「オアンネスの塔」のかんそうぶん
というわけでやってまいりました。LA-MULANA2ダウンロードコンテンツ、「オアンネスの塔」です。突破しました。想像以上の地獄でした。
そもそもLA-MULANA(およびLA-MULANA2)をご存じない方へ
LA-MULANAとは、ゲーム制作集団NIGOROによる、2D遺跡探索アクションゲームです。開発の楢村さんのお名前(NA/LA/MU/LA)が名前の元ネタです。
リアルでメモが必要になるくらいの難解な謎解きと、難易度が高めのアクション、そして底意地の悪いトラップの山といった要素をこれでもかと盛り込んだ地獄のような大変硬派なゲームです。
LA-MULANAはいわゆるマゾゲーのたぐいに分類されるもので、徹底的にプレイヤーを突き放し、恐るべき悪意をもってこちらを叩きのめそうとしてくる制作者との、殺るか殺られるかの全力勝負が展開されます。
どこまでも意地の悪い開発者の用意した謎や罠に引っかかり、開発者がせせら笑う姿を幻視し「楢村ァ!!!!」などと叫びながら死んで死んで死んで死んで死に果てていく……この一連の流れが堪らないのです。ある種のマゾヒスティックな魅力に溢れるゲームです。
余談ですが、LA-MULANA2のクラウドファンディング開始時の、開発者からのメッセージは以下のようなものでした。
直球ですね。
そのLA-MULANA2のDLCが出る
ということで、かねてより楽しみにしておりました。LA-MULANA2のDLC「オアンネスの塔」。それはそれは高難易度かつ理不尽なコンテンツに仕上がっていることでしょう。リリースを今か今かと待ち望んでおりました。
期待が高まりますね。
以後、ネタバレです。
令和のハンター試験の始まり
「オアンネスの塔」が実装されたということで、久しぶりにLA-MULANA2を起動しました。
DLCが実装されたゲームは、一般的に当該DLCへのガイドをスタートさせます。プレイヤーが道に迷わないように「これこれここに行け」だの「ここに新しいものが実装された」だのといったガイドラインが引かれるわけです。
もちろんそんな親切なものはありませんでした。予想通りですね。何せこれはLA-MULANAなんですから。
唯一プレイヤーが知らされたのは、DLCが実装されたと読める趣旨の、ちょっと意味深なゲーム中のアナウンス。
とりあえず、かねてより怪しいと思っていた(DLCが実装されるとすればここであろうとあたりをつけていた)場所へと向かいます。
そこに待っていたのは、聳え立つ瓦礫の山でした。一キャラ分程度の幅しかない足場を登っていく、シビアなジャンプアクションです。ちょっと足を踏み外すと一番下まで落下します。多分制作者はJump Kingとかに触発されたに違いありません。考えうる限り最悪のコラボの一つです。
「お前最近このゲームやってなかっただろ?とりあえずジャンプアクションの復習させてやるよ」という声が聞こえて来るようです。
幾度の落下を繰り返して、苦労の末、瓦礫の山の頂上に到達です。自分のラムラーナ力の衰えを感じさせられながらも、新たな冒険へのアップを完了した気分です。さあ罠でも強敵でも何でも来いの気分です。
それだけでした。特に何もありませんでした。
まあそうですよね。何せこれはLA-MULANAなんですから。もうDLCは始まっている……もとい、このままでは、DLCを始める資格さえないということでしょう。
さあ遺跡中を探せ、探せ。何か変わっているところはないか? どんな違和感も見過ごすな。探せ、探せ。プレイ時間40時間くらいかかって探索し尽くした遺跡をもう一度頭から洗い直せというわけです。
けれど時間のない現代人にその仕打ちはちょっといくらなんでも辛すぎます。何かヒントはないものでしょうか?
デカいヒントはPVにありました。
PVで映される光景といえば、普通は新規実装されたステージのちょい出しだと思うところですが、よくよく見てみるとPVで流れている場所、以前訪れた既存のフィールドです。
今まで居たはずのないものと既存のフィールドで会話しているという光景をして、「ここに行けばイベント始まるよ」と言ってくれているわけです。これ以外には一切のヒントはありません。そんなヒントの出し方ある???
果たして当該の場所にてなんの前触れもなく登場した新キャラに、試練と称して新たな課題を出されます。さらなる謎解きの始まりです。またしても広大な遺跡を駆けずり回るハメになります。
これこそがラムラーナです。「塔に入りたければ謎を解け」といった甘い話ではありません。「塔に入るための謎を解くための謎を解くための謎を解きたければこの謎を解け」です。さながら令和の時代に蘇ったハンター試験ですね。
死と疑心のテーマパークへようこそ
理不尽なヒントに四苦八苦しながら漸く塔への入場を果たしました。気分的にはゴールですが、むろんここからが本当の地獄の始まりです。
そこまでは既存のフィールドを舞台としていた謎解きだったのに対し、ここからは完全な新規フィールドです。プレイヤーにとって未知の場所、開発者の庭。つまりは敵だろうが罠だろうが何でも置きたい放題の場所ということです。
果たせるかな、そこに待っていたのは、凡そ考えうるありとあらゆる即死のパターンをこれでもかと詰め込んだ、死と疑心のテーマパークでした。
オアンネスの塔に挑むのは、熟練のラムラーナ廃人どもプレイヤーたちです。それはつまり、どのように殺されるかを熟知しているものたちでもあります。
予想される罠を警戒します。過去に経験したパターンを思い出します。この展開は罠だと思って逆張りします。たぶんこのスイッチは危ないだろうな……などと、ゲーマーとして長年培った勘をフルに働かせます。
オアンネスの塔は、そうしたこちらの<予想>をメタ的に予想して殺しに来ます。
DLCを導入するほどのプレイヤーともあれば、LA-MULANAを遊び尽くしているといっても過言ではありません。開発者は、そんなプレイヤーならばこう考えるだろうという想定の元、幾重にも罠を張り巡らせてきているわけです。
何かワンアクションを起こす前に、考えうるありとあらゆる可能性を思い描き、それをしてなお死ぬという展開が延々と続きます。
配置される様々なオブジェクトのその全てが罠に見えてきます。まるで被害妄想のようですが、実際罠なんですから何も間違っていません。
死んでは突破、死んでは突破、死んでは突破、の繰り返し……それは苦痛の繰り返しと言えるでしょうか?むしろ逆です。
ゲームのメカニズムの基本は、こちらのアクション(働きかけ)に対しての報酬の提供です。LA-MULANAはその報酬が死なのです。
そしてLA-MULANAをプレイする人種は、まさにその報酬を求めて本作を遊んでいるわけです。よって、与えられる死は喜びでさえあります。
次第に「次はどんな手段で殺してくれるのだろう?」と期待さえ抱くようになりはじめる自分がそこにいました。
愛をもって死を贈る
10時間ほどの悪戦苦闘の末に、オアンネスの塔を突破しました。
本DLCをプレイしていて一番強く感じたのは「プレイヤーは信頼されているな」という思いです。理不尽な謎解きに始まり、本作をプレイしたものたちであるがゆえにハマる計算された罠の数々は、プレイヤーに対する厚き信頼なくしては成立しないものばかりです。開発はプレイヤーのことをとてもよく見てくれているなと実感しました。信頼あっての殺意です。
DLCとは、本編の拡張を目指すもの。「LA-MULANAのあの容赦のない体験をもっと下さい」とお願いしたのは、ほかならぬプレイヤーである私たちです。本DLCは、より容赦のない経験を求めていた私たちの願い/要求に開発が真摯に応えてくれた証拠に他なりません。
LA-MULANAは今この時流においてメインストリームとするには少々厳しいスタイルの作品です。プレイするにはこうしたゲームに対する一定の愛着が求められることでしょう。令和の時代にあって、本作のようなオールドスタイルなゲームを遊ぶプレイヤーに、愛をもって死を贈る。
「オアンネスの塔」は、そんな愛深き死が詰まっている、死のギフトボックスとでもいうべき傑物でした。
いっぱい殺してくれてありがとうございます。またいつか殺してください。
セール中なので未プレイの方は(そんな方が本記事をお読みになることはないと思いますが)今すぐ買って死んでください。
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