見出し画像

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(72)

前話

  式の後、親族だけで食事をとり、一家団欒の時間を過ごした。とても穏やかで平和な家族の時間だった。過去も未来もない。現在ある形がそこにあった。私はもう過去に眠ってきた姫ではなくなっていた。この世界に、今、ここに生きている人間としていられた。
「そうだよ。俺たちは今、生きてるんだよ」
 クルトが肩を引き寄せながら言う。
「お母様に今日を見せたかったわ」
 ホームシックが顔を出す。
「大丈夫。代わりにカロリーネ姉上がみてたから」
 そう。カロリーネお姉様はお母様の生まれ変わり。記憶がなくても見たことになる。お父様もいればよかったのに。
「エミーリエ。これからは俺たちが親になるんだよ。ホームシックは封印」
「クルト……。そうね。ホームシックは封印ね」
 涙でにじむ笑顔でそういうとクルトはそっと額に口づける。
「つらいことかもしれないけれど、俺たちは今、自分の子供の命だけでなく、この国の民の命を背負ったんだよ。責任があるんだ」
 もう、王として意識を持っているクルトは力強かった。優しいだけでないクルト。新しいクルトの表情を一気に好きになった。そんなことを考えているとクルトが顔を真っ赤にして顔をそむけた。
「クルト?」
「そう。正直に言われると照れる」
「あ。また流れたのね」
 多少は止めることもできたけれど、今、私の心は全開でクルトに流れっぱなしだった。
「兄上。姉上。カードゲームをしようよ」
「カードゲーム?!」
 私の眉があがる。私の生きていた世界でカードゲームというとかけ事だった。こんな幼いヴィルヘルムがカードゲームだなんて。
「姉上。ただのトランプゲームです。かけ事ではありません。ま。兄上をかけてもいいですけど」
「それはやめて~」
 私が情けない声を上げるとあちこちから笑いが起こった。
「エミーリエは本当にクルトが好きなのですね」
 お母様がにっこり笑って言う。
「もちろんです。一目ぼれではないですが、いつの間にかこんなに大好きになっていました」
「エミーリエ。せめて一目ぼれって言ってよ。俺は一目ぼれなのに」
「眠っていた時のことまで責任持てません。さ。カードゲームしましょ。私トランプゲーム強いのよ。クルトとフリーデをかけましょうかね」
 げ、とヴィルヘルムのお下品な声が聞こえてまた笑いが巻き起こったのだった。

 夕食をまた親族だけで食べて、その後、ゆったりと過ごした後、私はクルトと王太子宮殿に戻った。これからはここが王宮になるらしい。私の宮殿の隣の方が何事もやりやすいようで、王座の椅子も引っ越してくるらしかった。
 少しは緊張していたのかあくびをかみ殺しているとクルトがやってきて箱をプレゼントされる。
「何?」
「母上から差し入れ。新しい寝間着だって。着替えてくるといいよ。俺はキアラにプレゼントがあるから用意してくる」
「キアラに?」
「うん」
 優しいほほえみを浮かべるとそのまま出ていく。私の方は婚礼準備であつらえた一着の寝間着が箱に納められていた。ああ、婚礼は婚礼よね。少し緊張する。いつも眠っているベッドに腰かけるとキアラが昇ってきた。
「キアラ。今日も一緒に寝ましょうね」
 すり寄ってくるキアラの喉をなでる。
「お待たせ。はい。キアラ。キアラのベッドだよ」
 そう言ってベッドわきの床に置く。
「まぁ。かわいい。お姫様のベッドみたい」
 リボンとフリルが付いたかわいらしいキアラのベッドに思わず声を出す。キアラはわかっているのか、すぐにそこに寝そべって眠り始めた。
「寝つきがいいこと」
 キアラを見つめていると、はたと気づく。今夜は間にキアラがいない。一気に緊張する。するとクルトの声がかかった。
「今夜は何もないよ。いつも通り、手を握って眠るだけ。この腕の中に君を抱くのは本当の婚礼の夜からだよ」
「いいの? それで」
「ああ。エミーリエも今日は疲れただろう。ゆっくり眠ろう」
 そう言ってクルトは横になると手を差し出す。おずおずと手を伸ばす。つながれた手からはクルトのぬくもりが伝わってきた。
「クルト愛しているわ。こんなにも大事にしてもらえるなんて。こんなおばあちゃんに……」
「エミーリエ。言ったろう? 俺たちは今、生きているんだ。もう過去は見ないで。あんまりホームシックにかかると抱きしめちゃうよ?」
 茶目っ気たっぷりにクルトが言う。それでもいいのに。思いかけてこの言葉を飲み込む。流れないようにした。
「クルトが紳士なうちに寝ちゃうわ。優しい私の王様、おやすみなさい」
 頬にキスしたかったけれど、それも助長するようで私は手をぎゅっと握るだけにして目を閉じた。クルトのキスが額に落ちる。私はそれを感じるとそのまま眠りに落ちていった。


あとがき
ああ、ラスボスが片付かない。もう三話も書いているのに。次で決定的に片付くはず。そのあとはカロリーネお姉様の愉快な新婚旅行~。って出番がほぼないけれど。久しぶりに昨日は寝れなかったので二話も書きました。夜中に。書いてすっきりしてやっと寝れたという。そして今朝から体調悪しで欠勤。時折居眠りながらパソコンに向かう。それでもラスボスは片付かない。プレイリストに入れるとアルバム順にならない曲に頭を悩ませながらもま、いいかと、エコーポップに流して聞いてます。スマホから飛ばせるのでま、いいです。でもUQに下げたはいいけれど、Xperiaあるの? auに挙げてからまた買いなおし? 来年で機器代金は終わるけれど。同じ機種でないとアプリが動かない。さて、次は星降りですかね。見出し記事も作ったし。でも、また睡魔が。風邪薬を飲んだので眠いんです。朝起きたら鼻の調子が悪くてもしかして昨日の頭痛は風邪? 他のところも調子悪く、目覚めはすっきりなのに嘔気やらいろいろ襲う。朝はおかゆでした。薬飲んだらましになったのでかかり始めだったのかもしれません。オーディブルも入りなおそうかなぁ。でも、あまり聞きたい話はない。ホームズの話を聞くぐらい。そして毒されて探偵とお嬢さんシリーズをすすめるんだわ。これは手帳アカとWordpressにて公開中。そしてWordpressは前バージョンのままなので消えた宝石事件が残っているという。これも消さなきゃ。と、だれも来ないのでWordpressが後手後手に回っているという。更新作業が面倒。自動でならんかな。と、長々入らぬ話を。ここまで読んでくださってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?