第百九十五回 Gt ヒロト|『月間少年HRT』vol.21

<特集>
改めて「アリス九號.」と「ヒロト」の歩みを振り返る (前編)
「自分はバンドの中で一番年下で、知識も無かったし経験が浅かったのもあって、コンプレックスが結構あったんですよ」

<付録動画>
HIROTO Guitar Channel
「横からヒロトさんMOVIE.」


ーー現在はFC旅行を終えて一息ついている、といった状況でしょうか。

そうですね。FC旅行は、やってみたらいつも通りで。それがすごく良かったんですよね。それは多分、その前にツアーをやってたからだと思うんです。先輩方の休止発表後のライブを結構自分は観てたから、自分達も”凍結“を発表した後はツアーも湿っぽくなっちゃうのかなと思ってたんです。でもこのnoteのインタビューでも話したように、「湿っぽくならないように持っていこう」と決めてからは、その方向へ向かって行った。だからメンバー自身、ツアーですごくシンプルにバンドらしくあれた。これは個人的な感想ですけど、ツアーをやっててすごく思ったことがありまして。

ーーなんでしょうか。

そもそも結成当初とか、「5年後どうなってるか」とか考えてもいなかったんですよ。ネガティブな意味でなく、そんなに続くとも思ってなかったし。だから当時はその瞬間瞬間、どうにか道を切り拓いて突破していく。それだけだったと思うんですね。今回のツアーは結果的にそれに近い感じになっていったのかなと思ってます。

ーー「9月3日以降は何も無い」という状況が、結成当初のそのような感覚を引き寄せたのかもしれませんね。

ですね。だからとてもシンプルにバンドに向かえたんですよ。それが、バンドらしいツアーができた要因じゃないかなと思ってます。

ーー活休や解散を迎える前はメンバーそれぞれがピリついていて、同じ楽屋にいるのもキツい、という話を聞いたりもしますが。

ああ〜。それは去年の方がそういう空気に近いものははあったかもしれないですね。うちは同じ楽屋にいられない、とか口を聞かない、とかは無いですけど。凍結を発表して以降はもっとフラットな感じですよ。発表するまでは、チームの中だけでも「どうなるんだ?」と揺れ動いている感じの中で過ごしていたので。そこから一つ決断をして、ちょっと肩の荷が下りたところは正直あったと思うんですよ。

ーー確かにそれはあったでしょうね。

それもあってフラットになれたんじゃないかなと思うんです。と同時に、自分は凍結前とはいってもしみったれた感じでライブをやりたいくない、というのがあって。それはみんなもあったと思います。だからとにかく純粋に、「いいツアーにしよう」という気持ちでやれた。あと、セットリストに引っ張られたところもあった気がしますね。「GRACE」のツアーではあったけど、そこに過去曲を組み合わせて「GRACE」を表現しよう、という意図があって。そこで出てきた過去の曲をツアーでやっていく中で、曲に込められたものがよりブースト作用を引き起こしてたところもあったなと思います。だからツアー最終日も、本当にいいファイナル公演になったと思うんですね。それが終わった後のFC旅行だったので、ある種いつも通りでやれたんだと思うんです。きっと参加してくれた人達も、自分と同じ感想だったんじゃないかと思うんです。それが逆にツラかったかもしれないですけどね。「なんでこんなにいつも通りなのに9月3日以降のスケジュールが無いの?」って。でも、FC旅行に来てくれる方々は本当にコアなファンの人たちだから、自分達がフラットでいることが伝わったからこそ、そうやって普段通りにいてくれたんだと思いますけどね。

ーー嬉しいことですね。メンバーの想いを察知して、ファンのみなさんなりにメンバーを笑顔にしたい、という想いがあったのかもしれないですね。

うん、そうですね。旅行は「まだこんなネタが残ってたか」という内容だったんですよね。旅行は毎回目玉となるトピックがあるんですけど。過去だとプラネタリウムや星空の下でのライブとか。今回は、自分達だけの打ち上げ花火があったんですよ。僕らは催す側でしたけど、あれはめちゃくちゃ感動しました。しかもちょうど天気もよくてバッチリだったんですよ。月まで綺麗に見えて。その月の周りを花火が彩って。空気も澄んでて、そんなに寒くもなくて、絶好のロケーションで「shooting star」に乗せて花火が上がった。ちょっと話が逸れるんですけど、音楽って、映像よりもデータ量が多いんだなとあの瞬間確信しながら花火を見てたんですよ。あれも、自分達の音楽が無かったら「花火、綺麗だな」だけで終わってたと思うんです。だけど、自分達の曲に合わせて花火が上がった時は、その「shooting star」にまつわる思い出とともに、みんな、目に映る花火以上の“映像”を思い出して見てたんだと思うんです。

ーーなるほど。

だから普通の花火大会とは違うんですよ。

ーー例えば野外ライブで、アリス九號.が「shooting star」を演奏しているバックに花火が上がる、という演出とも。

演奏してたらちょっと違うなと思いますね。どう言葉にしていいのか分からないんですけど、「まだこんなのがあったか」っていう発見でした。お台場の、花火と音と融合させた、小橋さんがプロデュースしてる…

ーー未来型花火エンタテインメント「SATR ISLAND」のことですか?

それです!あれも見たことがあるんですけど、「自分達のためだけの花火」というのは新しいなと思いましたね。花火のお陰で「shooting star」がめっちゃ映えてましたから。ちゃんと曲に合わせて、イントロ、Aメロ、Bメロとかはポツポツ上がるぐらいで、サビでバーっと上がったりとか、起承転結がしっかりあったんです。あれはすごかった。あと久々に「ALICE9ちゃんねる」もやったんですよ。花火の直前までそういうバカげた企画をやってたのもよかったんです。そのお陰で、花火の感動がさらに深まった感じがします。さっき旅行は「いつも通りだった」って言いましたけど、今回はその「いつも通り」な感じをさらに更新できた気がします。

ーーそしてこのFC旅行の後、バンドとしては最後のツアーLAST DANCE ACT.4「Frozen Waterfall」に突入しました。ここからは、今までのアリス九號.とヒロトさんを総括していきたいと思います。これまでの活動を振り返ってみて、ヒロトさんが思うバンドの転機とは?

インタビューの答えとしては身も蓋も無い回答かもしれないんですけど、振り返ると転機は常にです。「ここがあったから」とかじゃないと思うんですよ。バタフライエフェクトでしたっけ?一羽の蝶が羽ばたくだけで、遥か遠くの気候が大きく変わるかもしれない、と。それと同じで、大きいトピックって作ろうと思えばいくらでも作れるんですよ。例えば最初の頃だったら、虎の持病の頚椎ヘルニアが悪化したことでギターが弾けなくなってツアーの一部を延期したこと。初めて日本武道館公演をやったこと。事務所から独立したこと。作ろうと思えば色々あるけど、本当に大事なことは瞬間瞬間で常日頃起こっていて、その積み重ねだと思うんですよね。というのを、春のツアーをまわってすごく思ったんです。

ーーもう少し詳しく解説してもらってもいいでしょうか。

「PRISMATIC」という曲の歌詞の中に、”その一挙手一投足が僕を形創る“というフレーズがあるんですけど、その通りだなと思うんです。大きく感じるトピックって、実はそんなに重要ではないと思うんですよね。

ーーなるほど。それではその「一挙手一投足の動き」について聞いていきたいと思います。ヒロトさんはアリス九號.を結成するまで、バンドを組んでも自分と他のメンバーとのモチベーションとの落差に苦労されていらっしゃいましたよね。そういったバンドからアリス九號.がスタートして、このバンドではどうなりたいと考えていたんでしょうか。

「売れたい」とかはそんなに重要じゃなかったんですよ。ただ、さっきの話と少し矛盾して聞こえるかもしれないんですが、タイミングごとに目指す目標地点はざっくり自分の中では決めていて、ライフプランニングはしてました。

ーーそれはどのような感じでしょうか。

「22歳までに武道館をやろう」とか。

ーーなぜ22歳までだったんですか?

すごく単純な理由で、LUNA SEAのメンバーさんがそれぐらいの年齢の時に初武道館をやってたからです。自分の場合、「バンドの形態でライブをやりたい!」と思ったのがLUNA SEA先輩のライブを観て、というのが始まりだったので。だとすると、少なくとも模範とする人達と同じかそれよりも早いタイミングで武道館をやらないと、先輩以上になれないと思ってたんです。LUNA SEAの年表を見て…。僕は昔から歴史が好きだったんで、好きになったりするとなんでもそのバイオグラフィーを調べていたんですね。それでLUNA SEAの年表を見て、「ここからいきなりこの規模のホールツアーに切り替わるんだ」とか。当時はネットも今のように普及していなかったから、バイオグラフィーぐらいしか情報が無かったんですよね。そこに自分達を重ねて、「武道館をここら辺でやるためには、その前のここら辺にメジャーデビューがあって、そのためにはここら辺で結成後初の1stアルバムを出して…」みたいな計画を、逆算して考えてました。26歳ぐらいまでの自分のそういうライフプランニングは、ざっくりとですけどあったんです。でもかといって、最初の時点でそこまで「絶対にこのバンドを'続けてやろう'」というのは無いんですよ。もちろん、続けばいいなとは思ってました。初めてだったので。

ーー何が、でしょうか。

ワクワクするようなメンバーに初めて出会えて「これか!」と初めて思えたんですよ。音楽雑誌のインタビューで読んでた「電撃が走った」とみんなが表現していたのはこのことか、と。インタビューで何組もそういうことを答えてる人がいるってことは、絶対にある。そう僕は信じてたんですよ。そうしたら「キタコレ!」で。そこからはとにかく必死でした。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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