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Tim Hecker / Haunt Me, Haunt Me Do It Again

2001年発売。カナダからは実験音楽界隈においてかなり人気のあるアーティスト、Tim Hecker。そんな彼の記念すべき1stアルバム。数百回とこのアルバムを聴いてきた私が保証する。このアルバムは良い。

一歩間違えれば雑音のようにも聴こえるノイズ、しかしそれをうまくドローンと交錯させることで、心地の良い音となっていて、聴くたびに「音楽ってこういう形もありなんだー」を実感することができる。

私の口癖「ノスタルジック」とは、まさにこのアルバムのことを言うのだと思う。アルバムの世界観が一貫していて、昔々に忘れた大切な何かをずっと探しているように聴こえてくる。
例えば、小学校、体育の授業を休んだ日に遠目から見学した時に感じた孤独感と、同じ運動場にいるはずなのに生徒の笑い声が遠くに聞こえる不思議な思い出。
私事ではあるが、体育なんて頻繁に休んでいたし、見学にも興味がなかった為、ずっと空を見ていた。「空はどこまで続いてるんだろう」とか、意味もなく宇宙とか、壮大なことを考えたりする。時々、飛行機が飛んでいるのが見えたりする。その音が遥か上空から響いてきて……。

実際に体験した時にはなんでもないような日常のワンシーンでも、今となっては心の奥底に無意識に形創られる心象風景であり、愛おしい思い出でもある。このアルバムにはそういう人間の寂寥感を刺激する効果があるのではないかと強く思う。

6曲目「The Work Of Art In The Age Of Cultural Overproduction」はアルバムの中でも一つの曲として聴きやすいと感じる。それでも、やはり全体だとノイズ混じりのドローンミュージックであるから、。

それと、個人的にジャケットも推したい。私は、このアルバムのデカジャケを部屋に飾りたかったために、人生初のレコードを購入してしまい、それから見事にレコード沼へとハマってしまったのだ。恐ろしいことである。そういえば、最初にアルバムを聴いたときも、アートワークに惹かれた覚えがある。いわゆるジャケ聴き。

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アルバムを通して描かれている郷愁を誘う世界に浸りながら寝るとなんだか昔に戻れそうだ。今現在で一番タイムマシンに近い存在。時をかけるTim Hecker。


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