マガジンのカバー画像

気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました。

81
昔に書いていた1話千字程度のファンタジー恋愛小説の再編集版から最新話を載せるマガジンです。当分、再編集版が載ります。159話まで行っても終わらないので困ってます。姫と王太子の婚礼… もっと読む
運営しているクリエイター

#恋愛小説

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(71)

前話  翌日、さっそくウルガーが迎えに来て、カシワの宮へ移動しようとすると廊下をトビアスが駆けてきた。 「あねうえー。あにうえー」 「あら。トビアス元気ね〜。ま。またウルガーにくっついてるわね」  ぴとっと足元に抱きついてウルガーは動けなかった。 「ちょうどいいわ。トビアス。鬼ごっこしましょう。ウルガーが鬼よ。さあ、隠れるわよ〜」 「ゼルマ! もう。元気になればすぐそうなんだから」  ウルガーが言ってるのも無視して華の宮で鬼ごっこする。 「鬼ごっこしてる暇はないよ! 春祭り

【連載小説+エッセイの勉強】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(70)+エッセイの勉強「猫を処方致します2」聞ききった!伏線が山ほど!!!!

前話  力なく首を振りながら、私はつぶやくように言う。 「ちがうの。今までにあった人の死があまりにもつらすぎて。ひとりでどうしたらいいかわからなくて。笑いたいのに笑えなくて。ウルガーのそばにずっといたかった。この腕の中に閉じ込めてずっと抱きしめていてほしいの。あの子たちがいいなくなったことがまだ信じられなくて……」 「あの子たちって。アルポおじいさんの店に出入りしていた子たちかい?」 「ええ。ティナが亡くなったと聞いて。私にすごくなついていた可愛い子なの。それなのにもういな

【連載小説後書き付き】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(69)

前話  八百屋のおじさんおばさん、アルポおじいさんの生存確認をしてから私はなんのやる気も出ず、ただ、キンモクセイの宮でぼーっと外を眺めて暮らしていた。ウルガーはワクチン施行策で宰相のダーウィットお兄様達と毎日協議してこちらには食事の時しか来なかった。そのウルガーが顔を輝かせて昼の真っただ中やってきた。 「ゼルマ! やっと政策が通ったよ。ごめん。放りっぱなしだったね。アルミたちと遊ばない?」 「そうねぇ……」  私はやる気のない声で頬杖をつきながら中庭を眺めていた。 「ゼルマ

【連載小説】気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(68)+【エッセイの勉強】「週三でばてる」

前話 「おにいちゃんの葡萄を上げるから桃はお姉ちゃんに返そう」  ウルガーが子供たち手にある桃を取り上げようとするけれどいたいけな瞳の攻撃に困って固まる。見かねたアルポおじいさんが仲裁にでる。 「これこれ。ケーキを食べたじゃろ。ウルガー王子の葡萄はもらえても桃はゼルマ姫の大事な人へのプレゼントじゃ。みんなも誕生日のプレゼントを誰かにあげられたらいやじゃないか?」 「いやー」 「やー」  ウルガーがこの仲裁にそく食いつく。 「じゃ。お兄ちゃんの葡萄を一緒に水洗いしてくれる子だ

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(66)+裏話

前話  ヨハネスお父様は、故国に帰れなくなったマチルダ様を保護すべきか離婚すべきか悩んでいらしたみたい。離婚用紙はすでに用意されていた。マチルダ様は本当の事なのかしら、と信じられなさそうに用紙を見つめていたけれど、意を決してサインなされた。それからダーウィット様から今度は婚姻届を出されて私達も度肝を抜かれた。 「いつのまにそんな準備を」 「宰相たるものあらゆる事を想定せねばなるまいからな。お前達の様子を見てしっかり用意していた」 「恐れ入ります」  マチルダ様が頭を下げる。

【連載小説+あとがきと進捗状況】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(64)+あとがきと論文の進捗状況

前話  私達は愛犬の散歩を終えてタピオ達と遊ばせるといつもあの人間をダメにするクッションの部屋に入り浸ってああだこうだと、マチルダ様の事を考えていた。そこへ、いらぬ邪魔、いえ、救い主が現れた。 「最近、宮でいちゃつかないと思えばここか」 「マティアスお兄様!」  その後ろにはダーウィットお兄様もいた。 「いい、逢い引き場所を見つけたようだな。恋に狂っている二人には」 「その肩書きを貼らないでください。で、お二人には何か考えが?」 「本人を連れてきた」 「マチルダ様を?!」

【連載小説+あとがき+論文】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(63)+独学論文「不可逆的幹細胞iPS細胞は宗教と対話できるのか 序」

前話 「ウルガー」  私は名を呼んで彼の肩に頭を預ける。 「わかっている。辛いな。俺も辛い。救えぬ命に出会うといつもそうだ。ゼルマは一層辛いな。トビアスを可愛がっていたから」  それを聞くとどっと涙があふれてきた、会えぬまま引き裂かれた父と息子。そして夫と妻。その組み合わせが悲しかった。 「大丈夫。マチルダ様はもう悲しみから抜け出されている。だから、余計に言わない方がいいんだ」 「もしかして・・・新しい、恋?」 「そう。あの男には辛いだろうがな」 「そう。そうなの。ってウル

【連載小説、あとがきつき】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(62)

前話  菜園から帰り、ちびっ子達とどろんこになって、また、キンモクセイの宮に帰ってきた。アーダは私を見るなり、お風呂へ! といい、タピオ達はダーウィットお兄様と戻ってきていたウルガーに捕まってどこにあるかも知らない大浴場に連れて行かれた。  さっぱりして、お風呂から上がるとアーダがバスタオルを持って待ち構えていた。 「もう。そんな泥棒を捕まえるように待ち受けていなくても……」 「ウルガー様も準備万端ですよ」 「そうなの?」  それは熱風機で髪を乾かして結ってくれるという事だ

【連載小説、あとがきつき】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(61)

前話 点滴を終わった頃にまた私は診療所にきた。あまり長居しては不審に思われると言われて出たのだ。マティアスお兄様は危ない遊びを考えついて私はその遊びに真っ赤になって怒鳴りつけそうになった。慌てて声を潜めたけれど。この三兄弟、やばいわ。それもあってとっととキンモクセイの宮に戻っていた。案の定トビアス様が遊びに来ていてタピオ達と鬼ごっこしていた。私が戻るとタピオが真っ先に来る。 「姉上! 今日も父上の菜園に行こうー」 「って。私の菜園はどーでもいいのかしら?」 「姉上の菜園を手

【連載小説+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(59)+気ままに書くエッセイ「阪神ファンの心配と試験」

前話  数日してスティーナは健康を取り戻した。ウルガー一人に任せるのは大変だと、おチビさんを連れて度々会いに行った。そうすると必ずトビアス様がスティーナを泣かせてしまう。クルヴァがあかちゃんには優しくね、と言い聞かせているのを見て兄弟もいいものね、と呑気にも思っていた。やがて、スティーナはマチルダ様に引き取られて行った。  診療所はまた空っぽになった。むなしい気持ちがぽっかり空いている。そんな沈んだ気持ちの私をウルガーはヘレーネとアルミの散歩に誘ってくれた。  いつまでもう

【連載小説+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気がついたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(58)+エッセイの勉強中「私も阪神も大乱調」

前話 「ウルガー」  私は夕食の料理を持っておチビさんたちと一緒に診療所に訪れていた。 「ゼルマ! 何かあったのかいって。うわっ」 「あにうえー」  トビアス様がウルガーの足にひっついていた。 「トビアス様はウルガーお兄様好きなの? と。これお夜食。お腹空いたら食べて。タピオが作った野菜料理よ」 「タピオが? タピオ料理作れるようになったのか?」  全員で一斉に違うと言う。 「タピオが育てた野菜を料理してもらったの」 「なーんだ。タピオが料理したかと思った」  茶目っ気たっ

【連載小説+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気が付けば自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(57)+エッセイの勉強中:感情があっちいきこっちいき……。「収集なさい」と宿主が命令しても飛んでいく。

「愛する方の元へ戻りたくはないのですか?」  私が言うとマチルダ様は悲しげで儚げな表情をなさる。 「きっとあの人はもう忘れているわ。ただ、この子に兄妹を持たせたくて。それにトビアスが妹が欲しいとだだをこねるときが多くなってきて。お兄様がいるでしょう、と言っても一番下なのが気に入らないようで……」 「そうね、弟の時は兄になりたい者よね。兄は弟になりたがるけれど。私とウルガーはスティーナをマチルダ様に預けるつもりです。名前もマチルダ様のお好きな名前にしてあげてください。私がとっさ

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(56)+あとがき+エッセイの勉強中「甲子園での伝統の一戦です。でもねむい」

前話  久々に登場した特大の丸テーブルに人が群がる。子供の多い事ったら。エーヴィお姉様もご懐妊なさったよう。丸いお腹に見落としてた時間を後悔する。それをまたもや次の子をご懐妊なさったフローラ姉様が慰める。 「ごめんなさい。最近、お姉様やお兄様達をほったらかしにいしてたわ」 「私の賢い妹は忙しいからいいのよ。今日はマチルダ様もおいでになると聞いたから屋敷からお菓子を持ってきたの。アイリとクラーラもお気に入りのお菓子よ。トビアス様もお食べになるかと思って……」 「あ。マチルダ様

【連載小説+あとがき+エッセイの勉強中】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(55)+あとがき+エッセイの勉強中「コイが点いれたー!! と 龍角散のどすっきり飴の危機」

前話  私とお母様は愛犬たちを運動場で遊ばせる。そこへ久しぶりにタピオとクルヴァがやってきた。 「姉上ー。今日の収穫だよ」 「まぁ。ありがとう。クルヴァ」  ずっしりと重みのある野菜を手渡される。 「しっかり実がなっているのね」 「タピオが作ったらこんなに大きくなった。どうして?」  タピオが不思議そうに聞く。 「それは、タピオがいい子だからよ。一生懸命世話をすると野菜も大きくなったり、美味しくなったりするのよ」  頭をなでてあげたいけど、あいにく両手が塞がっている。代わり