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熟語本位英和中辞典を覗く10

かかあ天下のバグ


検索を続けるうちに、ヘンな結果が判明した。5番目に出ているのは、病気に罹るの「罹」の漢字についているルビ「かか」とその上の行にある「彼」の漢字についているルビ(あれ)の「あ」がヒットしている。

「かかあ」の検索結果6件のうち関係ないのが、たった1件なのは、まあ笑って済ませられるが、これが1000件のうち300件だとしたら、銀色に輝く記憶媒体は欠陥商品になり、出版社へ怒鳴り込みたい気持ちになろうというものだ。

「嚊」と「嚊かか」で検索すると、ヒットしたのは5件、「嚊かかあ」だと3件、また「かかあ」のときは、「嚊」が4件しかヒットしなかった。

それに、「あの家では嚊かかあの方が偉い」の「かかあ」がヒットしないで、校注の「かかあ天下」の「かかあ」だけがヒットしている。この一連の結果にも納得がいかない。

「かかあ」6件のうち3件は、口偏の嚊であるが、最後のは女偏の嬶になっている。この見出し語に限って、増補担当の豊田実が執筆したのだろうか。

Tom[tɔm]【固名】(=Thomas―の略)男子の名.・・・略・・・Tom Tiler 並の男,嬶かか あ 天下の夫.

昭和26年に出た博友社の新修漢和辞典をみると、口偏のほうは、喘ぐ聲(こえ)、はないき。この語義から、いったい既婚女性のどんな姿を想像しろというのか。女偏のほうは、カカ。かかあ。夫が妻を賤(いやし)んで呼ぶ語。

新潮日本語漢字辞典をみると、①口や鼻で呼吸する。「嚊息いびき」 ②かかあ。自分の妻や人の妻を親しげに呼ぶ語。おとしめて呼ぶときにも使う。かかとも読む。「嚊天下かかあでんか」。

上の辞書は、田山花袋の「田舎教師」を引用している。髪の乱れた肥つた嚊(かかあ)が柱に凭(より)懸つて、今年生まれた赤子に乳を飲ませて居ると・・・。

このあと、どんな文章が続くのか、青空文庫で検索すると・・・亭主らしい鬚面《ひげづら》の四十男は、雨に仕事のできぬのを退屈そうに、手を伸ばして大きなあくびをしていた。

岩波古語辞典には、かか(母・嬶)<ととの対>とある。発音する時、カカーデンカと音を伸ばすのは、披露宴をヒローエンと発音するのと同じ長呼のせいであろうか。

短呼の語義を、新明解国語辞典第七版から引用しよう。「女房にょうぼう」を「にょうぼ」、「女郎じょろう」を「じょろ」と言うなど、発音の便宜上、本来は長くのばして発音する部分を短く発音すること。


熟語本位英和中辞典を覗く11|alicemayism (note.com)




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