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Design Canary #1「生成AIがもたらすサービスデザインの変化」イベントレポート


イベント概要

2023年10月5日、Algomatic 3Fイベントスペースで行われた「Design
Canary」の第一回のイベントを開催いたしました!

コミュニティ立ち上げの経緯などについては以下のnoteを参照してください!

今回のテーマは「生成AIがもたらすサービスデザインの変化」です!
ChatGPTやStable Diffusionといった、いわゆる”生成AI”の登場により、様々な業界の至るところで変革が起きています。
このイベントでは、サービスデザインという部分にフォーカスし、生成AIがどのようにサービスデザインという分野に対して変化をもたらしているのかを業界をリードする深津さん保坂さんをお呼びして、Algomaticの野田の3名にパネルディスカッション形式で熱く語りあってもらいました!
また、ファシリテーターはAlgomaticのCTO南里が務めました。

スピーカーの紹介画像。深津さん、保坂さん、野田さんの写真とSNSのアイコンが写っている。

深津貴之 (Xはこちら)

インタラクションデザイナー。 株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブファームTHE GUILDを設立。メディアプラットフォームnoteを運営するnote株式会社のCXOなどを務める。執筆、講演などでも精力的に活動。

保坂浩紀 (Xはこちら)

AI inside 執行役員CXO。メーカー、IoTベンチャー、デザインコンサルティング会社を経て、2019年10月に1人目デザイナーとしてAI inside に入社。デザイン組織を立ち上げ、プロダクト・ブランド・顧客・従業員を繋ぐエクスペリエンスデザインに従事。

野田克樹 (Xはこちら)

Algomatic執行役員CXO。Goodpatch、TBSテレビでUXデザイン/デザインマネジメントを経験。取締役を務めるBison HoldingsをAlgomaticに売却し、創業メンバーとして同社に参画。プロダクトデザイン、デザイン組織の構築やコーポレートブランディング、広報活動などのディレクションを管掌。

パネルディスカッション

一部実際の内容を意訳・省略していることをご了承ください。

Q:生成AIで「デザインプロセス」はどう変わる?

パネルディスカッションの最初のテーマ:生成AIで「デザインプロセス」はどう変わる?
生成AIで「デザインプロセス」はどう変わる?

南里
「1つ目のテーマなんですけれども、生成AIが登場したことによって、デザインプロセスはどう変わっていくのかという問いでお話を聞いていければなと思います。生成AIが登場したことによって、デザインプロセスはどうなっていくと思われますか?」

保坂さん
「デザインプロセスは抜本的に変わっていくと思います。登場してまもないですが、私たちでは、生成AIを一部の業務で使い始めています。」

南里
「保坂さんの会社では、全体のワークフローとしては変わっていないが、一部の業務でどんどん生成AIを使って変わっていっているってことなんですね。野田さんどうですか?」

野田
「僕の中では、今の今々はあんまり変わってはいなくて、変わっているとすると、デザインプロセスの点在したインタビューのフェーズ、コンセプトを作るフェーズなど、点での効率化はとても進んでいます。
インタビュー設計とか、事前情報をインプットして行わせると、そのまま使えるかは置いておいて、たたきとしては有用なインタビュー設計してくれるし、インタビューの生のデータを入れてあげれば、大体のそこに対する課題の足探しとか精度高くなっているので、そういう点々でのプロセスは、今すでに変わってきているし、効率化ができている印象があります。多分今後はそれらの作業を横断してオートメーションしてほしいなと感じていますし、今後そうなっていくんだろうと感じていますが、エンジニアの人とCopilotほど、何かバックボーン的にコードを書いたり、デザインを作ったりするという実感は正直まだないですね。」

ファシリテーターの南里さんがマイクをもって喋っている様子

南里
「そうですね、デザイナーの方はあまり馴染みがないと思いますが、Github Copilotっていうエンジニアがコードを書くときに、Copilotが一部のコードを書いてくれる機能なんですが、実際にCopilotを使っている人は3割くらい作業量を削減できたんじゃないかという風に言っている方も多くて、生成AIにどう指示していくかみたいなところに自分のリソースを使うようになってきているという印象だったんですが、まだデザインはそこまでいっていないという感じなんですね。深津さんはどうでしょう?」

深津さん
「プロジェクトの流れは変わらなくて、今まで小さい規模でしか行えなかった検証が厚く、広く探索を行えるようになったと感じます。」

南里
「生成AIってなんというかジェネラルマンのような、なんでも投げたらいい感じに返してくれる感じがあって、そう言ったところに深津さんのおっしゃっていた広さ探索。ざっくりと返せるようなところに生成AIとの相性がいいという特徴があるんだろうなと思います。」

野田
「深津さんは前半のフェーズでどういう使われ方しているんですか?」

深津さん
「一番面白いところでいうと、ChatGPTでバーチャルインタビューさせています。LLMって平均的なことを言うので、ペルソナに合わせて話してもらって、プレインタビューとして行なって、そこで深めたインサイトを元にインタビューさせていますね。」

南里
「自分で仮説立てて考えるプレユーザーを作って当てるのって、効率化されそうですね。」

深津さん
「ジュニアのメンバーなどのインタビュー初めての方には、ChatGPTにインタビューさせるとか。」

南里
「練習・研修・標準化みたいで面白いですね。
インタビュー自体をシステム化させて、自動的にいろんな人から情報を収集するというのはどう思いますか?」

深津さん
「そんなに遠くない将来であると思います。今の段階だと、生成AIにインタビューをさせるよりは、生成AIに質問を作らせて、Google Formを作成するというのが良さそうですね。」

野田さんがマイクを持って喋っている様子

野田
「話に出ていない使い方で言うと、UIの壁打ちとかは常にしています。OpenAIからGPT-4Vが発表されてまだ自分は使えないんですが、使える人のものを借りて作ったUIを投げてレビューしてもらうことをやってみたんですけど、個人的にはまだ有用じゃないなという印象です。チャットベースだと、UIを言葉で設計して、追加した機能とかのディスカッションはよく行なっていますね。」

野田
「言語モデルって文字情報を扱うのが得意というのが前提で、今後リサーチ自体が抜本的に変わってくるんじゃないかなと思っているんですが、そのあたりをお二人に伺いたいです。」

深津さん
「さっき話していたのはエージェントまたはオートメーションのような複数の作業を連続でChatGPTにやらせるみたいな。今後2,3年後ぐらいで複雑なリサーチもできるようになってくるかと。

保坂さんがマイクを持ち、ジェスチャーをしながら話している様子

保坂さん
「リサーチ自体は今後どんどん自動化されていくと思います。その上で思ったのが、UXデザイン終わったみたいな話があると思いますが、そうではなく、スループットの速度があがったことで、よりアジャイル的なリサーチが活発になるんじゃないかと考えています。

野田
「僕はOOUI信者で、要は全部のUIをオブジェクト構造に変換したくなるんですけど、この作業今すごく楽になっていて、画面からデータ要素を引き出して、オブジェクトに抽象化していくというリサーチがAIはすごい得意だと感じています。」

南里
「参加者の方から質問が来ていて、ChatGPTをUXリサーチのプレインタビューに使うときにどんなプロンプトなのかもう少し具体的に知りたいです。と来ています。」

深津さん
「すごい細かいところは省くんですけど、超雑に言うと、あなたはユーザのロールプレイをして、ユーザインタビューに応答するシミュレーションAIです。〇〇というユーザセット、前提を持っていて、私の質問に答えてください。みたいなことをカスタムインストラクションでやるって感じです。」

南里
「なるほど、この質問の流れで、みなさんが最近業務で使ったプロンプト教えていただけますか?」

野田
「一個ネタ的なやつでいうと、今日のパネルディスカッションで重鎮の2人を呼んだことで、めちゃくちゃ緊張しておりまして、深津さんと保坂さんと野田でどういうディスカッションが展開されるかをChatGPTに経歴などを与えて、どのような内容になりそうかを出力させ続けて、自分が安心するっていうのをやっていました笑」

「加えて、デザインに関することではないですが私は記事をよく書くので、それに関してはAIなしではいられないと言う感じになっています。」

深津さんがマイクを持って喋っている様子

深津さん
「私はレビュアーをAIに任せたりしています。あなたはスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックと〇〇が合体したAIです。ユーザが入力したプレゼンテーションを見て、弱いところ、甘いところ、曖昧なところがあれば、容赦無く指摘してください。という風にやると、どんな企画でも鬼のように一つでも弱点があると詰められる。出された弱点を順番に潰していくことで改善していく。」

保坂さん
「私は業務の中でマネジメントタスクが多く、この前はジョブディスクリプションの作成で活用しました。“あなたは優秀なデザインマネージャーです。初のUXライターを採用予定です。” といったものと、職務内容や会社のバリューなどをインプットして生成させるっていうのをやりました。」

南里
「採用関連でも生成AIの活用できるところいっぱいあるなと思っていて、ジョブディスクリプションに対して、その人がどれくらいマッチしているのかと言うマッチ度やなぜそう思ったかについての理由を一言でだすっていうのを弊社シゴラクAIを使ってやっています。」

「生成AIの結果に対して誤情報が出る場合があると、知識として知っていてもどこを信じてどこを捨てるか判断が難しいなと思うのですがという質問が来ています。みなさんいかがでしょうか?」

深津さん
「ググればいいんじゃないですか笑。裏どりをするのは基本だと思います。あるいは間違ってても大丈夫なものに使う。」

野田
「僕も同じで、結局何も信じていないという前提で使っています。

保坂さん
正確性を求めるものには使わない。または、Webの検索結果をソースとして使用する回答をさせるとかですかね。」

南里
「もう一つ質問来ていました。日本語で質問なげかけてますか?」

深津さん
「自分の場合は、簡単なタスクなら日本語。複雑なタスクに対しては英語。」

保坂さん
「英語の方が精度はいいと知りつつ、基本は日本語ですね。」

野田
「基本は日本語で利用し、生成AIみたいな日本語っぽい日本語みたいな正しく理解してくれていなさそうなものに対しては英語にしています。また、Perprexityを使うときは英語です。」

深津さん
「あと、長文のプロンプトを投げるときは日本語を英語に翻訳して使用するようにしてます。」

南里
「生成AIによって、今後デザイナーの枠組み、役割が変わっていくと思いますか?」

深津さん
「僕の場合は、グラフィックスデザイナーとか、UXデザイナーとか、〇〇デザイナーっていうのはなくなっていくと思います。場のカオスを最小化する人がデザイナーと定義しているので、その役割はなくならない。最小化する主体が自分か機械かの違い。クリエイティブディレクターに変わっていくと思います。

Q:生成AIで「顧客体験」はどう変わる?

パネルディスカッションの最初のテーマ:生成AIで「顧客体験」はどう変わる?
生成AIで「顧客体験」はどう変わる?

南里
「では、二つ目のテーマ、生成AIで顧客体験がどう変わるかについてですが、今一番サービスをやってらっしゃる深津さんにまずは聞いてみたいと思います。顧客体験どう変わると思いますか?」

深津さん
「一番大きく個人的に思うことは、いろんなことが始まる前に終わるということです。」

「例えば、朝起きたら枕元の前に必要なものが全部置いてあるとか、トイレ行くたびにトイレットペーパーが満載になっているとか、あるいはトラブルが起きる前に誰かが救済しておいてもらえるとか。」

「そんな風に、日常のあらゆる問題が発生して認知されるたびに、勝手に解決しているので、そもそも体験が発生しないんじゃないかと。

保坂さんがマイクを持って喋っている様子

保坂さん
「生成AIによって、今後、認知と意思決定の数が減っていくのかなと。歴史を振り返ると、目覚まし時計とか電卓とかの物がスマホアプリ化されたことで、“物を探し、見つけ、手を伸ばし、使うと決め、使う” という認知から意思決定の流れが速まった。ChatGPTではもはやアプリすら認知せずにいろいろなことができるようになった。今はまだプラグインを選ぶみたいな選択と意思決定があるが、今後AIが先回り提案してくれるようになることで、それもなくなっていくだろうと思います。」

野田
「僕も深津さんの意見にすごく賛成しているんですけど、トイレットペーパーの話だと、まずトイレットペーパーの残量をセンサを使ってデータ化しないといけない。先の話なんですけど。その話の手前にそもそもデータ化されているものはどうなのかという話で行くと、インターフェースがどこかしらに集約されていく。例えば、出張しますって言ったら、保険とか勤怠データと経費生産とか色々なSaaSが連動して動作するみたいな未来は割とすぐに来るなと感じてます。」

南里
「我々自身が人間が主みたいなところあるが、それが逆転しまう瞬間があるみたいなちょっとSFチックな話ですけど、その辺深津さんどう感じてますか?」

深津さんがマイクを持って喋っている様子

深津さん
人間が主役のサービス設計と、AIが主役なサービス設計とで大きな違いがあります。人間が主役の設計なら、つまんないこと全部AIがやってくれて、人間は自分の人生にとって一番大事なところだけをやりましょう、楽しいところだけやりましょうとなりそうですが、逆にAIが中心の設計というのは、AIが最大効率、最大性能で業務をこなせるように、人間の仕事はプリンターから出てきた書類を受け取って写真を撮ってオンライン化するとか、カメラの角度を調整するとかが人類に残された仕事で、それ以外は全部AIがやってくれますというような感じで。」

南里
「ちょっとSFに寄りすぎたんですけど、少し戻って、1、2年後で起こりそうな顧客体験の変化とかって気になると思うですけど、その辺り何かアイデアありますか?」

保坂さん
「解があるわけではないんですが、最近生成AIを使い始めて、ちょっとした待ち時間が増えたなと思っていて、“Micro Wait Time” みたいな。その時間をどうデザインすべきかというのは気になっています。」

深津さん
「2つ言える気がしていて、一つはクロスサイトのオペレーションですね。サイトやサービスを跨ったオペレーション。二つ目は人間のAPI化。AIから見て、人間がAPIみたいな。AIが指示を出して、実際に人間が行動するとか。」

野田さんがマイクを持って喋っている様子

野田
「1、2年でいくと、まだChatGPTを使いこなせている人って全然いないので、そういう意味で話すと、プロンプトデザイン難しすぎ問題っていうのは真っ先に解決したいなと考えています。プロンプトレスにいかに変わっていくか、CUIからGUIに移り変わったみたいな形でっていうのが最近の課題なのかなと感じています。」

交流会

イベントの最後は、参加者と登壇者を交えて交流会を行いました!

部屋に数十人が立って飲み物を持って参加者、登壇者同士で交流している様子
交流会の様子

まとめ

「Design Canary」初回イベントは、AIサービスのデザインをリードする深津さん、保坂さん、野田さんのお三方に生成AIがどうデザインに影響を与えるのか、デザイナーは今後、どんな役割になっていくのかを熱く語り合ってもらいました。今回イベントに参加された方にとって有意義な時間になっていると嬉しいです!

イベントに参加していただいた皆さん、登壇していただいた深津さん、保坂さんありがとうございました!

今回のイベントに参加した人たちの集合写真
最後はみんなで集合写真!(ポーズはCanaryのCです😀)

今回登壇された方の企業の活動や採用情報は下記になります。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

次回のDesign Canaryについて

Design Canaryは次回の開催も予定しております!
今回参加された方や気になっている方はぜひ下記のConnpassのURLからグループのメンバーに登録お願いします!登録することで次回のイベントの通知を受け取ることができます!

参加者の声