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花相の読書紀行№.61『悪徳の輪舞曲』

閉ざした記憶の果てにある真実

【悪徳の輪舞曲】/中山七里
<あらすじ>
報酬のためには手段を選ばない悪徳弁護士・御子柴礼司の前に、妹・梓が三十年ぶりに現れる。梓の依頼は、旦那殺しの容疑で逮捕されたという母・郁美の弁護だ。悪名高き〈死体配達人〉が実母を担当すると聞き動揺する検察側。母子二代に渡る殺人の系譜は存在するのか? 「御子柴弁護士」シリーズの最高傑作。

東海テレビ・フジテレビ系全国ネットで、連続ドラマ「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲」として放送されました。
ドラマの内容は、シリーズの『贖罪の奏鳴曲』『追憶の夜想曲』『恩讐の鎮魂曲』『悪徳の輪舞曲』。主演は、要潤、ベッキー、津田寛治他です。

★感想
中山七里さんの御子柴礼司シリーズの4作目となる物語。
冒頭のシーンが今作の重要なポイントとなってストーリーがすすみます。
主人公が第二の人間形成をし、初めて対峙することになった自分の過去から、本人が知ろうとしなかった家族の思いが、礼司にまた一つの変化をもたらすことになります。
そして今回も事務員“洋子”さんの人間味溢れる洞察力が、礼司を平常心に導き世の中に繋ぎ止めている。

犯罪者は更生できるのか?と言う問題は、実に難しい思います。
現在、日本に住む多くの人々が重要犯罪(殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐・人身売買、強制猥褻)による被害者になる確率は、10万人におよそ7人。
日本における重要犯罪件数、およそ7,000(2021年)内、少年犯罪の検挙数、およそ700人(2021年)
重要犯罪における被害者数、およそ8,500(2021年)
これが少ないと見なすのか多いと見なすのか分からないけれど、本編で語られるように被害者となられた方々は、加害者だけではなくその後に起きる誹謗中傷に二度目の被害をこうむっていると思わざる負えないのが実情です。また加害者家族もしかり。
本作の御子柴礼司のように本当の意味で更生をし、贖罪に生きる人がどれほど存在しうるのか?
様々な意味で考えさせられるシリーズでした。

「生まれて初めて他人が羨ましいと思った」その言葉が、心にほっこりと温もりを残して終焉。
なんて心優しいラストでしょう!!

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