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値上げは経営に悪影響?ディズニーチケット価格とオリエンタルランド社業績との関係性分析

背景

 近年、多くの商品やサービスが値上げされており、消費の低迷が懸念されています。一般的に、値上げが行われると「売上が低下する」「お客様が離れていく」といった傾向が指摘され、企業は値上げをためらうことがあります。そこで本調査では、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドを例に取り上げ、チケット価格と業績データの関係性を検証しました。

分析結果

オリエンタルランド社の売上/営業利益とチケット価格の推移
図1. オリエンタルランド社の売上/営業利益とチケット価格の推移
(IR BANKの情報を基に筆者作成)

 2008年から2023年までのオリエンタルランド社の業績とディズニーランド入場チケット価格の推移を図1に示しました。数年ごとにチケット価格が上昇していますが、企業の業績は右肩上がりの傾向があります。チケット価格の上昇により売上が若干減少する年もありますが、次年度にはすぐに回復しており、「値上げすると業績が悪化する」という一般的な考え方が必ずしも当てはまらないことが分かります。ただし、2020年以降は新型コロナウイルスの影響があり、この関係性は見られません。

ディズニーランド/シー入場者数とチケット価格の推移
図2. ディズニーランド/シー入場者数とチケット価格の推移
(IR BANKの情報を基に筆者作成)

 同様に、ディズニーランド/シーの入場者数とチケット価格の相関関係も調査しました(図2)。興味深いことに、こちらも売上と同様にチケット価格との間に正の相関関係が見られます。つまり、チケット価格の上昇により(一部年度では若干の減少があるものの)顧客離れは起こっておらず、チケット価格の上昇分が業績に反映されていることが示されます。

 また、図1における売上とチケット価格、および図2における入場者数とチケット価格の相関係数(ただし2020年以降は除く)はそれぞれ0.88と0.80であり、いずれも強い正の相関関係があります。つまり、チケット価格が上昇すると同時に、売上だけでなく来場者数も増加しています。ただし、チケット価格の上昇が直接的な来場者数増加をもたらしたとは考えにくいため、売上増加の一部はアトラクションのリニューアルやイベント開催などによるものである可能性があります。

まとめ

 以上の結果から、「値上げをすると業績が悪化する」という一般的な考え方は、少なくともオリエンタルランドには当てはまらないことが明確になりました。むしろ、売上や来場者数が値上げ後に増加していることから、提供する商品やサービスの価値が顧客に認められており、値上げによって顧客離れが起こらないことが示唆されます。従って、事業が発展するためには、商品やサービスの価格以外の魅力を継続的に向上させ、状況に応じて適切な価格設定を行うことが重要です。

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