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祈り

第18回「文芸思潮」現代詩賞入選



こめかみが温く疼く
知っているけれど忘れさせた感覚
忘れようと努力した感覚
月がいるのです
そばに
月がいるのです
ぼんやりと
月がいるのです
たしかに
こめかみから脈拍は徐々に全身へと
どくりどくりと
聞こえない音を立てて
首筋
胸元

股間
膝裏
爪先を通って
最後に口先に熱を伝えました
私は月を一口食べました
そしてそのまま空へ返しました
今宵は満月めいた歪な三日月
月が、いるのです

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