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「中村好文」という建築家


「湖畔の山荘 設計図集」

 建築の勉強を始めてから、ずっとどこかで気になる建築家の一人が「中村好文」氏だ。大学の時に講師でいらっしゃっていたというのもあるが。
 吉村順三氏のに弟子入りして住宅作家になった建築家だ。久しぶりに本屋で中村氏の図面集を手に取って驚いた。初版が2019年の本だから最近の本だ。中を見ると全ての図面が手描きなのだ。今の時代に全て手描きで図面を描くという事が可能なのか・・・。現場はどうするのだろう?建築確認は?などいろいろ疑問は浮かぶ。もちろん2階建て(4号建築)の個人住宅だから可能だという事はあるが、頭が混乱する位の衝撃があった。もちろんCADが登場する前は手描きが当然で、手描き図面で設計も、工事も全て行っていたわけであるのだから出来ないわけではないだろう。
 そして、思うのは何という幸福な建築家とそのクライアントかということだ。CADで描けば良い建築が出来るわけではもちろんない。逆に手描きが良い建築を保証するわけでもないだろうが、手描きであることで、中村氏の住宅特有の人間的が住むにふさわしい優しい建築の質を有する物になる(化ける)部分もあるのではないか。
 限られた素材と限られたおさまりだから可能であるともいえるが一方では手描きで出来ないものは人の住む場所に必要ないという潔さもあるのかもしれない。
 表面的にきれいな住宅、かっこいい住宅はいくらでもあるし作れるだろうが、自然の中に愛らしく建ち、生活を慈しむような人間の情と交流が持てるような住宅はそうそうない。
 本当は住宅はもっと丁寧に作られなければならないものなのだと考えさせられる。丁寧な設計をしたいものですね。

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