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花相の読書紀行№.111『ソウルゲイジ』

姫川の女心と死体無き殺人

 【ソウルケイジ】/誉田 哲也
<あらすじ>
多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!
近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?
姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がる―。
シリーズ第二弾。(「BOOK」データベースより)

★感想
久しぶりに姫川玲子シリーズを読みました。
たぶん警視庁の殺人を扱う捜一の女刑事が主役の作品では、一番好きなキャラクターかも知れない。
勿論、その設定は美人でスタイルが良く、加えて若くして昇進し捜一の主任と言う完璧なもの・・・なのですが、実に人間味があるキャラクターです。

自分の容姿も才能も充分利用しながら、独自捜査で強行に解決していく割には、愚痴るし、短絡的な行動もとるし、そそっかしい部分も多々、そんなところが可愛くもある。とは言っても、三十路のいい大人なのですが…。

姫川玲子率いる“姫川班”のメンバーも粒ぞろい。
魅力的な個性あふれる刑事たち、そして周辺を囲むメンバーも役者ぞろいとなれば、面白くないわけがないのです。
そしてストーリーの内容も展開も、ミステリーの面白さに加え、どこか切なくもあり、温かくもあるのです。
 
今回の作品では、玲子と部下の菊田との微妙な関係が、少しだけ進展を見せます。が、仕事のできる女は、心の癒しが必要だけど、どっぷり浸かってはイケないのです。
そしてこの“S”と“M”の関係って意外と心地よいかもしれません。もちろん菊田君が“Ⅿ”。
 
また宿敵“日下主任”のプライベートな部分を作品に織り込み、玲子との距離を少しだけ縮めています。
そこには玲子の父親に対する思いもあるのでしょうね。
そう本作品の根幹がそこにあります。
詳しく書くことは出来ませんが、是非手に取って読んでくださいませ。
 
解説に、誉田さんが自身の作品を料理に例えて語っていた記述が有ります。
“僕は「マズくても栄養があるから食べなさい」という小説はめざしていない。やっぱり、美味しいものを差し出したい。だけど口当たりがいいだけで、何の栄養もない料理を出すのは良心に欠ける。読んでくださった方たちの心のなかに、何か残るものを残せたら。心の栄養みたいなものを与えられたら、と思いますね。”
 
全くその通りで、私自身も誉田さんの作るその料理(小説)をまた食べてみたいと思う一人なのかもしれません。

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