見出し画像

オンライン授業での気付き(5)~オンラインで救える子どもたち

私が運営する(一社)アルバ・エデュは、平時は学校にアクティブラーニングの授業に訪れる団体ですが、一斉休校に合わせて3月2日(月)から「オンラインおうち学校」を開講し、全国の子どもたちに向けて各界の第一人者の先生方にお願いしてZOOM上で授業をご提供してきました。

23コマの授業を開講した結果、オンラインの特性上、普段の授業ではできないこととできることがあるということを学びました。


スキンシップは無理

アルバ・エデュでは、出前授業の教壇に立ったり、授業を教室の後ろからサポートするための認定資格制度を作っています。これまで資格取得をご希望いただいた250名の皆様に養成講座を実施してきました。


その際に伝えて授業でも実践しているのは、作業の時間帯に「手が止まっている子には、その子の視線より下から覗き上げて状況を聞いてあげる。」(☜したがって、しゃがむ必要があるので、ミニスカ禁止!)、「さらに不安そうに手が止まっている子には背中にそっと触れてあげる。」、「集中できない子にはできる限り寄り添って対応する」などなど。
ところが、これらがオンラインでは難しい!ということが分かりました。

幸いにして、今回のオンライン授業に全国から入ってきてくださった子たちはかなり積極的な子たちですから、これらの心配は特にありませんでした。ただ、新型コロナウィルスの動向しだいでは、今後オンライン授業を拡大していく必要があると思います。その際に、このようなサポートを必要とする子たちに画面を介しての寄り添い方の工夫が必要だと感じました。

マイクのミュートのオンオフは厄介

我々が使ったZOOMでは、参加者のマイクをミュートにするか否かの選択をホスト側で行うことができます。オンライン授業では、ちょっとした発言もマイクが過敏に拾い、全体に雑音として流れてしまいかねません。今回の一連の授業では、親御さんの台所での洗い物の音や、兄弟とのちょっとしたいさかいの声を拾ってしまうため、全体をミュートにすることも多くありました。
そうすると今度は、良い発言があった時に、みんなで拍手したり、すぐ発言してほしい時にこのミュート解除が瞬時にできず、授業のリズムが悪くなるというジレンマがありました。(ZOOMさん、ぜひここ改善してください・・)

そして、なんとなくみんなの息づかいが聞こえないと、授業の一体感が保てないということも「オンラインで難しいことだなぁ」と感じました。


以上が難しかった点です。

チャット機能とスケッチブック

さて、ZOOMには「チャット」という書きこみをする機能があります。オンライン授業に参加してくれた多くの子どもたちは、親のパソコンやスマホで受講してくれる子がほとんどですが、低学年の子の中にも、見よう見まねでこのチャットの使い方をマスターし、どんどん書き込んでくれる子が現れました。そうではない子もスケッチブックと太目のペンを用意して、考えたことを書き込んでは掲示するという方法を取ってくれたりしました。


リアル授業でのチャット導入なんてどう?

何かを問えば、みんな心の中に「思い」が生じます。1対1の会話であればすぐにその思いは吐露できますが、クラスで授業を受けている際に全員が考えをつぶやき始めたら授業は成立しません。大人になってから「授業中、手を挙げてもだんだん先生があててくれなくなって、そのうち手を挙げることをしなくなった」と話す人のあまりの多さに驚きました。(私だけではなかったのね・・)。きっと今でもそのような思いをしてがまんして授業を受けている子が全国にたくさんいるはずです。

他方で、じっと静かにできない子も一定数います。「あ!それ見たことある!」「ぼくは違うと思うよ!」とついついつぶやきたくなってしまうのですよね。そのような子は「素直」なだけなのですが、すべてに反応をする行為は授業妨害になってしまうことも多々あります。学校に行くとそのような子への対処で疲弊している先生方のご苦労をよく伺います。

今回、チャットにどんどん書き込んでくれた子たちは、授業中にもこのように発言し続けているのか、あるいはふだんは発言を我慢していてここに発散の場を見つけたか、いずれかでしょう。授業中も多くの発言を促しましたし、さらにこのような「場」があることで、リアルの授業の場で感情を抑えてきたであろう子どもたちのストレスは、かなり解消されたのではないかと感じました。

もちろん負の側面もあります。書き込むことに必死になって、授業聞かなくなってしまっては本末転倒ですし、つぶやきがたえず全員の目につく形でスレッドに流れては、他の子が授業に集中できません。さらに授業をする先生が講義をしながら、チャットの発言を拾ったり、返答したりという作業を一人でこなすのは、当初は難しいと思います。

ただ、チャットは全員宛てではなくて、特定の人宛てに限定して送ることもできます。もし講師の他にサポートできる要員がいるのであれば、授業提供者と、つぶやきを確認してあげる人を分けることもできるでしょう。

今後、リアルの授業であってもどうしても発話したい子どもたちにはITツールに書き込んでもらうという作業を通じて、一方で授業を安定して運営しつつ、他方で発言したい子も精神的に充足して授業を受けることができるのではないか、と新たな可能性を感じています。

さいごに


ストレスを抱えていた子たちがITの導入によって救われていることは確認できました。冒頭に書いた、リアルの授業でスキンシップで救われてきた子たちも、画面を介してでも個別に対応してあげられたら(全部が人ではなくてある程度はボットでも)良いのかもしれません。
学校の再開についてはまだ不透明ですが、オンライン授業でできることを数えていけば、勉強の遅れも、子どもたちのストレスの問題も解消できるはずです。ぜひ皆様と共に可能性を模索していきたいです。

学校への出前授業やオンラインの授業を提供するために使わせていただきます!