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気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました。

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昔に書いていた1話千字程度のファンタジー恋愛小説の再編集版から最新話を載せるマガジンです。当分、再編集版が載ります。159話まで行っても終わらないので困ってます。姫と王太子の婚礼… もっと読む
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#異世界ファンタジー

【再載連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (19)再編集:

これまでのお話 前話 「アルポおじいさーん」  本屋の近くに行くと私は無邪気にアルポおじいさんの名前を言いながら本屋に走り込んだ。 「ゼルマ!」  暴走している私を追ってウルガーも飛び込む。小さな子達が私達を見つめていた。 「ウルガーおにいちゃん。また絵本読みに来たの?」  ませた小さな子が聞く。 「ちがうよ。ゼルマが礼儀作法の絵本を探しに来たんだ。みんなはアルポおじいさんの読み聞かせの続きをしてて。アルポじいさん。こっちは勝手にしてるから」 「そうか? ならば続けるが、

【再掲載連載小説】気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (12)再編集版

 「ふーん。そういった本がウルガーは好きなんだ」  東屋に来てから時間が経って、二人きりに慣れない私達は持ってきた本をお互い読むだけになっていた。おしゃべりする目的はなくなっていた。たまにウルガーは果物に手を伸ばすが一つの種類に絞られていた。 「ウルガーは葡萄が好きなんだ」 「ああ。それが?」 「私も葡萄が好きなの。皮ごと食べられて種のないものが」 「そんなものがあるのか?」  何気なく話しただけなのにウルガーが大きく反応した。 「この国はないの? こんなに発達してるのに」

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (11)再編集版

前話 「はぁー。美味しかった」  最初にウルガーはアーダとフローラに追い出され、お風呂に入った。よく考えれば、この宮には風呂部屋があったと思い出した。ウルガーを追い出す必要はなかったけれど、やっぱりすぐ側で待ってられるのは落ち着かない。ということで着替えついでに長風呂を味わった。薔薇の花弁をちらして豪勢なお風呂だった。服に着替えても、まだその香が残っていた。 「ゼルマー。ちゅー」  ウルガーが声をかける。私はお姉様と顔を見合わせてローズウッドのお盆を用意する。 「入ってもい

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫になっていました。(9)再編集版

前話  翌朝、ウルガーはやってきた。私が着替え終わったちょうどその頃に。そして部屋へ入るとアーダとエルノー夫婦、アルバンも、さらにはフローラも呼び集めると、座ってみんなで朝食を取ると言い出した。  アーダ達はそんな身分違いなことを、とかなんとか言っていたけれど、全員が大きめのテーブルに囲むように座って朝食になった。 「はい。ゼルマ、かけ声かけて」 「かけ声って・・・」  不意に「いただきます」、という言葉が浮かんだ。私は手を合わせて言う。 「いただきます」 「はい。みんなも

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (7)再編集版

前話  私は徹底抗戦を始めた。文字通り食事を取らないストライキを始めたのだ。  だれが、あんなヤツと結婚なんか。  喪が明けると待っている婚礼にもかかわらず、私はまだ意固地に思っていた。もう。闇の目は見たくない。苦しくなる。治してあげたいのにそれすらできない。ただ。相手の苦しむ様子を見てるだけなんて・・・。  気づいたら泣いていた。そんな私にウルガーが扉の向こうから声をかける。 「ゼルマ。それじゃ。父君の望んだことは叶わないよ」 「お父様が何を望んだというのっ!」 「父君は

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (6)再編集版

前話  「別々だったらさー。あの王子、君を襲いに来るよ。確実に。もう側室何人かいるみたいだから、君の嫌いな側室になっちゃうよ? でもって、王太子妃婚約者の姫君が寝取られたら戦争もんだし。ここは清く正しく美しく帰国するために婚礼をひかえている男女なのでベッドは別々にってお願いしてこのような状況なわけ。少しは苦労を認めてよ」  む~、と言わんばかりにすねる。それが妙に可愛くてもっとすねさせたくなる。って、私、異常? 自分もツンデレなのに相手のツンデレぶりが可愛いなんて。きゃー。

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説: 気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (5)再編集版

前話   その日、私はウルガーの急襲を受けた。 「ゼルマ。産まれたよ! はい。女の子の子犬!」 「ん? ぎゃー。何しに来てるのっ。まだ夜着のままなのにっ」  ごん、と鉄拳制裁を出す。 「落ちるだろう? ほら。この子だよ。名前つけてあげて」 「って。産まれたばかりの子連れてきたの?」  私は呆れて物も言えない。 「そうだけど?」 「お馬鹿ね。お母さんのミルクを飲んで離乳食が始まってからが飼うときよ。お母さんから引き離したら可哀想じゃないの。お腹も空いてみゃーみゃー言ってるじゃ

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫になっていました。(4)再編集版

前話 「姫様!」  アーダの声ではっと私は目を覚ました。 「うわっ」  浴槽からお湯があふれていた。ある程度入れればお湯を止めようとしている内に寝てしまった。今や、お湯は床にまであふれて私はずぶぬれだった。 「とにかく、一度、お部屋に」 「あ・・アーダ? 部屋が濡れるわ」 「だったら、このままさっさとお風呂に入ってください。片付けと服は置いておきますからっ」  言われるままにお風呂に入る。その前段階でアーダに服を脱がされた。い、一応、年頃の乙女なんだけど・・・。そう言うと却

【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました (3)再編集版

前話  私は甲板で海風に髪の毛を遊ばせていた。  ここはもう、生まれ育った国の上ではない。海の上だ。ウルガーは借金をどうやってだれに返したのかも教えなかったけれど、完済の書類を持って戻ってきた。しばらく、領地や屋敷や使用人のことでばたばたしてたけれど、私とお父様は荷物一つ持つぐらいでこの船に乗った。執事のアルバンがどうしても、というので身寄りもないアルバンだからいいだろう、と父の世話をする人間としてきてもらった。それもウルガーが賃金を払うこととなって。アルバンは断ってお金の