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気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました。

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昔に書いていた1話千字程度のファンタジー恋愛小説の再編集版から最新話を載せるマガジンです。当分、再編集版が載ります。159話まで行っても終わらないので困ってます。姫と王太子の婚礼… もっと読む
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#再編集版

【過去掲載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (17)再編集版

これまでのお話 前話  お姉様の婚礼の日が終わってから、お姉様は以前の出仕時間から一刻遅れてくる。お兄様も一緒の時が多いけれど、最近、仕事量が多いのか、お姉様を置いて先にカシワの宮に来ることが増えてきたらしい。その時のお兄様はとても機嫌が悪くて同じ宮で仕事をしているウルガーは困っているらしい。キンモクセイの宮で散々愚痴られる。そのたびにお姉様は顔を赤くしたり青くしたり。私よりも面白い百面相を披露してくれる。  私は、婚礼が遅れて準備の余裕も出来てよくウルガーとヘレーネを連

【過去掲載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (15)再編集版

お姉様の婚礼準備が終わった。あとは良き日を判断して婚礼の日を迎えるだけだ。私の場合は、城下町を走る車、というか馬車というか、わけのわからない融合物体に乗ってパレードがあるらしく、その設計で宮殿の技術士達はてんやわんやの大騒ぎ。その間にも、ドレスやら日常に着る服やら夜着やらなんやら、採寸されて大いに疲れる。はては履く靴の材質まで決る。アクセサリーを見るときは心躍ったけれど、それも国の人の税金でまかなわれていると思うと複雑だ。私の物のようで、私の物ではない。お母様は気にしない方

【再掲載連載小説】気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (13)再編集版

前話  王妃様は言いよどんでいたけれど、ついに口を開いた。 「私の一族は物語師と言って様々な物語を紡いで世界を動かす影の一族だったの。でも、その強大な力を恐れた人々は私の一族を抹殺した。唯一生き残った私は、この国の姫として養子で育った。そしてあなた達のお父様に嫁いだの。この国にはまだ物語師の影があるわ。誰かはわからないけれど、ゼルマ姫が書いた物語と、この世界の物語を結んだ人がいるわ。この世界のどこかに。そしてウルガーは闇を背負い、そしてゼルマ姫にであった。ゼルマ姫の書いた物

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (6)再編集版

前話  「別々だったらさー。あの王子、君を襲いに来るよ。確実に。もう側室何人かいるみたいだから、君の嫌いな側室になっちゃうよ? でもって、王太子妃婚約者の姫君が寝取られたら戦争もんだし。ここは清く正しく美しく帰国するために婚礼をひかえている男女なのでベッドは別々にってお願いしてこのような状況なわけ。少しは苦労を認めてよ」  む~、と言わんばかりにすねる。それが妙に可愛くてもっとすねさせたくなる。って、私、異常? 自分もツンデレなのに相手のツンデレぶりが可愛いなんて。きゃー。

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説: 気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (5)再編集版

前話   その日、私はウルガーの急襲を受けた。 「ゼルマ。産まれたよ! はい。女の子の子犬!」 「ん? ぎゃー。何しに来てるのっ。まだ夜着のままなのにっ」  ごん、と鉄拳制裁を出す。 「落ちるだろう? ほら。この子だよ。名前つけてあげて」 「って。産まれたばかりの子連れてきたの?」  私は呆れて物も言えない。 「そうだけど?」 「お馬鹿ね。お母さんのミルクを飲んで離乳食が始まってからが飼うときよ。お母さんから引き離したら可哀想じゃないの。お腹も空いてみゃーみゃー言ってるじゃ

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫になっていました。(4)再編集版

前話 「姫様!」  アーダの声ではっと私は目を覚ました。 「うわっ」  浴槽からお湯があふれていた。ある程度入れればお湯を止めようとしている内に寝てしまった。今や、お湯は床にまであふれて私はずぶぬれだった。 「とにかく、一度、お部屋に」 「あ・・アーダ? 部屋が濡れるわ」 「だったら、このままさっさとお風呂に入ってください。片付けと服は置いておきますからっ」  言われるままにお風呂に入る。その前段階でアーダに服を脱がされた。い、一応、年頃の乙女なんだけど・・・。そう言うと却

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (2)再編集版

前話  私は父の眠っている寝台の横に椅子を持ってきて見守る。お願い、また私の前に戻ってきて、と祈りながら。それにしても、と思考が移動する。誰が、父に毒を盛ったのだろうか。父は良心的な公爵で、王の信頼も厚かった。領民も慕っていた。なんら恨みを買う覚えはない。何か、父は隠しているのだろうか?  確かに今年は不作だった。それで苦心していたのは知っている。それが、何か? 「・・・め。・・・姫っ」 「え・・・。ああ。ウルガー王子」  いつの間にかウルガーが部屋にいた。 「一晩付き添う

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(1)再編集版

 ふいに私は気づいた。ここ、私が書いた小説と同じ世界だ。どーいうこと? 書いた世界に入っちゃったの?? あ。あの方は! 遠くの方で王子を見かけた。この人が私の考えた姫君の恋人。このまま行けば、踊りを申し込まれるはず。そしてお互い一目惚れして結婚するのよっ。  私は、興奮気味になって王子様を見つめていた。  ところが、ところがよっ。なんと王子様は敵国の姫君に踊りを申し込んでいた。  おーい。私はー?  背伸びして一生懸命アピールしていると誰かが肩をつつく。 「俺と踊らない?」