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日本のものづくりを大切にしたいなら「下請けいじめ」規制強化は必須

先週の日経新聞に
「下請けいじめ」規制強化
の記事が掲載されました。

弊社の取引先に関わることで、非常に関心を持ってみています。


上昇し続ける金属原料価格

私の会社でメインで扱っているアルミは価格が高騰し続けています。
アルミと言っても、様々な指標があり、毎日動いているものもあれば、月1度のものもあります。国際市場もあれば、国内のローカルなものもあります。
株価や為替のような金融商品と同じく、需給バランスで相場が形成されていきます。
これは誰かがコントロールできるわけではありません。
(陰謀論者は誰かがコントロールしていると言うかもしれませんが)

下請け企業の現実

取引先の社長さんたちにお話を伺うことがありますが、やはりどうにかしてほしいと皆さんおっしゃいます。
原材料の価格が上昇しても、製品価格に転嫁できるのは3か月後、半年後というパターンが多いようです。
製品の売値は据え置きで、原材料の仕入れ価格が上がれば当然利益は削られます。ひどい場合は逆ザヤとなり、作れば作るほど赤字となってしまいます。
価格転嫁できる仕組みにはなっているものの、価格への反映も十分ではなく、また先に述べたように次の価格改定までの間に、原材料価格がどんどん上がってしまいます。

とある会社さんでは主たる原材料を元請けに支給してもらうように交渉したそうです。賢明だと思います。今後の受注がなくなる覚悟で交渉に臨まれたようです。
しかし、元請けとの力関係で強く出られないとこうした主張が通らないばかりでなく、今後の受注量にも影響が出てきかねず、言いたくても言えない、という社長さんもおられると思います。
実際、元請けに相談できず、倒産してしまった会社もあります。
だからこそ、今回の法改正が重要になってきます。

下請けいじめは連鎖する

当然ですが、各企業、生き残りに必死です。
製品価格を上げられない状況で、利益を出そうと思えば、原価を下げるしかありません。原材料の高騰で原価は下げられないなら、据え置きでなんとかしようという発想になります。
下請け企業は、更に下請けの企業に同じことをするしかありません。
「しわ寄せ」という表現が本当にピッタリです。残念なことですが。

価格は変動するのが当たり前

日本は30年におよぶデフレで価格を上げることが悪いことだという世界になってしまいました。
日本の現状はコストプッシュインフレであり、賃金も上昇していますが、実質賃金は下がっているので、手取りが増えるよう社会保険料を下げるといった施策が望まれます。
ただ価格が硬直した状況から脱してきているのはよい兆候だと思います。
ダイナミックプライシングが普及してきているのも良いことですね。

日本のものづくりは大丈夫か?

下請けいじめの行きつく先は、ものづくり、サプライチェーンの崩壊です。
元請け自身が困ることになります。
少子高齢化で供給不足になりつつあります。当たり前に作られて、売られていたものがなくなっていくかもしれません。
代替手段があって、あえてそうしているのなら、それでも良いかもしれませんが、元請けが目先の利益に走り、気が付いたら自分たちで何も作れないという状況になりはしないか?
とても不安を感じます。
実際、コロナのときに国内でマスクが生産できないことがありました。

黄金の卵を産むガチョウを大切にする

「ガチョウと黄金の卵」 イソップ寓話
ある日農夫は飼っているガチョウが黄金の卵を産んでいるのを見つけて驚く。それからもガチョウは1日に1個ずつ黄金の卵を産み、卵を売った農夫は金持ちになった。しかし農夫は1日1個しか卵を産まないガチョウに物足りなさを感じ、きっとガチョウの腹の中には金塊が詰まっているに違いないと考えるようになる。そして欲を出した農夫はガチョウの腹を切り裂いた。ところが腹の中に金塊などなく、その上ガチョウまで死なせてしまった。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

下請けをいじめるのはガチョウを殺すことに繋がります。
私は資本主義経済は素晴らしいと考えていますが、放っておくと行き過ぎることがあるので、歯止めは必要だと思います。

まとめ

元請けが悪だ!ということが言いたい訳ではありません。
自社の利益を追求すると下請けいじめが連鎖してしまいます。
ものづくりができないという破局に陥らないよう、元請けの善意に頼らない仕組み・ルールを構築することが、全体として経済を持続的に成長させていくことになると考えています。

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