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気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました。

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昔に書いていた1話千字程度のファンタジー恋愛小説の再編集版から最新話を載せるマガジンです。当分、再編集版が載ります。159話まで行っても終わらないので困ってます。姫と王太子の婚礼… もっと読む
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記事一覧

【連載小説、あとがきつき】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(62)

前話  菜園から帰り、ちびっ子達とどろんこになって、また、キンモクセイの宮に帰ってきた。アーダは私を見るなり、お風呂へ! といい、タピオ達はダーウィットお兄様と戻ってきていたウルガーに捕まってどこにあるかも知らない大浴場に連れて行かれた。  さっぱりして、お風呂から上がるとアーダがバスタオルを持って待ち構えていた。 「もう。そんな泥棒を捕まえるように待ち受けていなくても……」 「ウルガー様も準備万端ですよ」 「そうなの?」  それは熱風機で髪を乾かして結ってくれるという事だ

【連載小説、あとがきつき】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(61)

前話 点滴を終わった頃にまた私は診療所にきた。あまり長居しては不審に思われると言われて出たのだ。マティアスお兄様は危ない遊びを考えついて私はその遊びに真っ赤になって怒鳴りつけそうになった。慌てて声を潜めたけれど。この三兄弟、やばいわ。それもあってとっととキンモクセイの宮に戻っていた。案の定トビアス様が遊びに来ていてタピオ達と鬼ごっこしていた。私が戻るとタピオが真っ先に来る。 「姉上! 今日も父上の菜園に行こうー」 「って。私の菜園はどーでもいいのかしら?」 「姉上の菜園を手

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(60)

前話 「大丈夫か?」  アルミが倒れた男性の側で吠えている。ヘレーネは倒れた男性の手をなめ始めた。意識が戻ってきたようだった。かすかに、何かを言っている。 「ウルガー! 今、マチルダって……」 「だな。とにかく王宮に連れて行こう。衰弱が激しい。このままではまさに永遠の別れだ」  ウルガーはアルミのリードを私に渡すと男性を担ぎ上げた。私は二匹の犬を連れてウルガーの後をついて行く。そのまま診療所に連れて行く。 「点滴をしよう。栄養失調のようだから」 「マチルダ様には……」 「し

【連載小説+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(59)+気ままに書くエッセイ「阪神ファンの心配と試験」

前話  数日してスティーナは健康を取り戻した。ウルガー一人に任せるのは大変だと、おチビさんを連れて度々会いに行った。そうすると必ずトビアス様がスティーナを泣かせてしまう。クルヴァがあかちゃんには優しくね、と言い聞かせているのを見て兄弟もいいものね、と呑気にも思っていた。やがて、スティーナはマチルダ様に引き取られて行った。  診療所はまた空っぽになった。むなしい気持ちがぽっかり空いている。そんな沈んだ気持ちの私をウルガーはヘレーネとアルミの散歩に誘ってくれた。  いつまでもう

【連載小説+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気がついたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(58)+エッセイの勉強中「私も阪神も大乱調」

前話 「ウルガー」  私は夕食の料理を持っておチビさんたちと一緒に診療所に訪れていた。 「ゼルマ! 何かあったのかいって。うわっ」 「あにうえー」  トビアス様がウルガーの足にひっついていた。 「トビアス様はウルガーお兄様好きなの? と。これお夜食。お腹空いたら食べて。タピオが作った野菜料理よ」 「タピオが? タピオ料理作れるようになったのか?」  全員で一斉に違うと言う。 「タピオが育てた野菜を料理してもらったの」 「なーんだ。タピオが料理したかと思った」  茶目っ気たっ

台本「恋文×嘘をつかない」をお借りして。改稿:【訳あり姫君スピンオフストーリー「ユメ」と言う名の姫君の物語の一番最初のストーリー】

 未曾有の流行り病のおかけで私とウルガーは初めてこの世界で離れ離れになった。もともとはこの世界にない病気で私一人が亡くなるという筋書きが私を都合よく思わない人々に操作されそうになった 。とっさに、来ていた木の宮に私たちは残り、ウルガーは医者として大神官様と都に戻った。初めて離ればなれ。一度、無意識と意識の世界に離れたことはあったけれど、私にとっては一瞬のことで、こんなに不安な夜を過ごすことはなかった。お母様は、そんなウルガーを思って不安定な私に『ユメ』という名前を与えて、忘れ

【連載小説+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気が付けば自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(57)+エッセイの勉強中:感情があっちいきこっちいき……。「収集なさい」と宿主が命令しても飛んでいく。

「愛する方の元へ戻りたくはないのですか?」  私が言うとマチルダ様は悲しげで儚げな表情をなさる。 「きっとあの人はもう忘れているわ。ただ、この子に兄妹を持たせたくて。それにトビアスが妹が欲しいとだだをこねるときが多くなってきて。お兄様がいるでしょう、と言っても一番下なのが気に入らないようで……」 「そうね、弟の時は兄になりたい者よね。兄は弟になりたがるけれど。私とウルガーはスティーナをマチルダ様に預けるつもりです。名前もマチルダ様のお好きな名前にしてあげてください。私がとっさ

台本【恋文×どっちが?】をお借りして……。【訳あり姫君ショートストーリー】「計られた!!」

「ゼルマ様、ウルガー様から手紙が来ています」  執事のエルノーが渡してくれる。 「これ?」  一緒にあの部屋の鍵が渡された。あの人間をだめにする例の物体がある部屋。ウルガーとは同棲してるとしても最近顔を合わしていなかった。さみしいと思うけれど、これも将来を見据えてのこと、とやせ我慢していた。そんなときにウルガーからこの鍵と手紙。  何なのかしら? 『寂しい時に 「寂しい」と言えるボクと 本当は寂しいのに 「寂しい」と言わないキミ どっちが寂しがりや、 なんだろうね…。』

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(56)+あとがき+エッセイの勉強中「甲子園での伝統の一戦です。でもねむい」

前話  久々に登場した特大の丸テーブルに人が群がる。子供の多い事ったら。エーヴィお姉様もご懐妊なさったよう。丸いお腹に見落としてた時間を後悔する。それをまたもや次の子をご懐妊なさったフローラ姉様が慰める。 「ごめんなさい。最近、お姉様やお兄様達をほったらかしにいしてたわ」 「私の賢い妹は忙しいからいいのよ。今日はマチルダ様もおいでになると聞いたから屋敷からお菓子を持ってきたの。アイリとクラーラもお気に入りのお菓子よ。トビアス様もお食べになるかと思って……」 「あ。マチルダ様

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(55)+あとがき+エッセイの勉強中「コイが点いれたー!! と 龍角散のどすっきり飴の危機」

前話  私とお母様は愛犬たちを運動場で遊ばせる。そこへ久しぶりにタピオとクルヴァがやってきた。 「姉上ー。今日の収穫だよ」 「まぁ。ありがとう。クルヴァ」  ずっしりと重みのある野菜を手渡される。 「しっかり実がなっているのね」 「タピオが作ったらこんなに大きくなった。どうして?」  タピオが不思議そうに聞く。 「それは、タピオがいい子だからよ。一生懸命世話をすると野菜も大きくなったり、美味しくなったりするのよ」  頭をなでてあげたいけど、あいにく両手が塞がっている。代わり

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(54)+あとがき+エッセイの勉強中「俳句再開します! と 輝さん打ってくれー」

前話 「母上。今夜はここに俺一人残ります。世話をする人間がいないと流石に生き残れません」  それじゃ、と言いかけた私とウルガーは制す。 「ゼルマと一夜明かしたとなれば、またお手つき騒動が浮かびかねない。かといってマチルダ様に来てもらっても危ない噂が立つからね。俺一人ですませるよ。赤ちゃんのことはフローラ姉上の時に嫌というほど味わって知ってるから」  ウルガー、とお母様が言う。 「恨んでますね。相当。恋人同士の時間を赤ちゃんの世話にこき使い倒したと」 「よくおわかりで。母上。

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(53)+あとがき+エッセイの勉強中「保護猫のYouTubeと阪神応援」

前話  スティーナを取り合いしていると、大神官様がやって来た。この方めったに外へ出ない方じゃなかったの? 「これはこれは可愛い女の子ですな。ウルガー様とゼルマ様のお子ですか?」 「違います!」  二人同時に言い放つ。 「冗談ですよ。拾い子とはこの子ですな」 「スティーナというの。私が名前をつけたの」 「すぐ変わるけれど」 「ウルガーは余計な事言わなくていいの!」  思いっきり足を踏んづけてやる。 「いてっ。ゼルマは暴力的だなー」 「その女性を妻にするんだけど?」  まだ、マ

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】連載小説 気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(52)+あとがき+エッセイの勉強中「阪神最下位ー(T-T)」

前話 「ゼルマ、どうしたんだい? そんなに泣きじゃくって。風邪引くよ」 「いい。馬鹿な私なんて風邪でも何でも引けばいい」  泣きながら言う。言ってることの半分もわからないと思うけれど。背中にふわり、と暖かさがやって来た。ウルガーの残り香。上着だ。 「泣いていることはいいよ。悲しいときはいつだって泣けばいいんだから。ただ、あの赤ちゃんをマチルダ様に預けるまではゼルマがお母さんになってあげて」 「私? 私が?」 「託されたのは君だよ。君があの方のお母さんの代わりだ。いいから戻る

【連載小説+エッセイの勉強中(あとがきもなし)】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(51)+エッセイの勉強中「体調不良で阪神も負けた」

前話 「お母様!」  王宮に飛び込む。先ほど、ヘレーネの散歩に行くのを見届けてからお母様は王宮に戻られていたのだった。 「王宮の外で女性が倒れていてこの赤ちゃんをまかせて……」 「亡くなったのね」 「はい」  目に涙をためて私はうなうずく。こうも母を失う幼子を見ると自分と重ねてしまう。 「ウルガー、埋葬をダーウィットかマティアスに任せて。この子の状態を診てあげなさい。仮にも医者なのだから」 「仮にも、は余計です。今すぐ、診察室へ連れて行きます。その前に保温できるおくるみはあ