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【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第2話

 授業が終わると澤口と高嶺の3人でいつもつるんで帰るのが日常になっている。

 仲間内でその他の2人はそれぞれテニスと陸上の部活の為、授業が終われば健全な高校生活を絵に描いて更に額に入れたような青春を送っているのだ。

 彼女達に取って成美達の仲間に加わる事は、きっと番組の間に入るコマーシャルみたいなもので、決して世間一般が認める価値観から逸脱した生活を送りたい訳では無く、なんとなくちょっとだけ斜に構えた世界観をスパイス的に取り入れたいのであろう。

 とりあえず成美達は学校生活や社会に対して斜に構えてはいた。

 別に頭の悪い不良がするように、単に言われた事の逆をする事で自分達の価値観を作り上げようとするものではなく、もっと消極的にいかにも世の中の仕組みが分かっている風を装って、それを仕方無くしてあげます的な態度を持って行動しているのだ。

 この態度は意外と効果覿面だった。

 何故なら反抗するのであれば相手も何かしらそれに対して反論を試みるのであるが、冷笑して従うのであれば、なんとなくそれに対して居心地の悪い顔を相手がするだけだからだ。

 そのせいか知らず知らずのうちにクラス内でも一目置かれる存在になりつつあったので、それは成美にとって計算通りの結果になりつつあった。

 自分には簡単には人には言えない色々な事情を抱えていて、高校生ながらになんとか折り合いをつけながら生きていくというキャラクター設定は、成美にとっての理想の形だった。

 だからガリ勉していい成績を取ったり、部活で頑張って記録を出したりする事に陳腐さを感じており、立ち居振舞いだけでここまで一目置かれる事が出来るのだから、中学生までの友達と絶縁して本当に良かったと思っていた。

 帰り道に澤口達と必ず行き付けのファーストフード店に寄り、そこでまた色んな話に華を咲かせる。

 ここでの話のポイントは、如何に自分が孤独であるかを競いあうのが習慣になっている。

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