IN THE RED〈中編〉

サルも木から落ちる

否、木から落ちまくっているサ……人物が、たまたま超高学歴なだけである。何日かは気まずい雰囲気が続くことを私は経験的に知っている。ご機嫌を損なう気持ちはじゅうぶん理解できるのだが、己の中にしか原因が見当たらないのであれば、そこで完結させて欲しいものだ。職場での能力と学歴は比例しない。

「ウチまで送ってくよ」

「ありがとうございます」

信号待ちなんて大嫌いと言わんばかりにグニャングニャンに曲がりくねった、のどかな風景の川沿いの道を、高濃度リコピン配合の車が駆け抜ける。

「あ、このへんでおろしてもらっていいですか?」

「え?まだけっこう遠いけどいいの?」

「ダイジョウブです」

送迎に対する感謝の言葉を○山さんに告げて、私は車からおりて川を背にして歩き出した。

交通の便が悪く、なかなか通えてはいないが、このへんに私好みのおいしいカレー屋がある。近所を通りかかったついでに、久しぶりに具だくさんの絶妙なとろみのカレーをまた口にしたくなったのだ。前日の夜から何も食べていない。空腹である。

店前に到着して看板を見ると、そこには際立つ存在感でカレーと書かれてあった。私はそれを知っている。出入口の扉を見ると11時30分開店と書かれてあった……その時、私は思い出した。カレー1食のために店前で2時間以上も待ち続けられるほど気長ではない己の性を。時間という盲点、まさに


弘法も筆の誤りである


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