シンくん

婚活パーティーに行って、ラバストを譲渡されて帰ってきた話

※この記事は、2017年11月にprivetterにアップロードした文章に、加筆修正を加えたものです。


(あらすじ)

6年間付き合った男から一方的な婚約破棄に遭い、ボロボロのわたくし(28歳腐女子)は、
楽しみにしていたKING OF PRISMの舞台も、「男が怖い」という理由で行けなくなる程の傷を負ってしまった。

傷を癒すために、うたの☆プリンスさまっ♪(2010)を初プレイし、
「トキヤは、HAYATOを辞めたがりながらもHAYATOの恰好をして、七海春歌を試してた頃が一番輝いてたな……」というがっかり感を得ると同時に、
「セシルちゃんとゾウに乗りたい」という、人間らしい気持ちを取り戻す所まできた。

次なるステップとして、現実の新しい男性と知り合って、
男性という生き物の悪くなさを確かめたいと思い、婚活パーティーに行くことにした。

(あらすじおわり)


都内某所で行われた、婚活パーティーに参加した。
アニメ好き集合♪みたいな、ゆるいノリの括りだ。
私は婚活パーティーに行くのは始めてだったから、こういう、オタクであることを隠さないで済む場所なら辛くないだろうと思ったのだ。

しかし、最初に記入するプロフィールカードを見てすぐに辛さを感じた。
名前、年齢、職業、を書かなければならない所までは予想できていたが、その次の欄が「得意料理」だったのだ……
9時-22時勤務がデフォルトである私が得意な料理は、amazon直送のパックごはんにツナと醤油をかけたものだ。
(実際は「ポトフ」と書きました。うたプリの七海春歌が作っていたので、これなら男ウケするかな?と思って……)
ちなみに、男の人はその欄に年収を書かされていて可哀想だった。

そのほか、一応「アニメ好き婚活♪」らしい記入欄もたくさんあった。好きなマンガ、好きなアニメ、など……
(私は、好きなアニメ欄に「KING OF PRISM」と書いた。)

そのプロフィールカードを参考にしながら、順繰りに男の人との会話が始まる。まるで回転寿司である。
会話時間はひとり3,4分しかなく、本当に相手のことが覚えられない。
渡されたメモ用紙に、「〇〇番の人 ガルパン」「〇〇番の人 ブラジル?」等わけのわからない言葉が並んでいった。
もう少し外見等のことをメモすれば良かったと反省した。

【印象に残った会話 その1】
男の人「趣味:同人活動、って書かれていますけど、同人活動って何ですか?」
わたくし「いろいろありますけど、私は、ボーイズラブの小説を書いて印刷して、即売会で売るのが好きです」
教訓:同人が何か知らないで来ているオタクの人もいるから気を付けよう。

【印象に残った会話 その2】
男の人「ロリコンはダメですか?」
わたくし「二次元限定ならいいんじゃないですか?私も二次元の中学生の男の子、好きです!」
教訓:性癖は、然るべき場所であれば、恥じることなく開示することができる。

【印象に残った会話 その3】
男の人「KING OF PRISMって映画ですよね?何回ぐらい見ましたか?」
わたくし「引かないでくださいね、一作目と二作目あわせて50回ぐらい……」
男の人「10回?大丈夫ですよ全然引かないですよ~!^^僕も〇〇を9回見ました^^」
わたくし「あっ……ありがとうございます……」
教訓:活舌には気を付けよう。

順繰り会話が終了した後、全員でミニゲームをさせられた。
そのミニゲームに勝ってしまったところ、景品として、【全く知らないジャンルのアニメグッズ詰め合わせ】を貰って大変困った。
婚活パーティー企画会社の方が、
「私たちもオタクのことわからないし……どうすればいいんだろう」
「とりあえず時間もないし。そのへんで買ってきたアニメグッズを景品にしておこう」と思って、準備したのだろう。
婚活パーティー企画会社の方、本当にありがとうございます。こんなオタクなんかに対して、頭を使ってくれて……

ミニゲームが終わると、次はフリートーク。
の、はずだったのだが、会場の隅で「全く知らないジャンルのアニメグッズ詰め合わせ譲渡会」が行われ始めた。
私以外にもミニゲームに勝ってしまった女性がおり、彼女も私と同様に、全く知らないジャンルのアニメグッズ詰め合わせを受け取って困っていたのだ。
彼女がテーブルの上に広げたグッズを見ると、なんとそこには、KING OF PRISMの、一条シンくんのラバストが。
私は思わず「あっ!!!!!!シンくん!!!!!」と叫んでしまった。

知らない人だらけの婚活パーティーで偶然出会えたシンくん。彼はこの婚活パーティーに参加した男性の誰よりも、強烈な安心感を放っていた。さすがシンくん、プリズム天使、母胎アイドル……
(一条シンくんについて、詳しくは、「KING OF PRISM」をご覧ください。)
(公式HPはこちら https://www.kinpri.com/ )
女性は「よかった~、このアニメ知ってる人がいた!これもらってください」とシンくんを手渡してくれた。
こうして私はシンくんのママになり、婚活パーティーが終わった。

帰りに、係の人から封筒を渡された。何人かの人が、私に連絡先を教えてくれたそう。
中には、私へのコメントや連絡先が書かれた小さい紙が、何枚か入っていた。
その中の一枚には、

〇〇〇〇(これはLINEのIDです)

と書かれていた。
私が婚活パーティー中、「Twitterが大好きです!」と言ったばかりに、Twitterで検索しないようにわざわざ、「これはLINEのIDです」と書いてくれたのだろうか。
優しいけれど、その優しさが、自分のTwitter廃人っぷりを実感させて、なんだか寂しい。

こうして28歳独身女性は、背伸びして婚活パーティーに参加してみたものの、現実の男性のよさがあまりわからないまま家路についたのである。

婚活パーティーに行って、ラバストを譲渡されて帰ってきた話、終。