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気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました。

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昔に書いていた1話千字程度のファンタジー恋愛小説の再編集版から最新話を載せるマガジンです。当分、再編集版が載ります。159話まで行っても終わらないので困ってます。姫と王太子の婚礼…
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【長編連載小説】ロマンス・ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました~ごくごく簡単なあらすじ~

あるとき、瀬莉はゼルマという自分の書いた小説の姫君になり、舞踏会にいた。お目当ての王子は隣国の姫とおどってばかり。主張するが見向きもされない。つんつんと肩を叩く人間を見ればへたれの王子だった。異国の王子の上手に踊れば王子の目に適うかもしれないよ、というささやきに乗り、ダンスを踊る。何度踊っても王子はなびかない。そんな中、父親が毒殺されかかった。命は異国の王子、ウルガー王太子の適切な処置で助かった。 次の朝、仕事を引き継ごうとゼルマが書斎に行くと、借金の証文ばかりでてくる。途

【長編連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(88)

前話  気づけば、街中で食べ歩きをしていた。あれもこれも私にとっては珍しく、そんな私にもっとこの国のことを知ってほしいとおごってもらっていた。だれも私とウルガーが姫と王太子なんて気づく人はいなかった。そんな中、アクセサリーを売っている露店を見つけた。キラキラとどれも輝いている。 「気になるかい?」  後ろを見るとウルガーも覗き込んでいた。 「よぉ。兄ちゃん。彼女にアクセサリー買ってやんな。さっきから目をキラキラさせて見てるぜ」 「そうだね。これなんか、ゼルマの髪に映えるんじ

【長編連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(87)

前話  クッキーは子供たちの胃の中へあっという間に消えた。余りの速さにびっくりして見ていると、小さな子が服の裾を引っ張っていた。 「どうしたの? おいしくなかったの?」 「ううん。おいしかったから、またつくって」 「え」  リクエストが来るとは思いもしなかった。 「いいじゃないか。料理の腕も上がるよ」  ウルガーが頭に花を咲き乱れさせながら言う。 「ウルガー。自分の分を食べてから言って」 「俺のは一人でちびちび味わうんだよ」 「おにいちゃんももらったのー?」  じーっと子供

【長編連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(86)

前話  あれから、数日後。朝ご飯を食べ終わって少し二人きりで休憩しているとウルガーは唐突に言った。 「今日は執務はいいよ。衛生法や古物商の資格の法律的なところだからゼルマはクッキーでも焼いていて。お昼からアルポおじいさんのところへ行こう」 「いいの? それじゃ、フローラお姉さまが出仕したら台所を借りて大量のクッキーを焼いてるわ。ウルガーには特別ハート型にしてね」  途端、ウルガーの頭にお花が咲き乱れた。この後の執務大丈夫かしら。 「大丈夫だよ。俺のゼルマ。仕事とお花は分けて

【長編連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(85)

前話  子供たちがあらかた帰って、そろそろお暇しようとすると、ウルガーは新しい医学の本を片手にアルポおじいさんと熱心に話し込んでいた。そこで近くの絵本を眺めていた。一冊一冊手に取ってみる。そして無意識に手に取った本の重さにびっくりしてみると、私の持っている本とよく似た本だった。中をパラパラめくる。そこには私とウルガーの体験してきた出来事が書かれていた。 「これ……。いったい誰が」  ただ、私の本と違う点は未来が書き込まれていない。過去の出来事が実に客観的に書かれていた。 「

【長編小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(84)

前話 「まぁ。本当に綺麗になったのね」  下町近くに来ると、以前とは見違えるようにきれいになっていた。落書きは消され、ゴミは片付き、近くでは子どもたちが輪になって遊んでいる。 「この先もそうだよ。清掃の仕事を作ればその仕事で賃金を貰う人が出る。ゼルマが教えてくれて俺も気づいた。これも経済の回し方だよ。さぁ、アルポおじいさんの本屋まであと一息だ。アルミ、ヘレーネ追いかけっこだ」  そう言ってウルガーが走り出す。私はヘレーネに引っ張られながらアルポおじいさんの本屋へ向かった。

【長編小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(83)

前話   こうして、ウルガーとの共同生活、もとい、同棲生活が始まった。でも、寝所は別々。周りは一緒でもいいんじゃないの? と言ったけれど、けじめはけじめ。あえて二人とも別々を選んだ。そのほかはいつもと同じ。食事も何もかも今までも一緒だったし、執務の宮もカシワの宮に常駐になっただけ。二人きりであまーい朝食なんてない。いつも、人が山ほど押しかけてきて大テーブルでお食事。その後は暇な時間だけど、春祭りの施策で、今は取り込み中。お兄様方に交じって私も協議に参加中。  そう言えば、こ

【長編小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(82)

前話 「どうしたの? ゼルマ。目をそんなにキラキラさせて」  フローラお姉様がアイリたちと抱っこしながら言う。 「キラキラしてます?」 「ええ。珍しく」 「プロポーズされたの!」  そう言って左手の指輪を見せる。 「この指輪、ウルガーの手作りなんです。字も刻んで石もブローチから取ったんですって。すごくうれしくて」 「まぁ。やっとそうなのね」 「やっとって……」  私とウルガーの声がハモる。 「ウルガー」  お母様の雷が落ちる。 「ダーウィットから強引に奪って華の宮に閉じ込め

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(81)

前話 「泣き笑いの顔より、そっちのけらけら笑いがいいよ。同棲ね。初めて聞く言葉だけど、それなら式は正式に挙げられるね。ゼルマの知恵には参るな。俺よりも先に行った方法を考えつくんだから」  そう言ってぎゅーっと私を抱きしめる。 「もう。離さないで」 「離さない。俺のゼルマ。俺の妃は後にも先にもゼルマだけ。ダーウィット兄上から奪ってまで欲しかったんだから」 「そうね。そうだったわ。ウルガーの強い気持ちがなかったら私は今、ここにいないんだもの。お母様に報告しましょう。同棲の件も。

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(80)

前話 「ゼルマ! パレードの道順を決めに行こう!」 「え? 昨日の立案は?」 「もう終わったよ。あとは兄上が判を押したら終わり」 「議会に通さないの?」 「うちのポケットマネーだからね。関係ないよ。ほら。早く」  ウルガーが引っ張るけれど、動けない。フローラお姉様から仔細を聞いたお母様が来て桃の皮をむいてる途中だった。 「ウルガー。危ないからしばらくお待ちなさい」  お母様が言ってウルガーが椅子を持ってきて皮をむく私をじーっと見つめる。 「う、ウルガー。どうしたの? なんだ

【訳あり姫あらすじ後半】番号調整(79-02)

あらすじ後半 なんだかんだと命を狙われるようになったゼルマ。何よりもゼルマという姫が物語師という無意識から人の人生の物語を紡ぐ一族の長の候補であると言うことからあちこちから狙われるようになった。 また、王太子妃の地位を狙う人間もどかどかでる。 ゼルマは疲れてしまっていた。意識は何よりもゼルマの意識はあんまりなく、瀬里の意識が勝っていた。 そんなゼルマを見かねた、王妃が木の宮に休憩に行くと行ってゼルマを筆頭とした関係者を集めた。 ウルガーとデート三昧のはずが、物語師に命をまた狙

【訳あり姫君前半あらすじ】番号調整(79)

訳あり姫これまでのあらすじ 前半 ゼルマ伯爵令嬢は舞踏会で王子様にダンスを申し込まれることを夢見てその場にいた。だが、王子様は隣国の姫に夢中、必死にアピールするも隣にいた異国の王太子ウルガーにナンパされる。自分の踊りを見せられるとあってしかたなく一緒に踊り始める。 そんな中毒を盛られたと大騒ぎになる。盛られたのは自分の父だった。その急場にさっきまでヘラヘラしていた王太子が毒を中和する。なんでも医術の心得があるという。 舞踏会から帰って、父を療養させる。 そして、ゼルマが伯爵

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気がついたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(78)

 ふっと目を覚ますと夜中だった。足下を照らす常夜灯があるだけ。ふと、手に重みを感じてみれば、ウルガーが手を握って眠っていた。視線を動かすと書類があった。まさか、ウルガー、夜中まで仕事してここにきて守ってくれてるなんて。お姉様かお兄様から聞いたのね。申し訳なくてまた涙がでる。泣いちゃダメ。口をぎゅっとかみしめる。 「泣いていいんだよ」 「ウルガー」 「明日。虹の清水をもらいに行こう。寂しくてしょげていた、と聞いた。やっぱり、結婚しよう。こんなゼルマほっておけない。寝室を共にしな

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(77)

前話  大勢の夕餉が終わって、キンモクセイの宮に静寂が漂う。なんとなく、外を見てももう真っ暗で空に星が輝いている。フローラお姉様がアーダと一緒に世話をしてくれているけれど、今はちびっこ双子姫のお風呂。きゃっきゃとはしゃぐ声が聞こえるだけ。ウルガーも仕事で早々に上がってしまった。ふと、寂しい、という感情にとらわれる。 「ゼルマ姫様」  アーダの心配そうな声に振り返って笑顔になる。 「大丈夫。ちょっとうるさすぎたのよ。頭が痛いの」  そう言うと、アーダは急いで奥に行く。また頭痛