第百九十六回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「アリス九號. TORAVIA」interview(前編)

今回は、前回の「アリス九號. MUSIC VIDEO」考察&分析に続いて、アリス九號.の変遷を監督目線で考察&分析を行ってもらったインタビューを、前後編に分けてお届けする。

ーー今回虎さんには、アリス九號.のバンドとしての活動、変遷を振り返ってもらいながら、それを監督目線で考察、分析してもらいたいと思います。早速ですが、アリス九號.を結成する際、虎さんは他からもお誘いを受けていたんですか。

虎:いや、全然誘われてないですよ。そもそも僕は前のバンドを将くんと一緒にやっていて、その流れのまま将くんとアリスをやったんで。誘われるも何もなく、っていう感じですよ。

ーー前のバンドを解散して、次にやるバンドについて、虎さんの中に何かイメージするものはあったんでしょうか。

虎:前のバンドは俺がメンバーを集めたんですけど、メンバー仲はそんなにいい感じではなかったんですよね。しょうがなかったんですよ。メンバーの中で将くんだけ地元が離れてたんで、リハーサルとかに来るのもかなり大変で。他の3人がいつも先に集まって練習してたから、気がついたら将くんだけちょっとバンドから置いてけぼりみたいな感じになっちゃったんです。だから「次にバンドやるんだったら、今度は逆に将くんがいい感じにやれるメンバーを決めた方がいいんじゃないの」みたいなのはありましたね。

ーーそうだったんですね。

虎:はい。だからアリス結成については将くんに任せっきりにしてたんです。俺のスタンスはそんな感じでした。それで、まずNaoと沙我がコンビでいたから、「その二人を貰えばいいんじゃない」っていう話をしてて。その時、最初はNaoと沙我の方から「ギター、こいつどう?」と言って連れて来たギターがいたんだけど、まぁちょっとその子は微妙だなという感じになって。その後ヒロトが入って来た、という流れですね。だから基本、俺はアリスの結成については口出ししてないんですよ。

ーーなぜ口出ししなかったんでしょうか。

虎:その方が上手くいくんじゃないかなと思ったから。

ーーそれは、前のバンドが失敗したことを踏まえてでしょうか。

虎:どちらかというとそうですね。バンドというよりも俺的な反省ですね。俺がなんでもかんでも全部決めるのは良くないなと思ったからです。

ーー前のバンドは虎さん主導で物事を全部決めていたんでしょうか。

虎:そうですね。俺が「こういうメンバーが集まるから一緒にバンドやろう」って将くんを誘って、それがきっかけとなって前のバンドは始まったんで、自然とそうなっていきましたね。でもバンドってなかなかそんなに上手くはいかないものだから、前のバンドはダメだったんですけど。

ーーなるほど。そうして、アリス九號.のメンバーが現在の5人に決まった時、最初は虎さんのポジションは上手の予定だったんですよね?

虎:まあ、そうですね。先輩だったんで。だけど、最終的に俺はベースの位置まで下がったんです。

ーーそうして上手側にヒロトさん、下手側に沙我さん、という初期アリス九號.のステージポジションが誕生した訳ですね。この提案は虎さんが行ったと聞きました。

虎:そうですよ。

ーーこの配置には、虎さんなりにどんな狙いがあったんでしょうか。

虎:単純な話、バンドが売れればいいんですよ、俺は。なので、ギタリストだから下手、上手にいなきゃいけない、とかどうでもよくて。俺が元々求めてるものはそんなものではなくて。それよりも「バンドがいかに目立つか」という方が重要だったんですよ。普通にバンドを組むと、年功序列でいくとヒロトを下手に置いて、沙我くんが普通のベースの位置にいて、俺が上手にいる、というのになるんですよね。何も意見を言わなければそうなってたんですよきっと。だけど「何が一番売れる形かな」と考えた時、ちょうどウチには前に出るタイプのベースと前に出るタイプのギターがいたんで。一番最初に思いついたのがその形だったんですよね。

ーー虎さんの中のその「売れればいい」というところにフォーカスした理念はどこから生まれてきたんでしょうか。

虎:そもそもヴィジュアル系は音楽のジャンルではないから。俺的には「こういう音楽をやりたい」というのがあってヴィジュアル系をやってる訳じゃないんですよね。

ーーでは、「なんでヴィジュアル系をやっているのか」と問われたら?

虎:「売れたくてやってる」と答えますね。動員が欲しい、とか。そもそもヴィジュアル系をやりだしたのも流れなんですよ。周りの先輩がやってたり後輩もやってて、あとスタジオでバイトしてたんですけど、そういういろんな流れが組み合わさって、ヴィジュアル系でギターを弾くことになっていったんですよ。そうなってくると、何より「売れたいな」って思うようになってくるんです。「インディーズシーンで活動していく上での動員が欲しい」とか。まず最初にそれを思ったんですよ俺は。「これがカッケー」とか「あれがカッケー」とか「メジャーデビューしたい」とかっていうよりも、まず「このライブハウスをお客さんで満員に埋められるようになりたい」とか。わりと目先の目標がはっきりしてるタイプなんですよね、俺は。だから訳も分からず「東京ドームやりたい」とか、今まで一度も思ったことが無いんです。

ーー目の前に現れた敵から順にクリアしてラスボスまで辿り着きたいタイプですね。

虎:そう。だから楽曲も目の前の目標をクリアするための楽曲作りだったりするんですよ。「ライブでこういう風に盛り上がる曲をやれば目立つんじゃないか、それで動員も増えるんじゃないかな」と考えて一番最初に作ったのが「明治」という曲だったんです。

ーーあの某お菓子メーカーのCMソング。

虎:をパクったような(笑)。だから曲のコンセプトとかなんにも無いんですよ。ただ目立てばいい、それだけだったから。

ーーこれならみんなテレビのCMを通して知ってるはずだから絶対に目立つはずだ、と。

虎:そうそう。結構それはある。かなりある。やっぱ自分達がやってる曲って、すごい憶え辛いと思うんです。イベントとかで初めてパッと観た時に「いい曲だな」ってなかなか引っかからないと思うんですよ。所詮素人が作った音楽ですから。実力も無い人間がちょっとやそっと頑張って作ったところで、曲で引っかかって人がついてきてくれるなんて思ってもいないんで。

ーーそこで夢や幻想を描かない虎さんだからこそ、現実的に考えると、みんなが知っている曲を演奏した方がよっぽど勝算があるんじゃないかと。

虎:そう。そんな幻想に望みをかけるぐらいだったら、メンバーの個性とかオーラを存分に出してもらって。楽曲は憶えやすいものでいい。だから俺は、最初の頃は簡単なものしか作ってないんですよね。なんだったら、前のバンド時代の曲の方が小難しいのを作ってますから。アリス九號.で最初の頃に作った曲はメロコアばっかりなんですよ。誰でも弾けるしライブでもミスらない、そういう簡単な曲ばっかり作ってて。それが一番分かりやすいと思ったんですよね。

ーーそれを最も分かりやすい形に特化したのが「明治」、ということですか。

虎:そうです。

ーーよくこんな発想を思いつきましたね。

虎:Naoさんが前にやっていたFatimaというバンドがあったんですけど。山本リンダの曲を自分達の曲のような感じでやってて、それがむちゃくちゃ印象に残ってたんですよ。しかも、それをむちゃくちゃカッコよくやってたんです。

ーー実際にライブを観たことがあるんですか?

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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