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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(96)

前話

 とりあえず、安静第一と、ベッドの住人になって数日。最初はまた現れたらと、怯えていたけれど、そのうち退屈になってきた。部屋にはとっかえ引っ変え誰かがいた。

「これじや。安静にならないじゃないの。私も外へ行きたいわ」

 クルトに訴えても一週間はベッドに貼り付けられていた。

「だめだよ。流産しかけたんだ。安静には安静を重ねないと」

「じゃぁ、いつこの宿からでるの? また来るかもしれないのに」

 その言葉にヴィルヘルムが口をはさむ。

「帝都以外には外へ出られないようにしてあるから大丈夫」

「本人以外なら?」

 その言葉にクルトもヴィルヘルムも顔を見合わせる。失念してたみたいね。もう。

「次の宿へ行くか、エミーリエだけを帰すかだな」

「ちょっと! 今さら除け者なんてずるいわ。私が預かったのよ」

「俺と一緒にね」

「クルト!」

 鬼の形相になりつつある私を見てクルトが肩を落とす。

「じゃじゃ馬姫は引っ込むつもりがないようだね」

「当り前よ!」

「あ、姉上。興奮しないで。血圧が上がる」

 しかたないな、とクルトが顎に手をかけて考える。

「明日、発つか。エミーリエは俺のお姫様抱っこで移動。ベッドの住人でろくに歩けないからね」

「ま、まぁ、いいけど。除け者は嫌よ」

 妊娠で感情の起伏が激しくなっているのか。私は泣きそうになりながら言う。

「エミーリア。泣かなくても除け者にはしないから。もともと君から端を発した出来事だからね。それに付き合うのが俺たちなんだから、逆の立場なんだよ。神様みたいにでーんと座ってて」

「神様じゃないもん」

 まるで子供になったみたいに言う私にクルトもヴィルヘルムも顔を見合わせる。

「クレメンス様からパパ研修受けておけばよかった」

「僕も結婚するときはうけとこーっと」

「エミーリエ様。カフェイン抜きのアールグレイがありました。お飲みになりますか?」

 そこへナイスタイミングのフリーデの登場にほっとする男二人。

「何がフリーデ様様よ」

 クルトとヴィルヘルムの思考が流れてきた。この話は終わりにしたいらしい。

「?」

 フリーデには聞こえないらしい。

「いいの。アールグレイちょうだい。飲みたくてしかたなかったの。カフェインレスってどいう意味なの?」

「紅茶やコーヒーには妊婦にはよくないカフェインが入ってるんだ。子供にもよくないね。それを抜いたものがカフェインレス。妊婦さんも紅茶やコーヒーを楽しみたいからこんな商品が生まれたんだ。そうだね。帰ったら、姫の服やおもちゃを用意しなきゃ」

 最初はまじめに説明していたクルトだけど、そのうち夢想がまた復活する。

「まだ女の子ってわからないわよ。ほんの初期だもの。我慢強いクルト似の王子かもよ?」

 ホットのアールグレイを飲みながら言う。ホットもなかなか乙ね。

「じゃ、双子ならいいんだ! 僕が祈っててあげる。きっと細胞とか二つあって男との子女の子が生まれるよ。そんな気がする」

 ヴィルヘルムが明るく言う。

「細胞?」

 またとんちんかんな言葉に私の目は点になる。

「それはだね……」

「それはね……」

「それはですね……」

 三者三様口を開き始める。

「いちいち説明に争わないで。クルト。旦那の権限で説明をお願いするわ」

「ちぇ。フリーデ新婚家庭は放り出すよ。姉上。遺跡に行ってくる。フリーデおいで」

「え。きゃっ」

 フリーデが強引にヴィルヘルムに連れていかれる。仕事時間ー、というフリーデの声が聞こえて、私とクルトは笑いあった。フリーデもなかなかヴィルヘルムには弱いのね。

 初々しい恋人たちを見て私たちの心は和んだのだった。


あとがき
また睡り病が……。眠くて仕方ないです。のでスマホで更新。また寝ます。おやすみなさい〜。

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