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市川染五郎VS早川タケジ photographs by ALAO YOKOGI SPUR MAY.2023  撮影横木安良夫  ヘアメイク AKANE

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於ける 東京六本木スタジオ 1スタ 12月19日

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集英社 SPUR 2023年5月号

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ジャン・コクトーの世界観で体現する気高く神秘的な美 la rencontre miraculeuse 今回の企画のテーマは、”染五郎六変化”。一つ目は、フランスを代表する詩人であり、芸術家のジャン・コクトーが描く青年像の雰囲気をヒントにした。「ノーブルな染五郎さんのイメージにとても合うと思ってこのテーマを選択しました。あえて素顔に近いメイクアップにしたのも彼の俗っぽくないところを生かしたかったから。テーブルの上に彫刻像の銘品が乗っているかのようにシュールかつ幻想的に表現しました」(早川氏)。繊細な装飾が施されたスーツは、試作として製作したが当時は使用しなかった。優雅で隙のない美を体現している。
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冷酷で残忍だけれど、美しい。鶴屋南北の作品に発想を得て 深紅のベルベットに黒のビーズが、鮮烈なインパクトを残すジャケット。「ステッキに手袋、靴にかかるスパッツなど、ヨーロッパの貴公子のイメージです。撮影では、歌舞伎の鶴屋南北の美男を意識しました。南北の作品は、陰惨、妖美、怪奇、残酷、エログロの極みが入り混じった耽美な世界。染五郎さんにもいつかそういう悪役をやってほしいという願いを込めました」。ニヒルな表情は、17歳にしてすでに色悪の雰囲気十分で、圧倒的な存在感。
並はずれた時間と業が生んだ妖美なビーズのジャケット こちらのみジュリーのライブでの衣装をそのまま着用。全面にビーズが施されたゴージャスにして繊細な一着で、ラベンダーの輝きが妖しく揺れ動く。「全部手仕事です。これだけ手の込んだ作業は、今はなかなかできないでしょうね。裾は、ビーズで重くなると広がらないので、軽いスパンコールを混ぜて調整してドレープを出しています。イメージはアールヌーボー時代の麗人。しかし着こなしは、あくまでも立役(たちやく)で、歌舞伎役者ならではの色気が横溢(おういつ)しているあたりはお見事」。永遠の輝きの中で、染五郎さんも時を超えて旅をする。
ストイックな求道者は、今日も眠れずに夜明けを迎える 素敵な頑固者 安土桃山時代の屏風絵をモチーフにしたという優美な葡萄の装飾は、美しい男性を彩る勲章のよう。アートが施された指先にも強い意志が宿っているように見える。「ディートリヒやグレタ・ガルボが活躍した30年代の映画をイメージして作った服。染五郎さんには、ロシアの天才バレエダンサー、ニジンスキーのイメージを表してもらいましたが、指先の表現などは、本当にうまく美しいですよね。『素敵な頑固者』というコピーは、友人だった作家の故・橋本治さんの評論集『大江戸歌舞伎はこんなもの』(ちくま文庫)よりお借りした言葉。僕の染五郎さんへの期待を込めたものです」
三島由紀夫も影響を受けた宗教画を描いた革ジャン 染五郎さんが一番気に入っていたレザーのセットアップのルック。ジャケットには、有名な宗教画《聖セバスチャンの殉教》をモチーフとした絵柄がビーズで描かれ、ワイルドながら神秘的なムードに。首もとの真珠も色っぽい。「中に着たシースルーのTシャツにも、美男子の汗を象徴する真珠を複数つけました。麗しい男子には真珠が似合うから、ジュリーにもよく使いました。イヤリングと指輪は本物のネジ。染五郎さんの秘めたパンキッシュな魂を表現。撮影ではヴェルーシュカなどの60年代のトップモデルたちを思い出しました。長身で首がスッと長くて、マスキュリンで。性別を超越した色気をこの写真にも感じます」
伝説のモデルの服をアレンジした華麗なるロックオペラの幻想 70年代に世界で活躍したモデル、山口小夜子。彼女が起用された資生堂の広告のために製作された眩い衣装は、全身ストッキングのような薄手の生地に、ビーズやスパンコールで花のモチーフを描く。動くたび、それは幻想的に表情を変える。「今回は左肩に飾りをつけ、ヘアも思い切り躍動感を出して、架空のロックオペラ風にしました。そして女方役者の側面も表しています。ヴェールは20世紀初頭ヨーロッパの貴婦人がヒント。海外ロックスターにも負けない表現力に、400年の歴史を背負った17歳の自負心を感じました」。彼の中に隠された挑発的で野性的な感性が、早川氏のディレクションであふれ出した瞬間だった。

衣装・アートディレクション / 早川タケジ
撮影 / 横木安良夫
ヘア&メイクアップ / AKANE
デジタルエフェクト / 横木安良夫・早川タケジ
オペレーター / 亀井義則
セット / 早川タケジ・本橋則子
スタイリスト / 佐藤美和・本橋則子
縫製 / 野間久美・桜木茂子
アクセサリー製作 / 佐藤美和
ライター / 佐藤裕美

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