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部隊EXから考えるレイドシナリオのデザイン

この記事はログ・ホライズンTRPG(以降LHTRPG)において、レイドランクのボスを登場させるシナリオを作成する際に気を付けたいいくつかの事柄、特にその中でもキモとなる部隊EXの選択に大きく影響する情報項目とその扱い、タイミングについて、yu-jinの個人的な所感をざっと述べたものです。

■事前情報と部隊EX選択のタイミングの関係

部隊EXは汎用的なものと、ピンポイントで大きな効果を発揮するものに大別することができる。
詳細は
LHTRPG レイドボスの基本的な特徴とタイミング別部隊EX雑感
https://note.com/algorun48/n/n648632825149
を参照してほしい。
古来より

知彼知己、百戦不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戦必殆。(敵と自分のことを知っていれば百戦しても危うげが無い。敵の事を知らなくても自分の事を知っていれば五分五分までは持ち込める。どちらも把握できないまま戦うのは危ないからやめとけ)

というように、事前の情報が戦略、戦術を形作る。今回は部隊EXから考える、レイドシナリオにおける事前情報の開示の仕方について考えてみたい。

部隊EXを選択する際、事前に情報があればあるほどその対策はより具体的な、ピンポイントなものになっていくだろうし、情報がなければ鉄板、つまりどの状況でもそこそこな効果を発揮する汎用的なものが選択されていく。

情報がなければ部隊EXは《守護戦士の城塞防御》や《妖術師の元素呪文》などの鉄板ばかり選択されていく。そういった状態をヨシとするならいいが、多彩な部隊EXを見たいなら、部隊選択前にいくつかの事柄に関するある程度の情報をPTに与えなければならない。

■部隊EXの選択に関わる項目

部隊EXの選択に関わる情報項目は以下の5つと考えられる。

①モブの存在
《暗殺者の除去》《付与術師の停滞管理》の選択にかかわる。

②ノーマルの存在
《付与術師の停滞管理》の選択にかかわる。

③攻撃属性
《神祇官の属性防御》にかかわる。
また、すべての攻撃に単一属性を与えると完封の可能性もあるのでデベロップ時には注意。

④移動攻撃の有無
《武闘家の引き寄せ》《召喚術師の送迎》の選択にかかわる。

⑤強力なBSの有無(特に[封印]タグ)
《森呪遣いの治療雨》《施療神官の状態治癒》の選択に関わる

これらの5つの項目をどの程度の確実性で、そしてどのタイミングで知らせるかが、シナリオ構造を決めるといってもいいだろう。また、あまり設定するべきではないが、攻略にどうしても必要となる属性タグ、もしくは特定の特殊能力があるのならどうにかして先に開示しておく方が絶対に良い。

■どういった形で情報開示すべきか

開示すべき項目が明らかになったなら、今度はどういった形でその情報を開示すべきか。これに関しては基本的に2通りの開示があるのでは、と筆者は考えている。

a.NPCの体験を開示する。
エネミーの不正確な名前、および外見を伝聞調で〈大地人〉などから語らせる。直接会う、もしくは正確な名前を伝えると《エネミー識別》や〈垣間見の巻物〉などで情報を抜かれる可能性が高いので、それが嫌なら伝聞調にしておくとよい。情報としては、配下の有無、特殊な行動、[属性]タグなどは開示しやすい。

b.断片的にゲーム時代の情報を開示する。
〈冒険者〉などからの伝聞で断片的にゲーム時代の情報を開示する。〈エルーダーテイル〉時代の情報であるため、正確な数値はわからなくとも「あの[火炎]ブレスがえらく範囲広いわ」「飛行して動き回るから厄介」「すげー強い[放心]が飛んでくる」など、かなり具体的な情報を渡せる。
〈大災害〉以降に新たに得たような能力(地形の利用など)に関する情報は伏せておいても「不公平感」は少ない。

また、ミッションで情報を得られるように設定しデータの形で部分的に開示していくというような工夫も面白いだろう。問題は絶対開示しておく情報を、どうやって不完全な形で、事前にPLに渡すか、にある。

■情報開示と部隊EXの選択タイミング

最後に、情報開示と部隊EXの選択タイミングについて触れておきたい。
まず、前提として部隊EXの選択は必ず情報開示のあとになる。最初に述べたように、そうしなければ汎用性の高い、言い換えれば代わり映えのしない部隊EXしか選択されないだろう。貴重な部隊タグを使用する以上、空振りは避けたいのがプレイヤー心理だ。
では情報開示自体はいつ行うのか。これには「キャラクター作成と同時」「キャラクター作成後」の2つがあるだろう。

A.キャラクター作成と同時
このタイミングで情報を開示すると部隊EXの選択はスムーズだが、同時にPCのビルドのレベルで対策がなされることになる。
強力なレイドボスのデータを用意したうえで、メタレベルでの対策も前提の、一手も間違いを許さないレベルの死闘を楽しみたいならば、このタイミングで開示するべきだろう。

B.キャラクター作成後
これはシナリオが開始された後でもいいしキャラクターを事前に提出してもらい、その後で情報を開示して部隊EXを選択してもらっても良い。
また半日セッションで、前半に情報を公開し、休憩を含めた2時間程度の間に部隊EXを選択してもらっても面白いだろう。
このタイミングの開示だと、「素のキャラクターのできること+部隊EX」でレイドボスと対峙するため、メタにはなり切らず、一進一退の戦闘が楽しめる。

こうした「開示すべき情報項目」「開示の手法」「情報開示のタイミング」の三項目を調整することによって、より多彩なレイド戦が楽しめることだろう。

汝平和を欲さば、戦への備えをせよ

ローマの軍事学者、ウェゲティウスの言葉をもとにした箴言の通り、戦闘はそれに備えるところから始まっている。何に、どのように備えさせ、そして何に備えさせないか。そのデザインからレイドシナリオは構築されていると言えるだろう。

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