カメレオン

「憧れてる人って誰かいる?」
登山の道中友人にふと尋ねてみた。
「うーん」友人が少し困ったように首を傾げる。
少しの沈黙の後、「思いつかないや」そう答える。
「俺は憧れてる人いるんだ」
「どんな人?」
「今は好きな古着屋の店主だったり、友人のあの子だったりするかなぁ」私そう呟く。
私は昔から誰か憧れる人が良く居た。
そして、その憧れる人になりたくて色んな所を真似るのだ。
その人性格だったり、喋り方だったり、髪型や服装などの容姿をその時々で真似るのだ。
「まるでなんにでもなれるみたいだね、良いじゃん」そう友人は言う。
その時、私の頭の中でふとカメレオンが出てきた。
色んな色に姿を変え、壮大な森の中を生き抜くカメレオン。
私自身この真似る行為は、自我が弱く自分というものがないからなんだと思っていたが、友人のその一言が心に染みる。
「まるでカメレオンみたいでかっこいいじゃん!」
私は呟く。
私はカメレオンになったのだ。
この社会と言う営みの中で今日も色を変え生きていく。
憧れるあの人みたいな色を醸し出しながら、時に混ざりあって真っ黒になりながら今日も色を変える。
いつか色んなものが混ざりあって、虹色みたいな鮮やか色になった時、私自身は本当の意味で私になるのだろう。
そんな日を夢見て今日も1日生きていく。






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