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ルカは、脳の病気をわずらっていた。 眠ると、それまでの記憶が消えてしまうのだ。 ルカの毎日は、朝、 前夜に書いた枕元の日記帳を見て、 すべてを確認することから始まる。 「名前はルカ、フランス、 パリ在住、年齢三十五歳、 勤め先はブルージュ不動産…」 ある日の昼休み、ルカはカフェ、ル・ロスタンで、 いつものようにコーヒーを飲みながら、 自分の日記帳をめくっていた。 「あ、クリストフじゃないか!」 店に入って来た自分より少し若い男が、 嬉しそうに肩をたたきながら言った。