃も女の偉大さに気付くだろうて」
2人が話込んでいると艶鬼がはっと思い出す
「いけない!もうすぐ桃と桜鬼が帰って来るじゃないか、食事の支度しないと!」
慌てて料理の支度を始める艶鬼を横目にまた善鬼は唸り出す
「さて、どうしたものか…いや今は忘れよう、今日はめでたい日だ、2人の祝いの事だけ考えよう」
息子を思う親心
知ってか知らずか己と妹の生まれた日を楽しむ息子
鬼の跡目の嫁さがしは
まだまだ続く
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