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Eli Keszler / Stadium

 2018年発売。アメリカはNYのドラマーEli Keszler、9枚目のスタジオアルバム。実験系に振り切ったジャズといったところか。聴いた瞬間、凍てつく氷で突き刺されたような衝撃を与えられた作品だ。全く予想できない展開に為す術なく、ただ茫然と目(耳)の前で披露される、研ぎ澄まされたパフォーマンスに思わず正座してしまう。
 ただ聴いていると、緊張感のあるミニマルなドラムスや一つ一つの音の間隔が完璧であることから、機械が無機質に奏でているように感じてしまうのだが、どうやらすべて生身の人間であるEli Keszlerが録っているよう。おそろしい。良い意味で。

 ほんの一瞬の静寂、空気の少しの揺れ一つ見逃すことのできない約50分間。その50分は、ネテロ会長の百式観音VSアリの王メルエムの一戦を彷彿とさせるものであった。呼吸をも忘れるひととき。祈り。祈りとは心の所作。1日1万回、感謝のアルバム試聴。

「感謝するぜ お前と出会えた これまでの全てに!!!」

 ele-king.net様のアルバムレビューに「ドラム演奏の粒子化」という言葉が載っているが、正にそう。私が言いたかったすべてのこと。感動しました。


 初めて聴いたときには、Eli Keszlerの名前は存じ上げておらず、ジャケットがTim Heckerの名作「Haunt Me」になんとなく似ていたことから惹かれた。いやはや、ジャケ買いの文化は絶やしてはならぬと感じたのである。余談。

 刹那に生きたいリスナーにおすすめ。

 2021年現在、新アルバムが発売されるということでそちらもチェックしたい。配信シングルの時点で良盤の予感……。



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