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LHTRPG ネームドアイテム雑考

この記事はログ・ホライズンTRPG(以下LHTRPG)における高位(M4以上)のマジックアイテム、所謂「ネームドアイテム」についてyu-jinの個人的な所感をざらっと述べたものです。

■ネームドアイテムとは

ネームドアイテムとは何だろう。まず冒険者窓口、ログ・ホライズンデータベースにおける記述は以下の通り。

マジックアイテムの中でも特に固有の名称と能力を持つ強力なアイテムである。原作における秘宝級(アーティファクト)や幻想級(ファンタズマル)に相当し、その能力は他に類を見ない特殊で強力なものが多い。マジックグレードを持つ。(ログ・ホライズンデータベース「ネームドアイテム」

ネームドアイテムが「秘宝級」や「幻想級」に相当する「強力なアイテム」であることはここから読み取ることができる。では、この「秘宝級」「幻想級」アイテムはルール上どのように管理されるのだろうか。

マジックアイテムの強さを表す値。[M3]のように強度を持つタグの形で表現される。一般に、[M1]~[M3]を魔法級アイテム、[M4]~[M6]を秘宝級アイテム(アーティファクト)、[M7]以上を幻想級アイテム(ファンタズマル)と呼ぶ。(ログ・ホライズンデータベース「マジックグレード」)

ここから、アイテムの等級はマジックグレード(MG)という数値で管理されていることが分かる。ネームドアイテムは[M4]以上のマジックグレードを持っているアイテムであるといえる。
またネームドアイテムが基本的に[非売品]タグを持つことや、作成に必要な「レシピ」を持つことが「ネームドアイテムの入手」の項や「ネームドアイテムの作成」の項(拡張ルールブックP.171)などで定義されている。

・[M4]以上のマジックグレードを持つマジックアイテム
・固有の名称とフレーバーテキストを持つ
・基本的に[非売品]タグを持つ
・作成のための「レシピ」を持つ

システム的にはこうした特徴を持つアイテムが「ネームドアイテム」と定義されているといえるだろう。

■ネームドアイテムは「強い」のか

ネームドアイテムは「強い」のか、という議論があるが、何をもって「強い」とするかは難しい。【攻撃力】や【魔力】が高いのか。【防御力】やもたらされる[軽減]の強度が高いのか。特殊効果が汎用的なのか。特定の状況に持ち込んだ時に猛威を振るうのか、等々。これら「強さ」の議論が散漫になりやすいのは、こうした複数の評価軸が存在する問題であるからだ。
【攻撃力】や【魔力】などが高いことは確かにわかりやすく「強い」要素であるが、そうした「強さ」は「鬼神の」「神秘の」プレフィックスを使ったプレフィックスドアイテムの方が満たしやすい。
では、ネームドアイテムを使うことのメリット、ネームドアイテムならではの「強さ」とはいったいなんだろう?ネームドアイテムを分析したうえで、「装備品スロットと効果の上限」、「ビルドの拡張」、そして「物語性」についてざらっと論じてみよう。

■ネームドアイテムを分析する

ネームドアイテムはプレフィックスドアイテムの上位としてデザインされており、プレフィックスドアイテムが「アイテムに一つの効果を追加するもの」とデザインされているのに対して、ネームドアイテムは「アイテムに複数の効果を追加するもの」としてデザインされている。完全に分類しきれるものではないが、その主な効果はだいたい以下の通り。

①数値系効果
【攻撃力】【魔力】【物理防御力】【魔法防御力】【行動力】【移動力】【所持品スロット】などを強化する効果。

②ステータス系効果
自身に[軽減]や[飛行]などのCSを与えたり、エネミーに[追撃]などのBSを与えたりするようになる効果。

③特技性能系効果
取得している特技のSRを強化したり、性能そのもの変更させる効果。また与えるBSの強度を変化させるような効果も結果から考えればここに分類できる。

④行動追加系効果
既存の行動や特技に存在しない、特殊な行動を可能にする効果。

⑤その他効果
①~④に分類しきれない特殊な効果。

ネームドアイテムは、そのIR相当のアイテムとしての基本的な性能に①~⑤の効果を複数組み合わせてデザインされるものと考えられる。
たとえば[M5][ランク3]のネームドアイテム、〈魔素喰らい〉は、【攻撃力】を強化する「①数値系効果」(+5程度?)と、「②ステータス系効果」([軽減(魔法攻撃):10])、IR3の[両手]タグを持つ[剣]のデータ(実際は存在しない)と組み合わせであると考えられるし、[M6][ランク4]のネームドアイテム〈使徒の帽子〉は「③特技性能系効果」(《ヒール》への効果追加)と「⑤その他効果」([惑乱]にならない)、IR3の[頭部]タグ補助装備の組み合わせであると考えられる。

■装備品スロットと効果の上限

装備品スロットは、LHTRPGにおいて最も限定されたリソースの一つだ。
キャラクターは[手スロット]を2つ、[防具スロット]を1つ、[補助装備スロット]を3つ、[鞄スロット]を1つしか持っていない。これは(例外的なテクニックはいくつかあるものの)、基本的には最大で同時に7つ、プレフィックスでの効果を合算すれば最高で14種までしか装備アイテムからの「効果」を受けることができないことを意味している。しかし、複数の効果を持っているネームドアイテムは、この上限を覆す可能性を持っているといえるだろう。
たとえば[M6][ランク9]の〈アーンドラスの鋼殻鎧〉は「①数値系効果」(+6の【物理防御力】上昇)、「②ステータス系効果」([軽減(至近以外からの攻撃):10])、そして「④行動追加系効果」の3つの効果がIR9の[重鎧]タグを持つ防具に付与された強力なネームドアイテムだ。
これは1つのアイテムスロットに4種の効果が同居している状態であり、他のスロットに全てプレフィックスドアイテムを装備した場合、キャラクターは18種まで装備から効果を受けることができる。こうした効果受用上限の向上はネームドアイテムの数値的なメリットと言える。
とはいえ、実効性のない「効果」を無意味に積み重ねても、それは金貨と装備品スロット、そしてMG合計によるGM【因果力】の追加ルールをGMが採用するならそのMG枠をいたずらに消費するだけに終わるので、相当な厳選を必要とするのではあるが。

■ネームドアイテムによるビルドの拡張

ネームドアイテムの大きな機能として「③特技性能系効果」「④行動追加系効果」「⑤その他」を利用したキャラクタービルドの拡張をあげることができる。
たとえば〈魔術師の籠手〉は、魔法攻撃職共通特技《エンハンスコード》の性能を向上させ、その特技取得の優先度を大きく変化させるし、その大目的である「ある程度の火力」を少ないSRで満たすことができるようになれば、残った特技枠で別のこともできるようになる(当然火力を追求してもいい)。また、その効果から特殊な行動を可能にする「④行動追加系能力」を持つ〈ラブリンの棘ある鎖鞭〉〈使徒の帽子〉などは、キャラクターの戦術やビルドそのものを変化させる。
こうしたキャラクターのビルドそのものを大きく変え、独特のものへと発展させる可能性は、ネームドアイテムの持つ魅力といえるだろう。

■ネームドアイテムの物語性

ネームドアイテムは、各々が制作のための素材を記した「レシピ」と、その背景を記した実効性のない文章である「フレーバーテキスト」を持っているおり、その物語性は他のアイテムに大きく勝る。こうした物語性はシナリオに絡ませるにはもってこいだし、その果てに得られたネームドアイテムは思い入れも深くなる。
プレフィックスドアイテムをリネームし、こうした物語を独自に設定することもできるだろうが、「公式設定」として物語が付与されているネームドアイテムは、やはり「強い」。またレシピからアイテムの性質や制作過程を想像することができる点もまた楽しい。

■まとめ

以上、ネームドアイテムの分析と、そのメリット、そして物語性について管見の限りながらつらつらと語った。
ネームドアイテムは、総じてデータの密度そのものが高いことがその特徴といえる。独特な名前、複数の効果、フレーバーテキスト、そしてレシピ。
「ネームド」の名にふさわしく、それらは一品ものであり、LHTRPGの世界を彩るさまざまな華といえるだろう。
また性能面ではプレフィックスドは強力で安定した工業製品、ネームドは名工の作った妖刀のような位置づけにある。魅入られて、本当に必要かどうかの検討をすることなく無目的に身に着ければ、ネームドアイテムは大した性能を発することなく、その高いMGはGMの【因果力】としてあなたとあなたのパーティーに牙をむくだろう。
あなたが、あなただけの物語を背負った、あなたにふさわしいネームドアイテムに出会えることを願っている。

■おまけ:個人的に好きなネームドアイテム10選

10位:〈魔術師の籠手〉
低ランク帯におけるネームドアイテムの代表格ともいうべき強力な補助装備。ダメージの最高値を求めてもいいし、少ないSRで最低限の数値を満たすために用いるのも良い。

9位:〈満月長石のバングル〉
ロマン力と実用性が高いランクでまとまった魔法系補助装備で、これ専用のビルドも存在するという点において個人的に評価が高い。

8位:〈夢魔のクローク〉
付与術師と吟遊詩人垂涎の定番補助アイテムの1つ。どれだけ高ランクになっても愛用するタイプのネームドアイテムの一つで、「お前いっつもそれつけてんな」とか言われがち。

7位:〈火喰い鳥の卵珠〉
割と高ランク帯まで[火炎]タグに対して強力なアンチになりうる消費系ネームドアイテム。[火炎]を持つボスが確定している戦場などに持ち込まれると致命的な効果を発揮するため、GMとして警戒を要する。

6位:〈忍者のマンプク飯〉
名前のイロモノ力に対して、戦闘中に受ける[疲労]に対して強力な対策になりうる消費系ネームドアイテム。「とんでもなく不味い」ことが公式で設定されているため、金をかけた罰ゲームとして活用するのも楽しい。

5位:〈アティキュレイテッドソード〉
ロマン力が非常に高い片手武器。[剣]タグのみならず[鞭]タグも持っているので《フォールド》なんかも選択肢に入ってくるのが面白い。フェンサービルドで使うのが定番で、意外に実用度が高い。

4位:〈死者の冠〉
不死系召喚術師御用達の[頭部]装備。火力を増強してくれるという点でも貴重であるが、それ以上に[弱点(光輝):10]がポイント高い。ネクロマンサーたる者、光輝で滅びたいよね。

3位:〈ダザネックの魔法の鞄〉
原作でおなじみの魔法の鞄。貴重な消耗品系のネームドアイテムと併用すると猛威を振るう。いつまでも使える点もポイントが高い。

2位:〈嵐刀・木枯丸〉
低ランク帯で、《流派:風守雷攻》の意味を大きく変える可能性を持つネームドアイテム。これを2本そろえてアスラビルドをすると単純に楽しい。こういうのでいいんだよ、みたいな気分になる。

1位:〈使徒の帽子〉
施療神官、ハイヒーラービルドの意味を根本から変更するネームドアイテム。【回復力】を打撃力に変換できるようになるため、これを向上させる特技やアイテムの価値がすべて変更される。回復一筋の純回復が打撃力に狂う瞬間は見ているだけでも楽しい。

審査員特別賞:〈新妻のエプロンドレス
実質的な効果はさほどでもないが、冒険の途中で調理ができるようになることを考えると物語的な有用度が高い。そして何より「誰が着てもフリフリ」であることが公式から言及されている点が素晴らしい。

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