見出し画像

Andante(♩=72)

1.
私は歌を愛していますが
歌は私を愛することなく
私は貴方を愛していますが
貴方と私は愛を知らず
私は人を愛していますが
人に私は愛しかたを問われません


2.
私は赤に焦がれていますが
赤は私を青だと言います
私は青に語りかけますが
青は私を灰色だと言い
私は灰色に縋りますが
灰色は私を透明という


透明に尋ねました

「わたしは なにいろです か」

透明は答えました

『あなたは あかいろ』

おてあげ、
堂々巡りです
サインポールにでもなれというのでしょうか
私は透明にお礼を言って
道すがらそこらのねこじゃらしを手に取って
咥えてみました

………。
思いのほか、渋い。

芒を手に取りました
穂が抜けてしまいただの竹箒のようでした。

大葉子を手に取りました
相手がいないと遊べませんでした。



( 閑話
( 走り回っていた堤防の種々は
( いつか蒔いた私の思い出でできていて
( 昨日足を運んだときには
( アスファルトの下で
( 生を 引っ掻いていました



庵点
前奏
間奏
 どこかで聴いたフレーズ

そして、ブリッジに巻き戻る  :||


進む、



ひと呼吸





3.
私は歌を愛していますが
歌は私を愛しません
思い返せば求める限り
答えてくれるのがあなたでした

私は貴方を愛していますが
貴方と私は愛を知らず
思い返せば求めたとして
触れたことなどないもので

私は人を愛していますが
人は私に愛を問わない
思い返せば求めかただけ
もらっていたのは確かなのです


4.
こがれる赤を芒に染めても
そまった青を大葉子に説いても
とかれた灰色にねこじゃらしを混ぜても
まぜた透明で、漕がれてしまう

尋ねた私は
なんだか少し澄んでいて
今度、赤い「あなた」に話そうと思いました
青色で、灰色で、透明で、
それでいて私は赤いのだ、と
けれどきっと橙色で
ときには緑で、紫で

私はきっと
愛をしらない



庵点
後奏
後奏
 フェルマータの余韻

余韻



終始線.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?