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花相の読書紀行№.82『夕暮れ密室』

青春推理小説、校舎の密室

【夕暮れ密室】/村崎 友
<あらすじ>
刻厳禁!明日、晴れるといいね―文化祭前夜、そう言い残した少女は、翌朝、密室状態のシャワールームで死んでいた。少女は、栢山高校バレー部マネージャーにして男子生徒憧れの的、森下栞。遺書が発見され自殺として処理されそうになる中、疑念を持ったバレー部員やクラスメイトの、真実を追う推理が始まる。立ちはだかる二重密室と若者ならではの痛みと殺意。横溝正史ミステリ大賞選考委員が奮い立った、傑作青春ミステリ。
◆出版社情報
第23回横溝正史ミステリ大賞〈落選作〉! しかし、傑作!
斬新なトリックで選考委員のミステリ心を奮い立たせた、本格青春推理小説が、ついに文庫化!
〈単行本刊行時帯コメントより〉
かつて、あの北村薫さんと、この綾辻がともにエールを送った問題作――『夕暮れ密室』。それがこのたび、全面的な改稿を経て、折り目正しい学園本格ミステリとして完成した。まことに“嬉しい”事件である。――綾辻行人
「密室テーマの夕暮れの時代」に、敢然と白昼の光を取り戻そうとしている。その心意気がよい。至難ともいうべき「密室」の扱いに成功。それは、上品な手品師の指使いを見るようで、まことに美しい。――北村薫
 
★感想
学校の夕暮れ時、生徒が少なくなった薄暗い校舎、それ自体が、“密室”というイメージを抱かせます。
今回は、学校の中にある密室で起きた友人の死から発端する高校青春ミステリ。

青春ミステリは、登場する人物が純粋ゆえに、心の中がキュンと切なくなりますよね。
今回亡くなった“栞”は、責任感が強く、友情に熱く、清楚で可愛い、殆どの男子たちが思いを寄せる完ぺきな女子高生。こんな子、普通に考えてもなかなか居ないなぁ~と思いつつも、文章に引き込まれていきました。

関係者全員が疑いの渦中にある密室のトリックを解明していく過程も、学生らしい目線で各々が語っていきながら、真実に近づいてく流れは、仲間や担任への疑いに対する葛藤がうまく描かれています。
犯人の動機も、高校生らしい浅はかさで、“あ~、今なら有るかもしれない”と思えました。
 
待って!高校生らしいとは言えないかもしれない。
今は、多くの事件が浅はかな動機で起きている気がします。
 
人が人と出会う偶然の奇蹟…これはどの世代でも起こる奇蹟ですが、そして出会ったが故に起こった出来事も偶然の奇蹟ではないのかと感じました。
 
最後に‥‥
果たして、森下栞の思い人は誰だったのでしょう?

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