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インドネシア小水力発電の設置容量推移および今後の導入目標

本章では、インドネシアに於ける小水力発電設備の導入目標を整理し、これまでの設置容量推移を確認していきます。

インドネシア国営電力公社であるPT PLN (Persero)が2021年に公開した電源開発計画2021-2030には、再生可能エネルギーのロードマップとして小水力発電設備の導入目標が掲げられています。2020年時点の設備容量を基準として、2030年までに約1100MWの新規導入が想定されております。以下のグラフにて年次目標値を整理しております。

図1. インドネシアにおける小水力発電設備の開発目標 (PT PLN (Persero)及びインドネシア国エネルギー鉱物資源省公開情報によりアラムポート作成)

過去実績データでは、インドネシア国エネルギー鉱物資源省(“エネ鉱省”)が公開している2012年から2022年まで10年間の小水力発電における導入容量統計によると、2022年時点においてオングリッド・小水力設備導入量は約573MWあります。2021年比でみると約86MWしか増加しておらず、導入目標(154MW)との乖離が生じている状況です。

図2. インドネシアにおける小水力発電設備の設置容量の推移(インドネシア国エネルギー鉱物資源省公開情報によりアラムポート作成)

しかしながら、設備容量は直近では50MW~242MW程度で年々増加しており、前述した国営電力公社(PLN)のロードマップによると、インドネシアにおける小水力発電の設置ポテンシャルは19.4GWであり、2022年時点の導入設備容量は僅かにその3.6%となります。

では、より直近(2023年)公開されている「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP:Just Energy Transition Partnership)」の「包括的投資・政策計画(“CIPP”)」で今後の小水力発電計画がどう言及されているか見てみます。小水力発電領域の優先開発案件が88件、合計設備容量500MWであることが記載されており、そのうち45%は水力発電ポテンシャルが比較的に高いスマトラ島に設置される予定です。また、マルク・パプア・ヌサ・トゥンガラ系統では、2030年まで新たに案件開発が進む計画です。

図3.インドネシアにおける小水力発電優先開発案件の設置容量(JETP Indonesia “Comprehensive Investment and Policy Plan 2023” に基づきアラムポートより作成)

小水力発電導入には相応の建設資金が必要となり、それが開発の難題の一つでありますが、JETPから投入される資金を活かしてインドネシアの小水力開発が盛んになることが期待されます。ただし、それ以外にも、設置場所周辺の住民との合意形成、地方自治体の賛同、国営電力公社との調整が依然として課題であり、事業者の開発力、ローカルネットワークが重要になります。

<参考文献>